【やさしい】3つの治療法の違い【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
ときどき聞かれる質問ですが、『タイミング法と人工授精と体外受精・胚移植の違いは何ですか』というのがあります。
今日はこの話をします。
妊娠は、
1.排卵が起こる
2.卵管に取り込まれた卵子と卵管を通ってきた精子が受精する
3.受精卵が卵管内を運搬されながら発育する
4.子宮に到達した受精卵が着床する
の4つの過程を経て成立します。
タイミング法と人工授精と体外受精・胚移植は、これらのどこに介入しているのかを見ていきながら、違いについて説明しましょう。
タイミング法
タイミング法は本質的には受精への介入です。排卵と性交のタイミングが合っていないから受精が起こらないので、それを合わせてあげるのがタイミング法ということになります。
排卵障害がある場合には排卵誘発を実施することがありますが、必須ではありません。卵管に問題がある場合には卵管鏡下卵管形成術を実施することがありますが、これもまた必須ではありません。ポリープがある場合には着床を阻害する可能性があるためポリープ切除を行うことがありますが、やはり必須ではありません。
人工授精
人工授精もまた受精への介入です。排卵のタイミングに合わせて、調整した精子を子宮内へ送りこむのが人工授精です。子宮頚管でのロスがなくなり、精子を効率よく送り込むことができますが、それ以外はタイミング法と基本的には全く同じです。
人工授精は、『タイミング法の受精効率をさらにupしたもの』と考えましょう。
人工授精は、卵管に大きな問題がなく精液所見が少し悪い場合に効果を発揮しやすい治療法です。しかし、精子を効率よく送り込むことで受精への介入度合を強くしているだけですので、もともと精液所見が問題ない場合にはあまり妊娠率は上昇しませんし、精子以外に大きな原因がある場合は妊娠にいたらないことがあります。また、精液所見がかなり悪い場合も妊娠が期待しにくい場合があります。
体外受精・胚移植
体外受精・胚移植では、受精と受精卵の運搬への介入を行います。精液所見がかなり悪い場合など、体内では精子と卵子が出会って受精することが難しいことがありますが、体外受精(特に顕微授精)では精子と卵子を効率よく出会わせることができます。ただし、効率の違いはあれど受精への介入という点では、タイミング法や人工授精と変わりありません。
また、体外受精・胚移植では卵管因子への対応も可能です。卵管が塞がっている(閉塞)場合は卵管内での受精が起こりませんが、体外で受精させる場合は卵管が塞がっていても受精を起こすことができます。タイミング法や人工授精では卵管因子に対して卵管鏡下卵管形成術で対応することになりますが、一部の卵管因子は対応ができません。
これらに加えて、体外受精・胚移植の場合は、排卵への介入も可能です。ここが、体外受精・胚移植とタイミング法、人工授精の大きな違いになります。
妊娠は排卵した卵子のクオリティに大きく左右されますが、タイミング法や人工授精では、狙って良い卵子を排卵させることはできません。いくつも排卵させてどれかが良い卵子であることを期待するという方法もありますが、複数排卵すると双子以上の多胎妊娠となる可能性が上昇するため、リスクが上昇します。
体外受精・胚移植の場合は、複数の排卵を起こしても一度に一つの受精卵しか移植しなければ、多胎妊娠にはなりにくいです。さらに体外培養を経て受精卵を選別することで、一つだけの受精卵の移植でも妊娠率を十分上昇させることができます。
体外受精・胚移植の妊娠率向上効果は、この排卵する卵子の個数を増やすということと、受精卵を選別するということに依るところが大きいのです。
簡単に説明しようと思ったんですが、長くなってしまいました。スミマセン。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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