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【つれづれ】採卵周期にやっていること(採卵の日)【よもやま話】

今回は、採卵の日に何をしているかをお話します。

採卵自体については、別稿を参照ください。


採卵が終わった後

採卵が終わったら、膣内に圧迫止血の目的に置いておいたタンポンを自分で除去してもらいます。自分で除去できなかった方は、診察で除去します。

診察の時には、付着していた出血量はどうでしたか?とお聞きしますが、出血が少量、または除去後に流れ出る出血がなければOKです。問題があった例は経験がなく、採卵終了時にきっちりと圧迫止血ができていれば問題は起こりません。お腹の痛みが強ければエコーをしますが、それほど痛みが強くなければエコーは実施しません。

採卵の日には、

1.媒精方法
2.新鮮胚移植なら、移植日と移植条件、余剰胚の凍結条件、ホルモン補充の開始
3.全胚凍結なら、凍結条件と次の受診日、カバサールの処方

を決めます。


媒精方法

受精させる方法を最終決定します。事前に過去の精液所見と体外受精歴からだいたいの方法を決めておきますが、ここで調整後の精液所見を見て最終決定します。基本的には、体外受精(卵子の周りに精子を振りかける方法)が可能な時には体外受精です。体外受精では完全受精障害が発生することがあり、これは予想ができません。そのため場合によっては体外受精と顕微授精(細い針を使って卵子に精子を一つ直接入れる方法)に振り分けることがあります。この辺りは施設によっても方針が異なります。


新鮮胚移植の場合

新鮮胚移植を行う条件はOHSSリスクと妊娠着床率を考え、回収卵子数が15個未満であること、内膜が7mm以上あること、卵巣刺激中のプロゲステロン値が1.5ng/mL未満であること、を最低条件としています。これらのいずれかを満たさない場合は全胚凍結としています。これは施設によって差があると思います。

新鮮胚移植でも基本は良好胚盤胞移植としていますが、良好胚盤胞を得るのが難しい方や胚を選別する余地のない方など、場合によっては胚盤胞になれば移植をしたり、初期胚の移植を行ったりしています。胚選別の余地がない方のお話はまた別稿でしましょう。Day.6の非良好胚盤胞やグレードが低かったり細胞数が少なかったりする初期胚の妊娠率はかなり低いため、そういった胚は移植しません。そういった移植でもコストはかかりますし、移植回数も消費してしまいます。

余剰胚の凍結条件はケースバイケースでパターンが多いため、ここではお話しません。

移植日が決まれば、採卵当日からエストロゲンの経皮剤(多くはエストラーナテープ)とプロゲステロン膣剤を開始してもらいます。

移植予約を取って、お薬の使い方を説明してもらったらその日は終了です。


凍結融解胚移植の場合

凍結条件は、新鮮胚移植の移植胚の決め方とほとんど同じです。2回目以降の採卵だと、状況を見ながら決めなくてはいけないことも多くあり、凍結日当日に受診してもらって決めることもあります。

胚盤胞の凍結が完了するのは採卵の6日後の午前中なので、基本的には6日後の午後以降で受診してもらいます。

トリガーにhCG製剤を使用した場合でOHSSリスクが高い場合には、カバサールという薬剤をOHSS重症化予防として内服してもらうことがあります。吐き気が出やすいため注意です。強い吐き気があれば中止して構いません。

トリガーにGnRHアゴニストを使用した場合は、基本的にカバサールは処方していません。かなり個数が多かった場合に処方することがあるくらいです。

レトロゾールなどをOHSS重症化予防として処方することがありますが、私はほぼ処方しません。OHSS重症化リスクの高い方にhCG投与さえしなければほぼOHSSで困ることはありません。アゴニストトリガーの後の症状については、穿刺技術の方がよっぽど関係ある気がするぞ…(個人の意見です)



採卵のときはこのようにたくさん決めることがあるのですが、採卵後は疲れているし、特に静脈麻酔がかかったあとはボーっとするので、いろんなことを話されても頭に入ってこないと思います。ですので、なるべく採卵を決めるときに、予想できることはお話して決めておくようにしています。

次は採卵の次の日以降にすることをお話します。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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