【やさしい】卵子の成熟と受精周りの用語解説【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
体外受精・胚移植には、いろんな用語・略語があります。さらっと使用されることの多い用語ですが、かなり馴染みのないものばかりですので、大概、
こんな顔をされます。体外だけに。
…今日はよくわからん度のかなり高い、卵子の成熟や受精周りの用語を解説しましょう。
無量空処をくらった漏瑚みたいな気分になること請け合いです。
さあ、みんなでポカーンとしましょう。
卵子の成熟度の用語・略語
卵子の成熟度は主に3つあります。
1.GV(germinal vesicle)
2.MⅠ(metaphase Ⅰ)
3.MⅡ(metaphase Ⅱ)
配偶子は、減数分裂という特殊な分裂を経て形成されます。通常、体細胞は46本の染色体(DNAが束になった人間の設計図のようなもの)を持っていますが、配偶子は23本の染色体を持ちます。染色体の本数が減るので、減数分裂です。
減数分裂には2段階あり、第一分裂と第二分裂があります。この過程で、23本の染色体を持った4個の細胞が作り出されます。未排卵の卵子は、この減数分裂の第一分裂の途中(前期)で停止しています。
この状態の卵子がGV卵です。排卵の刺激(LHサージ)が開始すると、減数分裂が再開され、MⅠ卵(第一減数分裂中期)を経て、MⅡ卵(第二減数分裂中期)へと進んでいきます。MⅡ卵がいわゆる成熟卵で、MⅠ卵とGV卵は未熟卵です。
これらは、『核』の有無と『極体』の有無で確認します。
細胞には情報が入った『核』という部分がありますが、核は見えたり見えなかったりします。GV卵では核が確認できますが、MⅠ卵とMⅡ卵では核は確認できません。
精子は、一つの細胞から均等に細胞分裂が起こり、4個の精子が形成されます。これに対し、卵子は不均等に細胞分裂を起こします。細胞分裂で本来同じ大きさの細胞が2個形成されるはずが、卵子の場合は大きな細胞(卵子)と小さな細胞(極体)に分裂します。減数分裂の第一分裂が完了すると、1個目の極体(第一極体)が確認できるようになります。つまり、GV卵とMⅠ卵では極体は確認できず、MⅡ卵では極体が確認できます。
このように卵子の成熟度を分類しています。GV卵は基本的に受精させても受精は起こりません。MⅠ卵は受精することがあります。
受精周りの用語・略語
受精周りで使用される用語は、主に二つです。
1.PN(pre-nuclear) 前核:前(pre-)+核(neuclear)
2.PB(polar body) 極体
北極や南極をpolarと言いますね。ホッキョクグマはpolar bearです。
PBは前述の極体です。第二減数分裂中期のMⅡ卵が受精して第二減数分裂を完了させると、2個目の極体(第二極体)が確認できるようになります。第二極体の放出は減数分裂の完了を意味しており、必ずしも受精を意味しているわけではありません。受精が起こっていない卵子のみで細胞分裂を開始した場合(単為発生)でも第二極体は確認できます。
PNは前核(pre-neuclear)の略ですが、通常は卵子由来の前核(雌性前核)と精子由来の前核(雄性前核)の1個ずつの計2個が確認できます。ただし、前核は確認できる時間が限られており、出現してから数時間で消失します。タイムラプスインキュベーターを使用していない場合は、前核が確認できないこともあります。
受精の確認は、PNとPBの個数の組み合わせで行いますが、どちらかと言えばPNの方が重要度は高いです。PNが1個以上あれば、PBはあまり重視しないことが多いです。
0PN1PBは、基本的に受精が起こっていません。
0PN2PBは、前核が消失した、前核が観察しにくいのいずれかです。その後の胚発生が正常なら正常受精と判断することがありますが、タイムラプスインキュベーターを使用している場合は、前核の見逃しは多くありません。
1PNは、単為発生、どちらかの前核が先に見えている、前核が融合している、のいずれかです。1PN胚が胚盤胞まで育つ確率は、正常受精と比較すると低下します。体外受精胚の1PN胚は胚盤胞になれば妊娠率は十分ありますが、顕微授精の1PN胚ではほとんど妊娠しません。
2PNは基本的に正常受精です。
3PN以上は、極体の放出不全、多精子受精(卵子に2個以上精子が入った)、抗セントロメア抗体陽性例などで卵子が多核化している、などです。3PN以上は染色体異常の可能性が高いため、基本的に培養を中止しています。
いかがでしたか?よくわかんないでしょう?
まあここはあんまりわからなくても正直大丈夫だと思います。
領域展開して疲れたので今日はこれで終わりです。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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