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【やさしい】低刺激法を選択する理由は?【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

以前に、採卵における卵巣刺激法を決定する要素についてお話しました。

基本的には、卵子が増えやすい一般法を選択しますが、それでも低刺激法を選択する理由とは何なのでしょうか。

それは、主に…

・一般法を行っても卵子の数が十分増えない
・卵子の数をあまり増やしたくない、増やすと都合が悪い

ということになります。

では、これらについて見ていきましょう。


卵子の数が十分増えない

一般法ではhMGやFSH製剤の注射を最初から開始する方法です。注射を高用量で連日投与すると、それだけのお金と手間がかかります。

それに見合った卵子の数が取れない、低刺激法でも卵子の取れる数があまり変わらないとしたら、一般法を選択する理由はありません。

例えば、AMHの値が極端に低い方や、月経中にエコーで見えている胞状卵胞が少ない方や、一般法を行ったことがあるが十分な卵子が取れなかった方は、一般法を選択することがあります。

『一般法をする意味があまりないから、低刺激法を行う』ということですね。


卵子の数をあまり増やしたくない

これは前段落のような、増やせないから低刺激法というのとは違います。増やせるけど、増やすと都合が悪いので増やさないということです。

では、卵子数を意図的に増やしたくない場合とは、どういった状況でしょうか。それは…

・卵子数が増えすぎると危険

ということです。では、これは具体的にどのような状況でしょうか。


卵子数が増えすぎると危険な状況とは

これは基本的に新鮮胚移植を考えている場合になります。新鮮胚移植とは、採卵を行い回収した卵子を授精させて、ある程度受精卵が発育したところで凍結せずに子宮の中に戻してしまう方法です。

採卵では、卵胞という卵子の格納された袋を針で刺して卵子を回収しますが、この卵胞は採卵後にはホルモンを分泌する『黄体』と呼ばれる器官に変化します。黄体からは、エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンが主に分泌されます。

卵子の個数が多く取れすぎていると、卵巣は大きく腫れ、多数の黄体が形成されています。そしてその多数の黄体から、普段の十倍以上のホルモンが分泌されています。この状態によって引き起こされる状態を『卵巣過剰刺激症候群(OHSS)』と言い、腹部の張りや痛み、吐き気、呼吸困難感、血管の中で血が固まってしまう『血栓症』などといった合併症を起こすことがあります。

OHSSを起こさない方法はほぼ確立されてきており、この異常なホルモン状態を長く持続させないことが肝要となります。つまり、早めに黄体を退縮させる、月経を来させるということが重要です。

しかし、新鮮胚移植は当然妊娠をさせるために行いますから、そのまま妊娠が成立した場合は当然月経が来ず、この異常なホルモン状態が持続してしまいます。


排卵をどうやって抑えるか

排卵を抑える方法は主に3つあります。点鼻薬を使用する方法と、注射を使用する方法と、内服薬を使用する方法です。

点鼻薬を使用する方法が、ショート法、ロング法で、注射を使用する方法がアンタゴニスト法で、内服薬を使用する方法がPPOS法です。アンタゴニスト法で内服薬を使用する方法もありますが、保険診療では使用できません。低刺激法では、基本的に注射を使用する方法しかありません。

結局、一般法のなかでの分類は、排卵をどのように抑えているかということであって、注射薬の使い方、種類や用量では方法は変わりません。


ここまでのまとめ

・卵巣刺激法は、『卵子をどうやって育てるか』と『排卵をどうやって抑えるか』という2つの要素で構成される。
・卵子を育てる方法は、注射薬を最初から開始する一般法と遅らせて開始する低刺激法の2つがある。
・排卵を抑える方法は、点鼻薬を使用する方法と、注射を使用する方法と、内服薬を使用する方法の3つがある。

ということでした。

ここで、次のようなことが気になってくるかも知れません。

・卵子数があまり多くならない低刺激法を選択する理由とは?
・排卵を抑える方法を使い分ける理由とは?


次回予告

次回からこの疑問に答えていきましょう。

まずは『低刺激法を選択する理由とは?』から。
卵子数を増やすのは基本ですが、わざわざ増えにくい低刺激法を選択する理由はなにかあるのでしょうか。


妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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