【やさしい】卵管因子の程度【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
卵管に問題があると一口にいっても、程度があります。
卵管の問題の種類
卵管の評価はまずは疎通性(開通しているかどうか)です。これは、どのくらい狭いかということでもあります。卵管は心臓のカテーテル検査(冠動脈造影)のように、何%狭窄しているというような指標はありません。ざっくりと正常~狭い~塞がっているといった評価をします。卵管が狭い状態を卵管狭窄、卵管が塞がっている状態を卵管閉塞と言います。
画像上しっかりと評価できるのは、かなり狭い(高度狭窄)~塞がっている(閉塞)状態とそれ以外です。正常と少し狭い(軽度狭窄)状態は区別することは難しいです。
基本的に治療介入は高度狭窄以上で行います。
近位部閉塞と遠位部閉塞
狭窄している部分は区別をしませんが、閉塞している部分は区別を行います。子宮と卵管の移行部(間質部)の閉塞を近位部閉塞と言います。近位部とは体の中心に近い部分を指します。卵管のおなかの中側である卵管采の閉塞を遠位部閉塞と言います。遠位部とは体の中心から遠い部分を指します。
近位部の閉塞はカテーテルを用いて膣側から閉塞を解除することが可能ですが、遠位部の閉塞はカテーテルを最大限延長しても先端が届かないため、膣側から閉塞を解除できません。卵管の閉塞を解除することができるカテーテルをFTカテーテルと言います。FTはfalloposcopic tuboplastyの略で、卵管鏡下卵管形成術のことです。
遠位部の閉塞は、おなかの中側からしかアプローチできません。そのため、おへそからカメラを挿入する腹腔鏡下に卵管を開口したり、癒着を剥がす手術を行います。これを腹腔鏡下卵管形成術と言いますが、行われることはあまり多くありません。
このように、卵管の近位部の閉塞と遠位部の閉塞は対応方法が異なるため、区別を行います。
単純な遠位部閉塞と卵管留水症
さらに卵管の遠位部閉塞は、単に閉塞しているだけなのか、卵管が拡張して水風船のようになっているのかで区別されます。卵管が水風船のように拡張している状態を、卵管留水症(卵管水腫)と言います。
単に閉塞しているだけなら着床にまでは問題を起こしませんが、卵管水腫になっている場合は溜まっている水が子宮内へ逆流して着床に問題を起こしたり、流産の原因になったりすることがあります。
分類してみましょう
卵管の問題には重症度分類というものはありませんが、ここまでの話をまとめて分類をしてみましょう。
カテゴリー1 正常~(軽度)狭窄
カテゴリー2 高度狭窄
カテゴリー3 近位部閉塞
カテゴリー4 遠位部閉塞
カテゴリー5 卵管留水症(卵管水腫)
さらに、片側か両側かでまた少し話が変わってきます。例えば卵管閉塞でも、片則であれば健常な卵管で妊娠が可能ですが、両側だとかなり厳しくなります。
この分類には機能評価は含まれていません。別稿でお話したとおり、機能評価は基本的に困難です。
過去にクラミジア感染がある場合は、機能が損なわれている可能性を想定しておきましょう。
次回は、卵管留水症(卵管水腫)についてもう少しお話します。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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