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【やさしい】妊娠と血圧【初心者ガイド】
たなかゆうすけです。
今日は、妊娠と血圧のお話です。
血圧が高くても、症状があまりないため軽視されがちですが、こわーい経過をたどることもあります。
たかが血圧、されど血圧。
意外と大事なので、一度どんなものか見てみませんか?
そもそも血圧とは?
血圧は、血液が流れることによって血管の内壁にかかる圧力のことをいいます。
血圧を規定するのは、流れる血液の量と血管の抵抗です。
いきなりなんのことかわからないと思いますので、解説をします。
ホースに水を流すことを考えてください。
ホースが血管、水が血液です。
蛇口を大きくひねって、流れる水の量が多くなれば、ホースから勢いよく水が出てきますよね。
あの水の勢いをホースの内部はずっと受けています。
これが血圧です。
流れる水の量は、蛇口のひねり方と、もともとの水の量で決まります。
蛇口のひねり方は、心臓が血液を押し出す力に相当します。
もともとの水の量とは、血液の量です。
どちらとも、大きくなれば流れる水の量は増えます。
ホース自体の硬さや狭さも、水の勢いと関係があります。
ホースの硬さや狭さが、血管の抵抗を表しています。
ホースが固くて狭いと、出てくる水の勢いは強くなります。
ホースが柔らかくて広いと、出てくる水の勢いは弱くなります。
この辺りは感覚的にわかるでしょうか?
ホースの口をつまむと勢いよく水が出ますよね。
ホースを狭くすると勢いが強くなる実例ですね。
このように、ホースの硬さや狭さでも水の勢いは変わります。
血圧が高いと、心臓は強い力で血液を押し出さなければいけなくなる
ここまでお話したように、血圧は血管の内壁にかかる圧力です。
これは、血管の内壁が血液を押し返す力とつりあっています。
心臓が血液を押し出す力が弱いと、この血液を押し返す力に負けてしまい、血液を送り出せなくなります。
このため、血圧が高いと、心臓はそれに負けない強い力で血液を押し出さなければいけなくなります。
血圧が上昇する理由は?
では、血圧が上昇する理由は何でしょうか。
それは、流れる血液の量が増えた場合と、血管の抵抗が上昇した場合です。
流れる血液の量が増えるのは、心臓の押し出す血液の量が増えた場合と、もともとの血液の量が多い場合になります。
血管の抵抗が上昇した場合とは、血管が固く、狭くなった場合です。
『妊娠中に』血圧が上昇してしまう理由は?
では、『妊娠中に』血圧が上昇する理由とは何でしょうか。
そもそも、妊娠中の血圧は、妊娠していないときに比べて少し低くなっています。
妊娠中は、胎盤を通して赤ちゃんに酸素や栄養を届けないといけません。
妊娠していないときに比べて、赤ちゃんに送り込むぶん血液量は増加します。
そして、心臓の送りだす血液の量も約30%くらいは多くなります。
これを心拍数を多くすることによって達成しています。
ここで通常の血圧のままだと、心臓の仕事量がかなり大きくなってしまうため、血圧はやや低下します。
少なくとも通常は増加しません。
ただし、ある理由で血圧が上昇することがあります。
それは、『赤ちゃんを守るため』です。
妊娠高血圧症候群
おなかの中の赤ちゃんは自分で酸素や栄養を確保できないため、胎盤を通して、それらをお母さんの血液からもらっています。
ここで、胎盤になんらかの機能異常がある場合、赤ちゃんに十分な酸素や栄養を送り込めなくなることがあります。
そうすると、大切な赤ちゃんを守るために、からだは無理やりにでも胎盤に血液を送り込もうとします。
血圧を上昇させ、ぐいぐいと血液を胎盤へ押し込もうとします。
これが、妊娠高血圧症候群の大まかなイメージです。
妊娠中に血圧が上がったらどうなる?
上昇した血圧は、さまざまな臓器に問題を起こします。
そもそも他の臓器は問題がないのに、血圧だけ上昇してどんどん血液を押し込まれるわけですからね。
問題を起こす臓器は、主に脳と肝臓と腎臓です。
脳が高血圧にさらされると、全身の痙攣発作と意識消失(子癇発作といいます)や脳出血を起こすことがあります。
腎臓が高血圧にさらされて障害を受けると、蛋白尿が出現します。
肝臓が高血圧にさらされて障害されると、HEELP症候群と呼ばれる、肝臓と腎臓の機能障害、溶血、血小板減少を主症状とする病態に発展することがあります。
赤ちゃんは、もともとの胎盤の問題があるので、おなかの中での発育が遅くなったりします。
また、赤ちゃんが外に出てきていないのに、先に胎盤がはがれてしまうということも起こりやすくなります。
これを常位胎盤早期剥離と呼び、お母さんと赤ちゃんにとって大きな危険なとなります。
このように、血圧が上昇して良いことは何もありません。
妊娠高血圧症候群の重症化は、お母さんと赤ちゃんにとって大変危険です。
このような場合には、早めにおなかの中から赤ちゃんを出してあげ、妊娠を終了させることがあります。
お母さんと赤ちゃんの安全のためには、どうしても必要なことです。
血圧の高い方は妊娠前から管理を
もともと高血圧のある方が妊娠する場合は、妊娠高血圧症候群を発症しやすいことは知られていました。
2018年に、妊娠中にわかった高血圧も妊娠高血圧症候群として扱われれるようになりましたが、妊娠初期には血圧が低下するため、もともと高血圧があっても見逃されるケースがあります。
このため、妊娠前の血圧を把握しておくことは、重要となります。
血圧が高いとわかった場合には、妊娠中に内科の先生に協力してもらっての十分な管理が必要になります。
妊娠中に安全に使用できるお薬もあります。
お母さんと赤ちゃんの安全のために、しっかりと血圧の管理を行いましょう。
血圧の目安は、140/90 mmHg 未満(ご家庭での血圧は 135/85 mmHg 未満)です。
医療機関とご家庭で血圧が違う方もいらっしゃいますので、ぜひご家庭でも血圧を測ってみましょ う。
医療機関では血圧が高いけど、ご自宅では正常の方
医療機関では血圧が高いけど、ご自宅では正常の方は、いわゆる白衣高血圧です。
お医者さんをみるとドキッとして、血圧が上がってしまう方ですね。
白衣高血圧は、本当の高血圧に比べると、やはりその後の経過が良い方が多いです。
しかし、約50%が妊娠高血圧症候群に移行したとの報告もあり、けっして油断して良いわけではありません。
しっかりと経過を見ていきましょう。
今日はこれでおしまいです。
お母さんと赤ちゃんの安全のためにも、しっかり自分の血圧を把握しておいてください。
血圧の高い方は、ご自身だけでは改善が難しい場合がありますので、ぜひご相談ください。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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