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【やさしい】不妊治療でよく用いられる略語~P②【不妊症ガイド】

たなかゆうすけです。

不妊治療の本当にセンシティブな略語解説です。今回はPのpart.2。


PGT ピージーティー

Preimplantation Generic Testing 着床前診断

体外受精・胚移植において、胚の選別は相当な比重を占めるが、着床前診断は現状可能な胚選別の中で最も高度なもの。形態的な選別に留まらず、遺伝的な情報を解析して胚を選別する。過去にはPGD(Preimplantation generic Diagnosis)とも呼ばれていた。胚盤胞期の胚の胎盤になる部分(TE;trophectoderm)から物理的に細胞を採取し検査へ提出するのが現在の主流。PGT-A、PGT-SR、PGT-Mにさらに細かく分かれる。胚選別の方法の一種であり、そのメリットとデメリットには十分に注意しておく必要がある。メリットとはすなわち妊娠着床率の上昇や流産率の低下、ひいては生児獲得率の上昇であり、デメリットとはすなわち胚選別により本来妊娠着床するはずの胚を失う可能性である。また、胎児の細胞(ICM;inner cell mass)そのものを見ているわけではない点には注意が必要である。ご利用は計画的に。


PGT-A ピージーティーエー

Preimplantation Generic Testing for Aneuploidy 胚染色体異数性に対する着床前検査

Aneuploidyに対する着床前診断。Aneuploidyとは、流産や着床不全の原因となる染色体の異数性のこと。人間の場合46本の染色体(多くの遺伝子が束になったもの)を持つが、この本数が多かったり少なかったりするものを異数性と呼ぶ。そういった異数性を持つ胚を除外して、流産や着床不全を防ごうというもの。染色体に異数性がないものを正倍数性胚(Euploid胚)と呼ぶが、Euploid胚でも妊娠着床率は60-70%であり、染色体の異数性以外にも妊娠着床を左右するファクターがあることが推察される。ちなみに、Euploid胚の移植を繰り返した場合に5回目まで妊娠着床率が低下しないことが報告されており、従来の移植不成功の回数で定義された着床不全の概念に相当の揺らぎが生じている(不成功の回数で定義されるなら、どこかで妊娠着床率が低下しなければならなかった)。


PGT-SR ピージーティーエスアール

Preimplantation Generic Testing for Structural Rearrangements 胚染色体構造異常に対する着床前検査

染色体の構造異常に対する着床前診断。染色体の異数性はないが構造異常によって流産を反復する例、すなわち均衡型転座などに対する検査。次世代への影響も多分に想定されるセンシティブな検査であり、実施には相当の準備が必要である。相当にセンシティブなのでその詳細はここでは語らない。


PGT-M ピージーティーエム

Preimplantation Generic Testing for Monogenic 単一遺伝子疾患に対する着床前診断

単一遺伝子によって引き起こされる、重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査。最上級にセンシティブな検査であり、内容はここでホイホイ語って良いものではない。口を慎むことにする。



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