
【つれづれ】体外受精・胚移植における累積妊娠率の簡単なシミュレーション【よもやま話】
保険診療における体外受精・胚移植の一番大きな制約は、1回の妊娠・出産での胚移植回数は最大6回までということです。
今回は、これを踏まえて簡単なシミュレーションをしてみましょう。
1000名の方を集めて、胚移植を繰り返していきます。年齢は39歳未満で、移植回数は最大6回、胚移植が不成功でも妊娠率は低下しないものとしましょう。実際低下はしません。途中で流産することは、いったんないものとします。小数点以下は四捨五入します。計算間違ってたら教えてください。
1回の着床率が50%の場合
1回の妊娠率が50%の胚移植を繰り返した場合を考えましょう。
まず、1回目の胚移植で、1000名中500名が妊娠します。残りの500名が、次の胚移植へ臨みます。
2回目の胚移植で、500名中250名が妊娠します。残りの250名が3回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は750名(500+250)となり、累積の妊娠率は75%となります。
3回目の胚移植で、250名中125名が妊娠します。残りの125名が4回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は875名(500+250+125)となり、累積の妊娠率は87.5%となります。
4回目の胚移植で、125名中63名(62.5を四捨五入)が妊娠します。残りの62名が5回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は938名(500+250+125+63)となり、累積の妊娠率は93.8%となります。
5回目の胚移植で、62名中31名が妊娠します。残りの31名が6回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は969名(500+250+125+63+31)となり、累積の妊娠率は96.9%となります。
6回目の胚移植で、31名中16名(15.5を四捨五入)が妊娠します。6回の胚移植で妊娠できなかったのは15名となります。6回の胚移植で妊娠している方は985名(500+250+125+63+31+16)となり、累積の妊娠率は98.5%となります。
1回の着床率が20%の場合
今度は1回の妊娠率が20%の胚移植を繰り返した場合を考えましょう。
まず、1回目の胚移植で、1000名中200名が妊娠します。残りの800名が、次の胚移植へ臨みます。
2回目の胚移植で、800名中160名が妊娠します。残りの640名が3回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は360名(200+160)となり、累積の妊娠率は36%となります。
3回目の胚移植で、640名中128名が妊娠します。残りの512名が4回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は488名(200+160+128)となり、累積の妊娠率は48.8%となります。
4回目の胚移植で、512名中102名(102.4を四捨五入)が妊娠します。残りの410名が5回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は590名(200+160+128+102)となり、累積の妊娠率は59%となります。
5回目の胚移植で、410名中82名が妊娠します。残りの328名が6回目の胚移植へ臨みます。この時点で妊娠している方は672名(200+160+128+102+82)となり、累積の妊娠率は67.2%となります。
6回目の胚移植で、328名中66名(65.6を四捨五入)が妊娠します。6回の胚移植で妊娠できなかったのは262名となります。6回の胚移植で妊娠している方は738名(200+160+128+102+82+66)となり、累積の妊娠率は73.8%となります。
どう思いましたか?
移植あたり妊娠率が50%なら、6回の胚移植でほとんどの方が1回は妊娠できそうですね。もし途中で流産してしまっても、少ない回数で1回目の妊娠をしており、ある程度の移植回数がまだ残っていれば勝負はできそうです。ただし流産を2回以上反復してしまった場合は、このシミュレーションでも不安が残ります。胚移植あたりの妊娠率が50%でも、途中で流産する可能性を考えると、移植回数が最大6回というのは決して多いわけではないと思われるかもしれません。
移植当たり妊娠率が20%の場合は、6回の胚移植を行っても4人に1人が一度も妊娠できない計算になります。途中で流産してしまった場合などは、さらに少ない回数で2回目の妊娠をしなければならなくなります。流産を2回以上反復してしまった場合は、かなり分の悪い勝負になります。移植回数が6回というのは、むしろ少ないとさえ感じるかもしれません。
胚移植あたりの妊娠率は『超』重要
流産した場合の場合分けはかなり複雑になるので、ザックリと雑な計算をしていますが、ここからも1回の胚移植あたりの妊娠率がかなり重要であることは感じてもらえると思います。
ちゃんと胚の選別を行わないと、10%やそれ以下の妊娠率の胚移植もあります。20%でも上の結果なので、試算はしなくても結果はわかりますよね。ちなみに、10%の移植を繰り返した場合の6回の累積妊娠率は47%になり、半分以上の方が1回も妊娠できません。
保険診療内で妊娠・出産してもらうためには、胚移植あたりの妊娠率を上げることがかなり大事というお話でした。妊娠率を上げるためには、きっちり胚を選別することと、胚移植技術をしっかり磨いておくことの両方が重要です。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
コメント、メッセージ、スキなどいただけると大変励みになります!