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【つれづれ】初心忘るべからず【よもやま話】

たなかゆうすけです。

今回は胚移植のお話です。


胚移植は、採卵、授精、胚培養を経てできた受精卵を子宮の中に入れて着床してもらうという、体外受精・胚移植の最終段階の手技です。

受精卵はとても小さいものですが、単に精子と卵子が合体して細胞分裂をした結果できたモノではなく、それ以外にいろいろなものがくっついています。

他にいろんなことに使えたかも知れない多額のお金や多くの時間。
そして、さまざまな治療にかける思いも。

赤ちゃんが欲しいという、治療にかける患者さんや家族の思い。
丁寧に卵子を扱い、大切に受精卵を育てようとした培養士の思い。
患者さんの思いに応えるべく努力を行った医師の思い。

そういったものが受精卵には宿っています。

それを最後に自分が子宮の中に入れるということは、大変な意味を持つことです。


私が修練した施設は、経腟エコーで胚移植を行う施設でした。

経腟エコーで胚移植を行うとき、子宮の中に受精卵が入る瞬間はエコーのモニターにはっきり映ります。それは内診台で横になっている患者さんからも簡単に確認できますので、ごまかしなど効きません。

まだ手技に十分に慣れていない、十分に自信がない状態のときは、とてつもないプレッシャーを感じながら移植を行っていました。

移植の時には、先に外筒という、受精卵の入ったチューブをスムーズに子宮内に入れるための通り道を子宮の入り口に置きます。この外筒が上手く入らなかったときなどは、心拍数が跳ね上がり、冷や汗をかいたものです。

しかし、自分が不慣れであるなどということは目の前の患者さんには関係ありません。胚移植は必ず成功させなくてはいけません。

いろいろなものの宿った受精卵の重みを感じながら、自分の持てるすべての技術を使って、全身全霊をかけて外筒を通し、子宮内へ受精卵の入ったチューブを運び、適切な位置に受精卵をリリースする。これを軽く1000回以上は繰り返してきました。

今では心拍数が跳ね上がることも冷や汗をかくこともめっきり少なくなりましたが、今でも受精卵の重みを感じながら、全身全霊をかけて、思いを込めて胚移植を行っています。

初心忘るべからず、です。

小さな受精卵に宿った大きな思いへの責任として、受精卵が子宮内に入る瞬間は患者さんにもしっかり確認をしてもらいたいと思っています。そしてしっかり確認をすることで、少しでも安心してもらえればと思っています。



妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…

たなかゆうすけでした。

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