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【やさしい】新鮮胚移植と凍結融解胚移植~新鮮胚移植の特徴~【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
間が空いてしまったので流れが良くわからなくなってしまいましたが、以前にPPOS法では新鮮胚移植はできないという話をしました。胚移植には、新鮮胚移植と凍結融解胚移植があります。この二つにはどのような特徴があるのでしょうか。
新鮮胚移植と凍結融解胚移植
新鮮胚移植とは、培養した受精卵を凍結せずに子宮内へ入れる方法です。これに対し凍結融解胚移植は、培養した受精卵をいったん凍結保存し、後日融解して凍結を解除してから子宮内へ入れる方法です。
その昔、凍結技術が未熟であったころはほとんどが新鮮胚移植でしたが、凍結技術の進歩によって凍結融解胚移植の成績が向上しました。近年では、新鮮胚移植と凍結融解胚移植の治療周期数はほぼ同等ですが、出生児数は90%以上が凍結融解胚移植となっています。これは一概に凍結融解胚移植が優れているということではありませんが、現在の治療において凍結融解胚移植の比重がかなり大きくなっているということは間違いありません。
もはや新鮮胚移植とはいにしえの方法なのでしょうか?そんなことは全くありません。この二つの方法の使い分けとはどのようにするのでしょうか。
基本原則は以下の2点だと思います。
1.新鮮胚移植ができるときには、新鮮胚移植で良い
2.新鮮胚移植に適さない場合は、全胚凍結の後、凍結融解胚移植を行う
新鮮胚移植の特徴
新鮮胚移植では妊娠までの期間が短くなる可能性がある
新鮮胚移植の特徴に、『妊娠までの期間が短くなる可能性がある』ということがあります。新鮮胚移植は、採卵後1週間以内には移植が完了し、2週間後には妊娠しているか判定することが可能です。これに対し凍結融解胚移植の場合は、いったん月経が来た後に準備をしてから移植を行うため、早くても採卵の1か月後くらいになることが多いです。両者の累積妊娠率は最終的には同等になってしまいますが、妊娠までの期間を早める可能性があるというのは、新鮮胚移植の重要な特徴となります。
周産期のリスクを低減する可能性がある
凍結融解胚移植では新鮮胚移植と比較して、癒着胎盤、妊娠高血圧症候群、出生児の体重増加などのリスクが上昇することが報告されています。これらのリスクは凍結融解胚移植の中でも、ホルモン補充周期移植と自然周期移植ではまた異なりますが、いずれにせよ新鮮胚移植よりは増加する可能性があります。
発育卵子数が多くなりすぎると合併症が増加する
卵巣刺激を行わずに1個だけ排卵した場合には、排卵後に形成される黄体は1つだけになります。黄体は、主にプロゲステロンとエストロゲンを分泌し、妊娠を維持する機能を持っています。妊娠が成立しないと退縮してホルモン値は低下しますが、なかなか退縮しないとホルモンを出し続けます。黄体がなかなか退縮しない状態とは、hCGが体内に存在する状況で、これはhCGを投与した後か妊娠が成立した場合です。妊娠が成立すると胎盤からhCGが分泌され、その結果黄体が維持されることで妊娠が維持されます。
胚移植は当然妊娠するために行うものです。発育卵胞数が多くなると、採卵後にはすべて黄体へ変化します。形成された黄体の数だけホルモン値が上昇しますが、そのまま妊娠が成立してしまうとこの状態が持続してしまいます。これによりさまざまな影響が起こります。
新鮮胚移植では、回収卵15個くらいから合併症が増加することが報告されています。回収個数が増加した場合には、妊娠成立による合併症を回避するために全胚凍結を行うことがあります。ホルモン値は低下しないと月経は来ないため、一度月経が来た後は安全になります。
どうしても新鮮胚移植を行いたい場合は、わざと卵子が増えない方法を選択することもあり、卵子数をかなり減らした場合は採卵あたりの妊娠成績に差が出ることもあります。
まとめ
新鮮胚移植と凍結融解胚移植の比較から、まず新鮮胚移植の特徴について説明しました。長くなってきたので、何回かに分けてお話をしていきます。次は凍結融解胚移植の特徴についてです。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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