【やさしい】胚の形態評価【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
胚選別には、胚の形態評価を用います。特に保険診療ではPGT-Aは使用できませんので、形態評価が重要です。
初期胚の形態評価
受精が起こると、受精卵の細胞は1個→2個→4個→8個…と細胞分裂をしながら倍々に数を増やしていきます。初期胚は受精から2-3日目の胚で、細胞数は4~8個くらいです。受精卵は、細胞分裂を繰り返して赤ちゃんになろうとする過程で、フラグメンテーションという細胞の断片を切り離していきます。フラグメンテーションができる原因ははっきりとはわかっていませんが、胚のあまり良くない部分を分離していき、自己修復を行うようなイメージを持ってもらうと良いかもしれません。
初期胚の形態評価はVeeck分類が基本的に用いられ、
1.分裂した細胞(割球といいます)の大きさの揃い方
2.フラグメンテーションの量
で評価します。
割球の大きさが揃っているのが、グレード1およびグレード2です。
割球の大きさが不揃いなのが、グレード3、グレード4およびグレード5です。
さらに、
グレード1はフラグメンテーションがなく、
グレード2はごく少量のフラグメンテーションを認めます。
グレード3では少量のフラグメンテーション、
グレード4では多量のフラグメンテーションを認め、
グレード5ではほとんどがフラグメンテーションという状態です。
初期胚では基本的に、数字が小さいほうが胚の状態が良く妊娠率も高くなります。受精から2日目で細胞数が4個以上、グレードが3以上であれば、およそ20%は妊娠率が出ますが、グレード1でも妊娠率は30%程度です。グレード4以下では妊娠率は10%未満です。
胚盤胞の形態評価
初期胚がさらに細胞分裂を繰り返すと桑実胚となり、さらにコンパクションという現象を経て、胚盤胞に至ります。桑実胚まではただの細胞のかたまりですが、胚盤胞になると細胞群の真ん中に空間(胞胚腔)ができます。ある程度胞胚腔が大きくなると、胎盤になる細胞群である栄養外胚葉(trophectoderm;TE)と胎児になる細胞群である内部細胞塊(inner cell mass;ICM)が区別できるようになります。さらに胚盤胞が発育していくと、周囲にある透明帯という『殻』を破って外へ出てきます。
胚盤胞の評価は、この胞胚腔の大きさとTE、ICMの状態で行います。胚盤胞の評価で4AAなどの評価を見たことがあると思います。これは、グレード4で、ICMがA評価、TEがA評価ということを意味しています。3ABであれば、グレード3で、ICMがA評価、TEがB評価です。最初の数字は成長段階を表しており、数字が大きいほど段階が進んでいるということを表しています。前のアルファベットはICMの状態を、後ろのアルファベットはTEの状態を表しています。
胚盤胞の数字と初期胚の数字は全く意味合いが異なります。
胚盤胞の数字の意味は以下の通りです。
グレード1は、胚盤胞になってすぐの状態で、胞胚腔はまだ小さい状態です。
グレード2では、胞胚腔が少し拡張しましたが、TEとICMが区別できるほどではありません。
グレード3では、胞胚腔がさらに拡張し、TEとICMが区別できるようになりました。
グレード4は、透明帯を破る直前まで胞胚腔が拡大した状態です。
グレード5では、透明帯が破れ、胚の一部が外に脱出した状態です。
グレード6は、胚が透明帯から完全に脱出した状態です。
TEとICMはいずれもA、B、Cの3段階評価です。Aがgood(良い)、Bはfair(まあまあ)、Cがpoor(良くない)です。これらは細胞の密度で評価をしますが、B以上には大きい差はありません。BB以上が形態良好胚で、5日目の良好胚盤胞であれば50%以上、6日目の良好胚盤胞であれば40%以上の妊娠率をマークします。TEとICMが評価できるようになるのはグレード3以上であり、グレード1とグレード2にはアルファベットは付随しません。グレード4以上については、アルファベットが同じであれば同等と考えて差し支えありません。グレード5やグレード6でないから良くないといったことはありません。
見た目でもなんとなくわかる
今回は初期胚と胚盤胞の形態評価のお話をしました。細かい分類がありますが、パッと見でも何となく良し悪しはわかります。初期胚は小さいつぶつぶが少ないもの、胚盤胞はミラーボールみたいな見た目のものが良い胚です。これをしっかり明文化したのが、これらの分類になります。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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