【やさしい】開通していればOK?【不妊症ガイド】
たなかゆうすけです。
卵管の話の補足です。
子宮卵管造影検査は、卵管が開通しているかどうかを見る検査をいう話をしました。では逆に、卵管は開通さえしていればOKなのでしょうか?
卵管は精子にとっては通り道である
精子はお父さんからもらった23本の染色体が入った頭部と、運動性を持つ尾部に分かれます。精子はこの尾部を魚の尾っぽのように左右に動かして、前へ進んでいきます。誰かに運んでもらわなくても前へ進んでいけますので、通り道さえあればOKです。
この場合は、卵管が開通さえしていれば大丈夫そうですね。
卵子を掴むアームである卵管采
卵管の端っこは、卵管采と呼ばれます。卵管采は、排卵によってお腹の中に出た卵子を掴んで卵管内に回収する役目を持っています。ゲームセンターのUFOキャッチャーのアームを想像してもらったら良いでしょう。うまく卵子を掴んで、取り出し口へ運ぶことができればOKです。
卵子をうまく運ぶためには、このアームがしっかり機能していなければいけません。周囲とくっついてしまって(癒着)全然動かなければ卵子を運ぶことはできません。
卵管が開通しているだけではダメそうですね。
卵管は受精卵にとってはベルトコンベアである
卵管膨大部と言われる部分で受精が起こりますが、膨大部はお腹の中に近い部分です。着床するのは子宮の中ですので、ここからまだまだ移動しなければいけません。
ところが、受精卵は自分で動くための機能を持っていません。精子のような尾っぽがあって泳げるわけでもありませんし、自分でころころ転がったりもできません。どこかを掴むための腕も持っていませんし、走ったりするための足もありません。誰かに運んでもらわなければ子宮の中にたどり着くことはできません。
受精卵を運ぶのは、卵管の中にあるヒダ構造です。これがベルトコンベアのように受精卵を子宮の中まで運んでいきます。これがうまく機能していない場合は、子宮の中に着床することは難しくなります。
やはり、卵管が開通しているだけではダメそうですね。
卵管の『機能』は評価が難しい
このように、卵管が開通しているということは最低条件であって、開通さえしていればOKというわけではありません。卵管采や卵管内のヒダ構造といった卵管の『機能』に当たる部分もまた重要です。
子宮卵管造影検査はある程度の圧力をかけて造影剤を押し込んだ時に造影剤が流れていくかということを見ているのであって、造影剤が卵管によって運ばれていくところを見ているわけではありません。つまり、子宮卵管造影検査では、卵管の受精卵を運搬する機能が問題ないことを確認することはできません。
また、子宮卵管造影検査では卵管周囲の癒着を診断することができますが、診断の精度はあまり高くないのが実情です。卵管采が卵子をしっかりキャッチできるかどうかの判断は困難です。
結局は、卵管の『機能』に関する部分は、子宮卵管造影検査のみでは評価は困難です。卵管が開通している=『機能』に問題がない、とはならないため、妊娠の可能性を予測するのは難しいのです。
子宮卵管造影検査のみですべてを判断するのではなく、精液所見や年齢、卵巣予備能などを総合判断して、方針を決めていきましょう。
妊娠を希望される皆様が、幸せな結末へたどり着けますように…
たなかゆうすけでした。
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