「Fake it till you make it」でニューヨーカーに通じる英語になった話
英語圏へ長期留学をしても、英語が話せるようになる人もいれば、話せないまま帰国する人もいる。私の場合、アメリカ・カナダでの10ヶ月間の語学留学を通し、晴れて前者になることができた。留学中は常に英語を使うこと(これは現地で会う日本人に対しても)を徹底したことはもちろんなのだが、その他にも、私が留学を通して気づいたいくつかの重要な点をここに書き記したいと思う。ちなみに、留学前の私の英語はTOEIC 600レベルと、まあ、英語の基礎くらいの知識はあるかなという感じだった。
最初に通ったのは、アメリカ・ケンタッキー州の大学に付属している語学学校だった。初アメリカ!カーネルサンダース誕生の地ケンタッキー!ということで、早速ケンタッキーのKFCに向かったが、自分がフライドチキンをオーダーする英語力さえ持ち合わせていないことに愕然とした。相手が言っていることを全然聞き取れないし、自分が話す英語も全く相手に理解されなかったのだ。
そんな波乱の幕開けとなった留学生活だったが、語学学校に通い始めて8ヶ月経つころ訪れたニューヨークでは、現地の人と楽しく会話している自分がいた。なぜ自分の英語が通じるようになったのか?今その理由を考えてみると、大きく2つのことが思い浮かんだ。
理由1:英語の発音を練習し、発声のコツを掴んだ
日本の英語教育では、このもっとも基本的で重要な要素をあまり訓練しないまま、ネイティブでも知らない難しい文法や文章読解を強いられる。たとえば、「あいうえお」もきちんと発音できない外国人が源氏物語を使って日本語の勉強をしていたとする。あなたはその外国人に「ニホンゴ、ムズカシイデス。」と言われると、まず「あいうえお」の発音から練習したらいいのに・・と思うのではないだろうか。同様のことが、おそらく私の身にも起きていた。「L」と「R」や「S」と「TH」は聞き分けが難しいとされ、これらに特化したリスニング練習も数多く存在する。しかし、そもそもどの言語であれ、人間は自分が発音できない音を認識できる耳を持ち合わせていない。結局のところ、自分が発音できれば聞き取れるし、同じ音を自分の口で再現できなければ、いくらリスニング問題をこなしても聞き取れるようにはならない、という結論に至るまで、長い時間を要した。しかしその後、「外国人と筆談はしない!」という固い誓いを立て、英会話は口を使うスポーツという認識のもと、自分の口が正しい音を再現できるようになるまで繰り返し練習をした。
発声に関しては、巷ではあまり知られていないが、実は日本語と英語の発声方法は大きく異なる。日本語では口の前半分・先っぽのほうを使うのに対し、英語は喉の奥を大きく開き音を出す。英語は高い音で話すもの、というイメージを持っている人もいるかもしれないが、喉の奥を大きく使った発声をすると、女性でもかなり低音になる。
私はカナダ・トロントで英語の発音に特化したコースを受講したことがあるが、私にとって一番しっくりきた発声方法の説明は、日本人YouTuberの動画だった。彼は、「英語の発声は、日本語で『あ゛』を言う時の喉の開け方と同じ」といった内容を話していた。そのYouTubeを見て以来、2週間ほど「あ゛」を言いまくった。結果喉を壊すことになったのだが、「あ゛」を意識しながら英語の発声を何度も練習した結果、喉の奥で発声する感覚をつかむことができた。(ただし、「あ゛」を言いすぎると確実に喉を壊すので、無理のない範囲で行っていただきたい)
理由2:「Fake it till you make it」を実践した
英語を話している外国人(特にアメリカ人)を見たことがある人は、一度は彼らのリアクションが「デカ!」と、思ったことがあるのではないだろうか?私も彼らの、特に英語ネイティブの「Wow」「Oh my God」などがあまりに大きすぎて、彼らは演技をしているのではないか、と錯覚したことが幾度となくあった。だが、それが英語なのだ。英語では、自分の喜怒哀楽を全面に出していくことが求められる。それが日本語とは正反対であるがゆえに、日本語英語は聞き取られづらく、理解されにくい。私は留学を通してこの「英語のテンション」を身につけ、英語っぽく聞こえる英語を話せるようになった。
・・・とはいえ、普段フラットなトーンで話すことに慣れている日本人が、いきなり「Wow〜!!!」とかやるのは、大きな恥ずかしさを伴う行為である。最初は恥ずかしくてもいいのだ。大事なことは、「Fake it till you make it」を実践すること。自分が本当に英語を話せるようになるまで、英語話者のテンションをマネし続ける。それを続けているうちに、英語のテンションに合った感情が自分の中から湧いてくるようになる。
もう1つ、私は日本で「人が話しているときは黙って、その人の話を最後まで聞きなさい」という教育を受けたが、英語でそれは通じなかった。リスニングテストでもない限り、小さく発音されたワードを聞き流されることは多々ある。日本語のように、全てのワードを同じ強さ・一定の抑揚で話すと、英語話者はどの単語を拾っていいかわからなくなるのだ。逆に、大きく・はっきり・ゆっくり話す部分をつくることで英語独特の抑揚・リズムが生まれ、私の英語は相手に伝わるようになった。
たとえば、「Let's meet up at the station at six.」と相手に伝えたいとする。あなたならどの単語を強調するだろう?私なら、「meet up(これでひと単語みたいに扱う)」「station」「six」を大きく、時間をかけて言うと思う。なぜなら、最悪「Meet up station six」を伝えることができれば、相手はその意味をおおむね理解できるからである。これにより、let's MEET UP at the STATION at SIX.という英語のリズムが生まれる。
ここまで、私がどのようにニューヨーカーに通じる英語を手に入れたのかについて書いた。日本語が母国語の私たちにとって、英語は真逆の言語であり、その習得には多大な労力を要す(少なくとも私はたくさんの時間・お金えを要した)。しかしその苦労の分、自分の英語が英語話者の人たちに通じた時の嬉しさはひとしおであり、英語を話す自分に自信が持てるようになった。英語の学習方法は人それぞれだとは思うが、私の体験したことが少しでも英会話を習得しようと頑張っている人のお役に立てればとても嬉しい。