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出産後の就活で直面している難しさ

私はこれまで、正社員としてどこかの会社で働いたことが一度もない。29にもなって、世間でいう「社会人」経験がないことに対し、常々コンプレックスを抱えている。個人的には、多くの女性が就職→結婚→出産、と行くところを、私の場合(学生)結婚→(大学院卒業直後に)出産→就活、とただ同じことを異なる順序でたどっただけだと思っていた。しかし、多くの女性が前者の道を取るには理由があることも、行き詰まりながら就活を続ける今少しずつわかってきた。この記事では、出産後の就活で直面した困難についていくつか書きたいと思う。

現在出産して5ヶ月が過ぎたが、今年大学院を卒業したばかりなので第二新卒というタイトルはまだまだ健在で、新卒採用と中途採用(ハローワークなどが掲載する一般求人も含む)の両方から就活を進めている。私は妊娠が発覚する直前に、大企業から内定をいただいた経験があった。しかも今回は地元(田舎)での就活だから割と簡単に終わるだろう、という謎の自信があったのだが、蓋を開けてみると、出産後の田舎企業への就職はとてつもなく難しかった。

直面した困難その1:仕事に求めるものの優先順位が変わった 
出産前の就活では、会社選びの軸がとてもシンプルで希望に満ち溢れていた。私の場合、「大学で勉強した化学と、その後の海外留学で身につけた英語の両方を活かすべく、化学系メーカーである御社で海外営業を志望しています!」ときらきらした目で面接官に訴えていた。そのとき勤務地や勤務時間などは常識の範囲であれば特には気にしていなかった。

しかし今、そのきらきらした目はすっかり濁ってしまった。大前提として、地方(田舎)では、県庁所在地でない限り業界の選択肢はあまりない。そのため、「化学を活かしたい」とか「英語を活かしたい」とか言っていられなくなった。そして、最優先事項として、その求人が保育園の閉園時間30分前くらいまでに終われる仕事なのかをまず見るようになった。うちでは夫が昼〜夜遅くにかけて働いており、私が保育園の迎えに行くことが必須になる。これをクリアしていないと、いくら仕事内容に興味があっても「無理」となり、逆にこの条件をクリアしていたら、現状その仕事に興味がなくても「とりあえず応募せねば」となってしまった。次に、給料の微妙な違いやボーナスの金額などをまじめに気にするようになった。「子どもができるとお金が必要になる」とはよく聞くものだが、出産して思ったことは、赤ちゃんのお世話用品にお金がかかるというよりは、今まで購入する必要がなかった車やマイホームなどに子どもの笑顔が重なってちらつくようになるのだ。そのため、少しでも「稼げる」仕事に魅力を感じてしまうようになった。

直面した困難その2:新卒のような身軽さもなく、中途のような経験もない
新卒採用は多くが総合職採用であり、本社が地元でも支社・支店などがあると転勤の可能性がある、ということを私はすっかり忘れていた。地元ではかなり大規模な部類の会社の面接までたどりつき、最初に言われた言葉が「入社してすぐに〇〇県や××県に転勤になる可能性が高いですが、大丈夫ですか?」だった。全然大丈夫ではなかった。「・・・現在の家庭状況を考えると、難しいです」と答えると、「それでは、辞退しますか?」ときかれた。辞退以外の選択肢がなかった。地元に帰ってくる前は、私のほうが稼ぐから、夫にどこでもついてきてもらう!と意気揚々だったが、今その夫のお金に頼っているのは私である。夫は今の職場がとても好きだから仕事を変えたくないと言っているし、私の母(息子のおばあちゃん)も近くにいるし・・・と、いつの間にか私の身は鉄のように重く動けなくなっていた。

中途採用の場合、勤務地をかなり限定できるメリットがある。が、ここでも壁にぶつかった。何年か(何年も)会社で働いていた人のような、会社での具体的な功績・次の会社で成功できると思う具体的な根拠が書けないのだ。中途採用の場合、ポテンシャルよりも今持っているスキルなどを重視される。ここでいくら、「大学院で〇〇について研究し、そこで培った△△力を御社で発揮したいと思います」と言っても、採用側は具体的にイメージできないのだろう。

直面した困難その3:昔のように集中力が維持できない
耳にしたことはあったが、出産後、集中力の維持がとても難しくなった。これは考えれば当然だが、毎日夜中に起こされ、ふらふらしながらキッチンに踏ん張りミルクをつくって飲ませることで慢性的な睡眠不足に陥るからである。私はこの症状を過小評価していた。しかし、コロナの影響でオンラインに切り替えられた企業説明会や選考に参加している時、自分がパソコン画面に30分以上集中して向かうことができなくなっていることに気づいた。
新卒採用によくあるWEB上での一次試験を受けたときも撃沈した。SPIに出てくる日本語の長文読解では目の上を文字がつるつると滑り、SEの適性を見るための試験であるWeb-CABでは、規則性を問う問題の図形たちがだんだん全て同じに見えてくるのだ。

このように、出産後の就活は体力的にも精神的にも学生だった頃のように自由かつ純粋には動けない。今の自分の制限や限界をひしひしと感じながら、それでも来年4月の保育園デビューに合わせられるよう仕事を探さねば、と求人に応募すればするほどしんどくなっていることに気づいたのは、つい最近のことだった。自分の中で何か答えが出るまで私の就活は続くのだろう。その答えにたどりつけた時、またその話を書けたらと思う。

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