転職でWeb業界に入るにはディレクターになるのがオススメです
僕は自社の講座で教えたり、職業訓練などの転職を目指している人向けに講義をしたりします。
その中にはWeb業界とは違うところからこちらの業界に転職したいという人も多く、「どうしたらWeb業界の職に就くことができるか?」という質問をよく受けます。
そして、僕はいつも「ディレクターというポジションから入るのもいいですよ」と勧めています。
今回はその理由について書いてみたいと思います。
まずはディレクターとは何か?
まずディレクターとはどんな職かといいますと「プロジェクトがスムーズに進み、成功するために、クライアントと制作者との間に入ってより良い道を示す人」のことです。
これだけ聞くとメールのやりとりばっかりしていると思われますが、具体的には以下のようなことをします。
(ちなみにクリエイティブ・ディレクターやテクニカルディレクターというもっと専門的な分野に特化したディレクターはいますが、今回は全体的な進行など含めたディレクターのことを指しています。)
プロジェクト初期段階
- クライアントからの要望ヒアリング
- ざっくりとした要望には、技術的、予算的な提言
- 見積もり、スケジュール作成
- 外部パートナー含めプロジェクトチームのアサイン
制作段階
- サイトマップ、ワイヤーフレーム作成
- システムが絡む場合にはシステムの図(シーケンス図、APIなど)作成
- 展開するサーバやシステム構成の提案
- デザインルールやブランディングルールの作成
- 詳細スケジュール作成
- 制作者の進捗管理
- クライアントへ展開、修正対応
運用段階
- SEO対策案
- Google Analyticsの分析、提案
- システム、サイトアップデートのとりまとめ
「これはディレクターではなく営業もしくはマーケティングの人の範囲だ!」などといろいろと思われる人もいるかもですが、小さな会社ではディレクターの守備範囲はとても広いです。もちろん中にはディレクターだけでは解決できず、デザイナーやエンジニアから聞かないといけな事柄も多いですが、それをまとめてクライアントに提言するのがディレクターです。
うちの会社は数名程度の小さい会社ですが、それでも10-20名が集まるプロジェクトを仕切っていくこともあるので、ディレクターの役割はとても広くかつ重要になってきます。
なぜディレクターをオススメするのか?
ディレクターはいつも人手不足
いつも人で不足が叫ばれているWeb業界で、一番不足しているのはエンジニアです。その次に不足しているのはディレクターです。細かくいうとデザイナ、エンジニアも含め、ディレクションできる人たちが不足しています。
デザイナ、エンジニアは良くも悪くも基本は職人肌です。できれば机に向かって黙々と作業をこなしていきたいと思っています。
そんな中、クライアントの打ち合わせを変わりに出てくれ、内容をブレイクダウンし、具体的な指示を与えてくれるディレクターは救世主です。
さらに仕様変更や無理な問題をうまくまとめ、スケジュールまで調整してくれる人は神様に近いです。
つまりそういったデザイナ、エンジニアが面倒と思われている職を自ら買って出てる人は少なく、前提的にいつもディレクターは不足している感があります。
ディレクターがいないときはデザイナ、エンジニアが代わりにそちらのタスクもこなしますが、基本的に彼らは誰かに任せたいと思っています。
ディレクターは前職の経験を活かせる
他業界からWeb業界に転職しようとしている人に「接客が嫌になったので黙々と作業できる職に就きたい」ということをよく聞きます。
たしかにWeb業界は他の接客が必要な業界よりも人と話す時間が少ないですが、今まで自分が培ってきたキャリアを真っ向から否定するのはオススメしないです。
上記で述べたようにディレクターはクライアントとやりとりする場面が多くあります。以前の職で接客の経験がある人はすでにその接客のスキルを持ち合わせています。つまりその時点で全くの未経験ではないのです。もちろんWebの技術など知っておくことはたくさんありますが、「お客様の要望をきく」ことや「お客様と交渉する」ことはどの業界においても必要なスキルです。
なので、接客の経験がある人はまずはディレクターからWeb業界に入るということを考えてもいいと思います。
仕事の声がかかるのは主にディレクターから
Web業界は転職も多く、人の流動が激しいです。またフリーランスになったり、起業したりする人もそれなりにいます。そういった状況でコンスタントに仕事をもらう方法は第一番は「人脈」です。
その人脈を築くためにディレクターというポジションはとてもいい位置にいます。
もちろん優秀なデザイナーやエンジニアは直接声がかかることは多いのですが、まずお客様と接する機会が多いのはディレクターです。
「こんな仕事あるけどやってみますか?」と声をかけられるのもディレクターはよくあります。
つまりディレクターをすることで、人脈が広がり、今後転職や独立してもそのつながりを活かせるということです。
ディレクターになるのに必要なスキルは?
一つの専門スキルと幅広い知識が必要です
僕がおすすめするのは一分野に精通した専門スキルと、それを取り巻く周辺の幅広い知識です。
「やっぱりひとつの分野について知っておかないとディレクターになれないじゃないか」と思う人もいるかもしれません。理想をいうとそれが一番正しいです。つまりデザイナーを数年経験し、その後ディレクターになると、デザインの専門知識を基軸にして、クライアントともやりとりをしていけるからです。
ただ、業界未経験でも、特に専門知識がなくてもディレクターになることはできます。その場合どのようにして自分にない専門知識を補うかというとそれは「わからないことはきちんと聞くスキル」があれば大丈夫です。
分からないことをきちんと聞くスキル
Web業界で何年も働いていても分からないことはたくさんあります。技術は日々進歩していますし、自分の興味のない分野はなかなかニュースとしても入ってこないからです。
そして、プロジェクトで分からないことがでてきたとき、誰かに聞いて自分で納得して進めていけるかというのがディレクターとしてもっとも重要なスキルのひとつです。
例えば僕はフロントエンドの技術を軸にディレクションをしていますが、デザイン、バックエンドのことは分からないことが多々でてきます。レイアウトや色味を修正すべきかどうか?AWSで何を設定すればいいのか?そいういった細かいことはまずまわりのデザイナ、エンジニアに聞きます。そしてある程度理解してからクライアントに返事をします。
デザイナ、エンジニアからのやりとりや返答をそのままコピペでクライアントに送っていたら余計に物事がややこしい方向へ向かいます。自分自身の専門のスキルや経験がなくても、この「分からないことをきちんと聞く」そして「自分の中である程度理解してから答える」ということができれば、どのようなプロジェクトをうまく乗り越えられるでしょう。
技術を諦めたディレクターに未来はあるのか?
昔Flashのプログラミングを教えていたときに、プログラミングが苦手でディレクターになる人をよく見かけました。「プログラミングを知らずにいきなり仕切る立場になるのは邪道だ!」と当時は思っていたのですが、その人達は今もきちんとディレクター職を全うしています。それどころかとても重要なポジションに付いている人もいます。
その人はプログラミングは合わなかったけど、ディレクターは合ってということなので、邪道でもなんでもなく適正な方向へ進んだということです。
また僕みたいに技術を諦めているわけじゃないけど、仕切ることに時間を割くことがが多くなり、技術だけをやっていくことができなくなったという人もいます。
そしてときどき「エクセルで見積もりとスケジュールばかり作っていないで、黙々と技術の勉強したいなあ」と思うことが多々あります。
こうやってnoteを書いている時間も、この時間を技術勉強にあてたほうがいいんじゃないかと考えたりもします。
ただ、まあこれはいろいろと自分で取捨選択もして、成り行きでなった結果だし、ディレクターやりつつ周辺の技術もそれなりに覚えていくようにすれば今後のキャリアもなんとかなるのだろうと一応楽観視しています。
と、考えている現役ディレクターの人も多いのではないでしょうか。
この制作業界にはデザイナーとプログラマという作る人がいるだけでなく、様々な役割の人がいますので、ぜひ作るだけにこだわらず、ディレクターという道も選んでほしいと思います。