飯倉片町
東京タワーから六本木交差点に向かって外苑東通りを進む。警備の厳しいロシア大使館を左手に、今のところ(2024/8現在)都内で一番の高さを誇る麻布台ヒルズを右手に見ながら進めば、飯倉片町の交差点に出る。この外苑東通りはいわゆる尾根道で、北側に折れれば溜池方面や赤坂方面に下ることになるし、南側に向かえば麻布に向かう坂道がいくつもある。途中、南側の急な坂を降りれば麻布狸穴町である。
飯倉片町の大きな交差点を左に折れれば麻布十番に向かうが、永坂という名前の坂を降りる。そもそも永坂は「長い坂」に因むということだが、江戸時代の地図を見ても武家屋敷に囲まれて「永サカ」と記載されている。車道の真ん中に首都高環状線が通り、その脇に2車線ずつ一般道が走る幅の広い道路で、首都高は高架と地下の両方に車線があるため飯倉片町の交差点から麻布十番方向には坂を降りた先まで400m以上にわたって横断歩道はない。坂の東側、高級住宅が立ち並ぶエリアが麻布永坂町であるが、麻布狸穴町とともに旧町名が現在も残る場所である。
そもそも飯倉片町交差点から下る坂は新しく作られたもので、旧道は一つ六本木寄りから下る坂道である。その角には江戸時代には釣り道楽の旦那が釣り上げた珍しい亀を見世物にして見物客に売って大当たりしたという「お亀団子」という名物の店があったそうで、有名だったらしく、同名の噺や「黄金餅」という古典落語にも名前が出てくる。坂を下った先にあるのがこちらも蕎麦の名店、永坂更科である。
先述の通り、飯倉片町の交差点から坂を降りるまで横断歩道はないのだが、飯倉片町交差点からすぐのところには地下の横断歩道がある。道路を横断するだけではなく、隣接のすこし低い住宅街からのアクセス道でもある。人通りは多くないが、大通り沿いの公衆トイレへのアクセスが良いため、交差点で警備する警察官がよく通るので治安は良い。