哲学のアプローチ:箴言的アプローチと体系的アプローチ
はじめに
趣味で色々な哲学書を読んでいます。
私見ですが、哲学を大きく分けると「箴言的アプローチ」と「体系的アプローチ」の2つのアプローチに分類することができるように思います。
今回は、この2つのアプローチについて詳しく見ていきます。
箴言的アプローチ
箴言的アプローチは、「人間は考える葦である」「四十にして惑わず」といったように、短く力強い表現で深い洞察を伝えることを重視した方法です。感情に訴えかける力が強く、読者に強い印象を与える内容です。
代表的な哲学者としては、ニーチェ、パスカル、ショウペンハウエルが挙げられます。古くは中国の諸子百家もこのアプローチに近いです。また、哲学者というより文学者として知られるゲーテの格言もここに分類されるかと思います。
箴言的アプローチの利点は、多くの人々に共感される普遍的な真理を伝えることができる点です。しかし、文脈から切り離されて引用されるため、その背景や詳細な論理が見えにくい面があります。
一般的に「哲学」というと、このアプローチをイメージする人が多いように思えます。
体系的アプローチ
体系的アプローチは、観察や洞察をもとに論理を積み上げて、論理的に構築された理論を提供するアプローチです。問題を包括的に理解し、矛盾なく一貫した理論を構築することを目指します。
代表的な哲学者としては、デカルト、カント、ヘーゲル、フッサール、ハイデガーなどが挙げられます。古くはアリストテレスの形而上学や、上座部仏教、龍樹などの仏教哲学もこのアプローチかと思います。
体系的アプローチの利点は、問題を多角的に分析し、深い理解を提供できる点です。また、異なる知識を一つの体系としてまとめられており、読者が自分自身で論理を追い、批判的に考えることが可能です。
もちろん、「体系的」というアプローチは筆者の造語です。科学的アプローチという命名も検討しましたが、「科学的」というと「箴言的アプローチは非科学的」という価値判断が含まれてしまうため、「体系的」という方が公平かと思いました。
おわりに
個人的な好みでは、私は体系的なアプローチの哲学の方が好きです。徐々に論理を積み上げて世界や人の見方を構築していく流れを追うのが非常にスリリングで楽しいです。一方で、箴言的アプローチは信じるか信じないかに終始しがちで、共感できない場合は読んでいて退屈になってしまいます。
この区分も、筆者が哲学書を読んでいて非常に楽しい時と楽しくない時がある違いについて考えたところから着想しました。ただ、これは個人的な好みであり、実際は両者は互いに補完し合うものと考えた方が良いかと思います。
また、両者をつなぐキーは、マイケル・ポランニーの暗黙知やフランシスコ・ヴァレラのエナクティブ・アプローチなどにあるように思え、このあたりの書籍を読んで考えを深めていきたいと思っています。