中国語連続文法1
【アポコイヌー】
さて、皆さんは、アポコイヌーという言葉をご存じでしょうか。「アポ子犬」「アポ請ひぬ」のような語感もありますが、リンクをご覧下さい。
Wikipedia様の、英語版によると、標準的な現代英語としては文法的(グラマティカル)ではないとのことで、その登場人物が教育を受けていないということを表現する目的で、セリフ等に使われる、と、また、前のセンテンスの補語や目的語が後ろのセンテンスの主語になることが多い、とのことのようですし、ドイツ語版のグーグル翻訳によると、古典ギリシャ語やラテン語の詩では非常によく使われ、叙事詩『ニーベルンゲンの歌』のように、中高ドイツ語でもよく使われる、とのことのようです。
さて、共有構文アポコイヌーですが、中国語にもあります。兼語式文、兼語文と、呼ばれるもので、前のセンテンスの目的語が、後のセンテンスの主語になるような形のものです。この場合、前の目的語でありかつ後の主語であるようなものを兼語と呼ぶそうです。
我請[你]吃飯=我請你+你吃飯
我请[你]吃饭=我请你+你吃饭
我請[儞]喫飯=我請儞+儞喫飯
「你/儞」が兼語の兼語式文という構造です。翻訳としては、お食事にご招待したいのですが、とか、ご飯奢ります、とかくらいでよいものと存じます。
我、儞(なんじ)に飯を喫するを請ふ(我請ふ、儞、飯を喫せん)、と、訓読した場合、別に共有構文のようにも見えませんが、それは、日本語として訓読をどうするのかの問題で、中国語としては、「我、儞に請ふ、儞、飯を喫するを」のような感じになる、とでも言えばよいでしょうか、共有構文という認識になるようです。
なお、付け加えますと、ここで、抑えておく必要があると思われるのは、アポコイヌー、共有構文、兼語文の場合、後半の「儞喫飯」を、名詞節(「儞(なんじ)飯を喫すること」のような訓読になるのでしょうが)と見ることはできないらしい、その全体を目的語と見ることはできないらしい、ということで、入れ子構造と言われるような構造にはなっていない、という認識らしい、ということです。
私が言っている連続(注1)というのは、このようなアポコイヌーとはやや異なります。敢えて、SVOという言葉を使いますが、SVOという文型を中国語に認めず、SVとVOとの連続(コンティニュエ―ション/continuation)のようなものとして、その結果を見る、というものです(注1)。
勿論、本当は(私の意見としては)、中国語には、SもOもなく、その位置に「体/ti」が来ているだけです。また、Vも中国語にはなく、その位置には「用/yong」が来ます。
なお、連続文法(注1)という言葉は、新宿日本語学校校長、江副隆秀先生のご著作からお借りしたものです。
よく言われることですが、
I love you
我 愛 你
我 爱 你
我 愛 儞
wǒ ài nǐ
この部分だけ切り取って見ると、確かに英語と中国語とは似ているようにも思えます。ですが、だからといって、中国語にもSVOのような構造があるか否かについては、慎重に判断した方がよいものと存じます。
我愛你/我爱你/我愛儞の文法構造は、「我愛」と「愛儞」との連続(注1)である可能性もあります。その連続(注1)を視覚的に分かりやすく図示(注2)すると上のようになります。
なお、ルビ、振り仮名(ここではピンイン)を、漢字の上でなく下に配置する方法、及び、その学習効果については、学校法人 江副学園 新宿日本語学校の、江副式教授法集中講座を受講した際、ご教示いただきました。
参考文献:
注1:江副隆秀『日本語教授法の一考察3江副式重箱文法』新宿日本語学校1997p33
注2:江副隆秀『日本語の助詞は二列』創拓社出版2007p22-23他