第42回 発掘調査報告書 執筆者の意識と公開活用
1、発掘調査報告書の活用に向けて
発掘調査報告書について、
多大なる税金を投入して作成しているものですので
どんどん活用していくべき、と考えています。
昨今の流れでは基本的に300部が作成の上限になっており、
関係者、近隣の自治体、研究機関、博物館などに寄贈するとほとんど残りません。
図書館でもよくて郷土史コーナーで禁帯出扱いとなっていることが多いのではないでしょうか。
そこでWebでダウンロードできるようにする、という取り組みが
全国遺跡総覧
です。
2、遺跡総覧とは
最初は島根大学を中心とした全国21の国立大学が連携して
全国遺跡資料リポジトリ プロジェクト
として取り組んだのがきっかけです。
その後 奈良文化財研究所が事業を引き継ぎ、発掘調査の成果に対して誰でも手軽にアクセスできる環境作りに寄与しています。
2017年末現在では864機関が参加し、21154冊のデータが閲覧できるようになっています。
考古学関係のイベント案内も随時掲載されているので、より多くの方に活用していただけるのではないでしょうか。
3、ワードマップで作成者の意識が分かる
報告書は基本的に全文検索が可能になっており、
報告書ワードマップ
という考古学関係用語の出現回数を図化したものも公開されています。
どんな言葉が頻出ワードだと思いますか?
発掘?竪穴住居?
結構意外なワードです。
①遺物に関するワード
②遺構に関するワード
③その他のワード
と分かれていますが
①は「ナデ」
②は「土坑」
③は「シルト」
となっています。
全て一般的とは言いずらいワードなので
少し解説すると、
「ナデ」は土器を製作した際に施された技法のことで、ヘラや指で撫でることで形や厚さを整えることを指します。
土器製作の基本中の基本ということで頻出ワードになったのでしょう。
「土坑」は簡単に言うと土に掘られた穴のこと。
竪穴住居だったり、建物の柱穴だったりすればそう呼ばれますが、明確に用途を決定できない穴があると、とりあえず「土坑」と呼んでいます。略称でSKと呼ぶので、番号とセットにしてSK01と言う風に付番されていきます。
「シルト」というのは土質のことです。発掘調査では土がどのように堆積しているのかを観察することが重要になってきます。
自然に堆積した土なのか、人為的に埋められた土なのか、それはどのような順序で、どのくらいの時間をかけて堆積したのか、を判断するため、できる限り土の状況を記録することになります。
その際に砂っぽいのか、粘土っぽいのかの中間をシルト質と呼んだりします。
他にもどのような言葉が頻出ワードになっているかが分かると、発掘調査報告書がどのような書物となっているかが明らかになっていますので、是非実際に見てもらえるといいかと思います。