第901回 人がミュージアムグッツを買うときは
1、ミュージアムグッツの可能性
ちょこっと予告した通り、
昨日受講した #ミュージアムグッズサミット の内容をシェアしたいと思います。
北海道大学総合博物館の企画展「DISTANCE #学びと距離の物語 」のコラボ企画という位置づけで
学びと距離の物語
というフレーズが今の時代を象徴しています。
ディスタンスは面白い切り口だ、と語る主催者の言葉には
希望があふれているようで元気をもらえます。
そんな思いに引き寄せられたのか
当日は80名以上がエントリーし、半数以上が北海道の外からの参加だと公表されました。
まさに新しい生活様式の可能性を示す一つの指標にもなっているかのようです。
2、積み重ねられた実績
メインのトークゲストは金入健雄氏。
株式会社金入の取締役で
八戸市や
仙台市での取り組みが紹介されていました。
東北の伝統文化に対するリスペクトと地域の未来を考える真摯な姿勢はとても共感を持てます。
導入で紹介された動画は南部裂織(なんぶさきおり)という古布を裂いてつないだカラフルな糸玉から紡がれる工芸品。
製作者の思いを物語として見せることで、作品の価値をさらに高める手法は、これからより普遍的になっていくことでしょう。
金入氏が受講生からの質問に答える形で語られた
ミュージアムが持っている収蔵品が持つ物語、
作品のネタが豊富にあることはうらやましいという感覚。
そう、博物館は本来物語の宝庫であったのです。
うちの町には魅せる箱がないとか、設備がダメだとか嘆いてないで
地域の作家さん達と連携して、地元の歴史文化を生かした作品を作ってもらって
販売する場になっていった方がいいのではないか、ということ。
普段からこの入館料でこの展示内容はぼったくりだとクレームを入れられることがあるので
公立博物館の本来のあり方に戻して無料にして
コンセントに共感してくださった方に作品を購入してもらうことで運営資金を得る形の方がいいのかな、とも思えてきました。
現状では観光地のど真ん中にある立地を活かせてもいないし、
バックヤード設備どころか事務スペースすらないので郷土資料館にもなり得ない、そんな中途半端な博物館ならやめてしまってギャラリーにしてしまいたい。
また金入氏は職人さん同士のコラボ作品に対しても
誰かが責任を取る形でないと世に出ないもの
と語られていました。
そうそう、これなんだよ、と声を出してしまいます。
行政の仕事でもっとも不足していると感じるのが、
私が責任を持つから必ず成功させましょう
という姿勢。
失敗してもクビを切られることもないし
成功しても称賛されることもない。
そう、金入氏の言葉ではもう一つ
工芸や技に興味はない方でも自分の暮らしには興味がある
というものも印象的でした。
学芸側、さらに民俗分野に疎い自分からすると、ついその技術の高さを喧伝したくなりますが、
いかに技巧的であろうとも、お金を出して購入して手元におきたいと思うかどうかは別の話。
普段使いできるものなら、それを使っているところを想像して、ちょっと気持ちが高揚するような、そんな作品であればこそ技術やデザインに対価を払ってくれるんですよね。
通常の文化財業務に忙殺されている中では思い至らない着想をたくさん得た気がします。
3、信念は武器
いかがだったでしょうか。
博物館や文化財分野に関連してSNSで話題になる取り組みといえば
やはり思想がはっきりしている、という共通点があるように思います。
均質化の波に抗う
買い手を育て、地域を支える
金入氏の言葉からは文化の力に対する強い信念を感じました。
いま己が信念をもって取り組むべき課題は何なのか、
改めて考えるきっかけを与えてもらったような気がしました。
私も負けじと挑戦していきたいと思います。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。