第230回 同時代を生きて見えるもの
1、考古学者 人生を語る
地元紙 河北新報に
談 かたる 人生 仕事
という連載記事があります。
先人たちの人生を振り返り、仕事にかける想いを紹介するもので、いつも興味深く拝読していました。
今回は考古学者 岡村道雄 氏を取り上げていたので
このコラムでも少し紹介してみようと思います。
2、考古学者の半生
岡村氏は東松島市の宮戸島で貝塚の調査に長年関わった人物です。
記事によると、いわゆる考古ボーイで、
少年時代には地元新潟県上越市の縄文遺跡、茶新田遺跡で土器や石器を集めていたようです。
早くから考古学者を志し、東北大学の芹沢長介氏に憧れ、その門を叩きます。
後の捏造事件への伏線として、芹沢氏が石器だと主張する資料を偽石器だと見抜いていたといいます。
遺跡調査に関わるうちに見込まれて文化庁の調査官へ。
発掘調査費用をだれが負担するかという重い課題を突きつけられた訴訟問題への対応、
「発掘された日本列島」展の創設
阪神大震災後の緊急発掘調査への支援体制構築
など直接対峙した問題については臨場感がある描写となっていました。
そして、12月12日掲載の第5回目は核心となる、捏造問題に触れられています。
3、旧石器捏造問題関係者が語る
捏造が発覚したのは2000年。私も高校生だったのですが、報道がすごく印象に残っています。
記事では、主犯格の人物と現場を共にしていたのにもかかわらず、犯行を見抜けなかったこと、批判を受けて生きた心地がしなかったことを本人の言葉で吐露しています。
奈良文化財研究所に移って高松塚古墳の壁画古墳保存問題に取り組んでからも体調を崩し、入院したこと、
完治しないまま共同研究事業でカンボジアに行くと自然と治っていたこと
明かされるエピソードはきっと将来学史で語られることになるようなものばかり。
さらに12月19日に続くとのことなので、楽しみです。
4、学史上の人物と同時代の眼
考古学も明治時代に初めて京都大学に考古学教室を開設した浜田青陵以降、学問の歴史を積み上げてきました。
古いことが大好きな考古学者ですから、考古学がどのように発展してきたかを考える考古学史という学問もほかの分野よりも盛んに行われているように思います。
そんな中、賛否両論ありますが、岡村氏は間違いなく学史に残る人物になるでしょう。
私自身も岡村氏には少し因縁がありまして、とあるミスで文化庁の調査官から叱責を受けた場面で、たまたま居合わせた岡村氏にも便乗して批判されたので正直嫌いな人物でした。
捏造事件の関係者という印象もありましたし。
ですが、このように公平な立場からの報道を見ると、当たり前ですが本人の言い分もあり葛藤もあったのですね。
同時代人として見える部分と見えずらくなってしまう部分があることを認識して人を評価していかなくては、と思います。
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