第241回 九州に両有馬氏並び立つ
1、読書記録19
『月刊文化財 664号 ◆新指定の文化財―建造物―』
本号では新たに国宝・重要文化財になった文化財のうち建造物について掘り下げて紹介されています。
そのうち、このnoteでは
新たに重要文化財に指定された
有馬家霊屋
を取り上げたいと思います。
2、 大名家の墓所の中でも
福岡県久留米市に所在する、久留米藩主有馬氏の菩提寺梅林寺の境内に歴代藩主の霊屋があります。
今回、重要文化財に指定されたのは、
・梅林院霊屋
有馬則頼の墓所。寛永7年建立で、三間四方の入母屋造の本瓦葺。
内部は石敷きになっており、則頼夫妻と娘の五輪塔が配置されています。
・春林院霊屋
有馬豊氏の墓所。寛永20年建立で三間四方の宝形造の本瓦葺。
豊氏夫妻、3代忠頼、5代頼旨の五輪塔が内部に配置されています。
・春林院位牌廟
豊氏の位牌堂。寛永20年建立で二間×三間の入母屋造(当初は宝形造) 。桟瓦葺で内部に宮殿型の厨子が収められています。
・長壽院位牌廟
豊氏室(徳川家康養女)の位牌堂。慶安五年(1652)建立で上記の廟と同様の規模と形式。 宮殿と9代頼徳の石塔が内部に安置されています。
・瓊林院位牌廟
忠頼の位牌堂。承応四年(1655)建立で規模・形式は上記と同様。内部に宮殿型の厨子。
附として 五輪塔7基、石灯籠9基、宮殿3基、石塔1基を含む。
重要文化財になった理由は
全国的にも大名家墓所としての建築群が現存しているものとして有数の規模を誇ること、
藩祖の有馬則頼は墓塔覆屋、
初代豊氏と二代忠頼が墓塔霊廟と位牌霊廟に重複して祀られ、
三代目以降は三重石塔
というように、墓標形態の変遷が明らかなこと
が挙げられます。
3、全くゆかりのなかった同姓が
九州で有馬氏と言えば、
龍造寺氏と肥前の覇権を争ったキリシタン大名の有馬義貞や晴信が思い浮かびますが、
久留米藩の有馬氏は摂津国(大阪府)の豪族で、出自も全く別です。
早くから豊臣秀吉に従って功を成した有馬豊氏が、関ヶ原の合戦や大坂の陣で徳川に味方して加増を受け、最終的に久留米に21万石の大名となりました。
島原の乱が発生したときには日向延岡には有馬晴信の子直純がおり、
両有馬氏ともに出陣しています。
違いに何か意識はしたのでしょうか。
遠隔地の所領を治める分家とは同族意識があったような例はたまに見かけますが、たまたま同姓で近くに所領を持っている例はなかなかないと思うのですがいかがでしょうか。
読者のみなさんでご存知のことあれば教えて下さいね。
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