第81回求められる歴史学者
1、歴史学者が国会に呼ばれる時
宮城歴史史料保全ネットワークの佐藤大介先生が、7月11日参議院東日本大震災復興特別委員会にて参考人招致を受けました。
意見陳述したのは
災害からの史料救済の意義と課題、可能性について
熊本地震と、今まさに史料のレスキューが求められている豪雨災害、
次々に史料をどう救うのか、その活動にどのような意義があるのかに注目が集まっています。
2、史料のレスキューとは
ここで言う史料とは、個人宅や寺社など民間で守り伝えられてきた古文書が中心となります。
日本では古くから重要な事柄を紙に記して受け継いでいく習慣がありました。
例えば土地の権利関係を証明するための書類は、裁判で争う時に有利な証拠になります。
大きな行事の際にどう振る舞うべきか、どのような段取りで進めるべきかを詳細に残すことも少なくありません。
イエの存続を第一に考え、子孫たちのために大事に保存していたのでしょう。
しかし、一度災害が起これば、古文書を納めた蔵は倒壊し、長持は流出する可能性があります。
本来はそのイエのために残されたものであっても、結果としてはその地域の歴史を明らかにする貴重な史料となっているものですので
個人所有のものであっても災害前から
どこの家にどのような史料がどれくらいあるのかを把握することが第一段階としては必要となります。
その上で万が一に備え、写真で記録を撮っておく必要があります。
このような作業を通じて、史料の所有者と良好な関係を築くことが史料の散逸を防ぐ一番の近道にもなります。
そのような活動をしているのが
史料保全ネットワーク
という団体です。
構成員は大学や博物館に所属する専門家や学生さんです。
不幸にして被災した史料を救い出して、洗浄したり、保存処理をしたりと大変な作業をしてくれていますが、多くはボランティア的な活動になっているとお見受けします。
史料を後世に残す、その使命感がなせる業なのでしょう。
3、研究者のあるべき姿
今回国会での陳述を終えた佐藤氏は
日本の豊かな歴史文化遺産が、現場での善意に加え、社会的合意と、制度のもとで守られていくような社会づくりに、引き続き務めてまいりたいと思います。
と感想を述べておられます。
自分の研究活動を評価され、第一人者として国会に招致される。その機会を捉えて史料保全の必要性を訴える。
同じ歴史研究者の端くれとして、大変誇らしく思います。
日本の大学改革の議論の中で、歴史学を含む人文学の必要性に疑問を呈されてから様々な反論を目にしました。
その中でも今回の佐藤氏の陳述は最も影響力が大きいものの1つではないでしょうか。
国会側でだれがこのような機会を用意してくれたのか、気になるところではありますが、いずれ聞こえてきたらまたこの場でも触れて見たいと思います。
佐藤氏を目標にして、私も拙いながら続けている歴史文化の魅力発信を続けていくことで、求められる存在になれるよう務めてまいりたいと思います。
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