第169回 幻の寺と蓮華の瓦
1、職場にご恵送シリーズ24
『真慈悲寺推定地出土の中世瓦』
『日野市百草倉沢地区 歴史散策ガイド』
たまたまうちの町で発行した発掘調査報告書が欲しいとのことでしたので、お送りしたら返礼で届きました。
東京都日野市。
そこに幻の寺と呼ばれた真慈悲寺があります。
2、市民が活かす幻の寺
真慈悲寺という名前は全国でも珍しく、誰にでも区別なく広く与えられる仏の真の慈悲と いう意味だといいます。
創建は平安時代までさかのぼり、鎌倉時代には幕府祈願所となり繁栄を遂げます。
しかし、建武二年(1335)に台風によって多くの堂宇が倒壊して廃寺と なっってしまいます。
近世にこの地の領主となった小林氏が別な寺を建てたため、真慈悲寺は「幻の寺」になってしまいます。
前者は日野市郷土資料館が行った出土中世瓦の調査報告書。
後者は真慈悲寺から始まるこの地の霊場としの歴史を豊富な文化遺産を紹介することで多くの方々に知ってもらうという目的で作られたガイドブック。
特筆すべきはどちらの作成にも市民の力が大きく関与していること。
地域の歴史を地域住民自ら掘り起こして、活用を図る。教科書のような文化財のあり方ですね。
3、日野と松島のつながりは
この地は近世、甲州街道日野宿としと栄え、土方歳三の姉婿佐藤彦五郎が仕切っていたことでも知られています。ガイドブックには彦五郎ゆかりの文化財も紹介されています。
わが町との関わりで言うとなんといっても、真慈悲寺の瓦。
その特徴として、13世紀後半の軒平瓦に刻まれた「蓮華唐草文」が挙げられます。なんの変哲もないこの文様実はすごく重要です。日野市の近く、武蔵国府などで出土するのは「剣先文」という文様が一般的で、ここだけ特殊です。鎌倉にもありません。
ルーツは南都、奈良にあり、関東では筑波山麓にわずかにあります。
そしてミヤギは瑞巌寺の前身である円福寺。
なんの脈絡もないこの地域に何故同じモチーフの文様の瓦がふかれたお寺があるのか。
興味は尽きません。