第79回遺跡は誰のものか
1、発掘調査費用は誰が負担すべきか
文化財は大切に!
専門というか本業で文化財に触れている者としては
赤信号は止まれ!
と同じくらい自明の理ですが、
もちろん価値観は多様なので
文化財のせいで開発ができないとか
文化財に指定されたせいで自分の財産なのに自由にできないとか
不満を抱かれてしまうことも頭では分かっています。
現在日本の法律では遺跡内で開発行為、つまり建物を建てるとか、地形を変えるとか、を行う場合には事前の発掘調査費用を原因者に負担をお願いすることになっています。
2、制度不備で失われるもの
このお願い、というのがミソで、実は努力義務になっているので、
費用負担が義務だとは言ってはいけないし、
かといって行政で負担しますよ、とも言えない場合が多いのです。
調査成果は専門家目線の報告書にまとめられ、出土した遺物に対する権利も土地所有者には放棄してもらっています。
現場の担当者でもイマイチ納得できない理不尽さがある状態で、どうして相手を納得させられるのでしょう。
結局、行政当局には知らされずに、未知の遺跡が破壊されることは往々にしてあります。
文化財が面倒だ、という意識は同じ行政内でもはばかることなく公言されています。
3、望ましい姿とは
まずは正しく理解してもらうこと。
うちみたいに平地が少ない町では遺跡内でも遺構が密集しておらず、思いの外調査期間は短くなることが多いです。
面倒だからと手続きを疎かにして、後から発覚すると余計に手間がかかりますよ、ということ。
調査成果は一部のマニアだけに喜ばれるものではなくて、地域の誇りになるような発見なんですよ、と語れるようにならなくては。
あとは子どもの時から歴史文化に触れさせ、大人になっても文化財を身近な存在だと思ってもらうこと。
究極的にはより良い方法で文化財を守っていけるような法律、仕組みをつくる。政治力が必要です。ロビー団体を作ってチマチマ陳情しているのではらちがあかないので、歴史文化をよく理解した代表を国会に送り出す必要があると思います。
他のnoteでも触れましたが、これからはクラスタというか、コミュニティごとに実現したい社会は細分化していく流れになるでしょう。それぞれの想いを真に代弁出来るような代表を、ルールを決める側に送り込んでいくこと、それが大事になっていくのではないかと思います。
突拍子もないスケールの話のように聞こえるかも知れませんが、時代の流れが速くなっている昨今であれば、もうすぐそこまで来ていると思います。