第938回 人員削減は誰のため?
1、国会会議録検索システム
を使って「文化財」という言葉が国会でどう語られてきたのかを
戦後の第一回国会から少しずつみてきたこのコーナー。
ちなみに前回はこちら。
2、第13回国会 衆議院 文部委員会 第25号 昭和27年5月23日
文化財保護委員を5名から3名に削減することに対する意見が交わされています。
質問に立ったのはこの連載でも何度も登場している教員から叩き上げで町議県議を経て衆議院議員となった水谷昇。
過去から今日まで五人の委員によつて行政上の責任を負うて来られたのでありますが、その経過並びに、今回の行政整理によつて三人に減少してもさしつかえないのかどうかということ、これをひとつ十分御説明を願いたいのであります。
という問いに対して、まずは文化財保護委員会委員長(現在でいう文化庁長官か)の高橋誠一郎は
会議制といたしまして、十分な機能を発揮いたします上に、少からざる支障を来しはしないかと、ひそかに心痛いたしておる次第でございます。
と回答してしまいます。貴方がそれを言っては紛糾するでしょ、と思いながら事務方トップの文部事務官(文化財保護委員会事務局長)森田孝の弁を見ても
財界人が委員に選ばれていることに対するメリットの説明
文化財そのものが、見方によつては一つの財産でありまして、これを動かす場合におきまして、やはりそちらの方面の見方から見るという点が、非常に重要な問題になつて参ります。單に買取りというだけではなくて、展観なり、あるいは命令または勧告による出陳の場合の交渉というような場合においても、同様のような見方になつて参ります。また同時に、国費が不足しておりますので、あらゆる修理または保管というような点におきましては、七割ないし五割、あるいはものによつては三割くらいしか国の補助がないのでありまして、大部分は民間の金によつてこれを行つて行かなければならぬのであります。そういう場合におきまして、財界の方においても信用がある、また平たい言葉でいえば、顔が広いというような方々に加わつていただくことによりまして、国の費用の不足な点についての補填に必要な民間の負担金と申しますか、の点が、円滑に解決して行くことができるのでありまして、そういう意味におきまして、現在の委員の構成上、主として財界において御活動になつておる方がお入りになつておるということは、委員会の活動の非常に円滑化する原因となつておると考えておるのであります。
に終始するのみで、議事録を見ただけでは論点をずらしているようにしか感じられません。
文部官僚出身の甲木保議員も
行政整理や経済節約の目的をもつて必要であるというならば、三人の常勤制度を改めて、一人だけを常勤の勤務となし、他の四人を非常勤の実費弁償制度とすれば、どうかこうか追いつくのではないかと思うのですが
と問い、また高橋委員長が
報酬を御辞退しようではないかというような意見も折々出ておつた次第でございまして、いずれもみな文化財の保護に熱心な人々でございますので、俸給の有無にかかわらず、同じような努力をこの仕事のためにささげて行く人々であると考えております。
というので、じゃあ削減なんてしなくていいじゃないか!ともやもやしてしまいます。
3、古きよき時代?
いかがだったでしょうか。
国の機構改革の中にあって、文化財関連についても一律で人員削減を、というところが
今も昔も変わらないお役所感覚だな、という印象です。
それに対して国会答弁でその委員会のトップが削減に対して疑義を示されて同意してしまうってありますか?
この辺は逆にシステム化された現代では考えられないというか
今だったら文化庁長官は行政職の書いた原稿を読んで終わってしまう
この問題は委員会制から文化庁へと移行する中でまた議論されていくことだろうと思いますので、また稿を改めて触れていきたいと思います。
本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
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