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第193回 中世から伝わる文字のチカラ
1、東方浄土の王から下されるお札
牛王宝印(ごおうほういん)って知っていますか。
主に木版で刷られているお札(ふだ)の一種で
寺社ごとに書体や文面に特徴があります。
魔除けの護符として玄関に飾ったり、お守りとして持ち歩いたりもしたようです。
本来、牛王とは牛頭天王という神仏習合の神さまで、八坂神社に祀られています。
それを個人で収集し、図録にまとめられたのが一魁斎正敏さん(@ikkaisai)。
今から半年以上も前ですが、Twitterで見かけて、すぐに通販のお願いをしました。
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2、神の紙に書かれたことは守らねば**
私が牛王宝印を始めて目にしたのは15年も前の大学生の頃でした。
お世話になっている学芸員さんの旅行に付いて行って会津を訪れた時のことです。
そのメンバーは中世の研究者ばかりだったので、恵日寺や新宮城、新宮熊野神社の長床など中世が色濃く残っているところばかりでした。
疑問を持ったことをすぐ先輩方に尋ねることができるステキな環境で史跡巡りをする、というのは若者の特権ですよね。
宝物館に展示されていたのが牛王宝印です。
もちろん不勉強で知らなかった私に教えてくれたのは
中世の起請文、何か約束を記した文書の保証を神仏に委ねるという効果があった。
ということでした。
この図録を見ると、神宮熊野神社には文保二年(1318)と刻まれている版木残っている、ということですので、私が遠い昔にみたのがこれでしょうか。
ちょうど今から700年前に熊野神社で刷られた紙に中世の武士たちが盟約を記した文書を交わしていたことを想像すると、ワクワクしますよね。
3、好きが力に
この図録にはなんと北は青森県から南は大分県まで、213もの牛王宝印の図柄が掲載されています。
様々な文献からの捜索はもとより、直接寺社に問い合わせて、現在も頒布しているのかなどを調べ上げて記載しているのは脱帽の一言に尽きます。
牛王宝印には八咫烏や龍、宝珠や蓮華など様々な意匠が表現され、デザイン集としても眺めていて楽しい冊子となっています。
ここからの学びは、
好き、を極めれば求めている人に届く、ということ。
さて私は何を集めようか。
#牛王宝印 #神仏習合 #牛頭天王 #熊野神社 #恵日寺 #八咫鴉