第62回感情論と戦略的判断
1、導入
昨日のサッカーWカップ
日本vsポーランドの一戦。
日本が0ー1で負けているにも関わらず
裏でやっている予選同組の結果を見て、
このままの得点差で行けば予選通過できると判断。
攻めを諦めてパス回しだけに専念して
現状維持で時間を潰していました。
その試合内容をみて大いに論争が巻き起こりました。
大きくまとめると
結果を重視すれば妥当な戦略だとする派と
結果的に負けても良いから精一杯攻めを続けるべきだとする派
に別れるようです。
2、議論から想起されるもの
この議論を見ていて、図らずも同じ印象を持った知人が複数いたことに驚きました。
それは、1905年のこと。
日露戦争で賠償金をもらえなかったことに腹を立てた民衆が新聞社や大臣官邸、さらには警察署まで襲撃した事件です。
後世から見れば、当時の日本はとてもロシアと戦争を続けられる余力はなく、有利な条件で講和を結ぶのは外交的努力の成果です。
ですが、当時の民衆は戦時体制に伴う増税に苦しんでおり、不満のはけぐちを探していたのでしょう。
戦況をリアルに伝えると敵国にも苦境が伝わって講和が難しくなるという判断もあったかもしれません。
過激な意見として、一旦結んだ講和を破棄してでも戦争を継続すべきだというものもあったといいます。
戦略的勝利よりも感情を優先する雰囲気が蔓延していた、というところが今回のケースから想起されたのでしょう。
3、そしてまた戦前へ
さらにその後の歴史をみれば明らかのように戦略より感情を優先する雰囲気はより濃さを増していきます。
情報が民衆に隠される傾向に拍車がかかり、戦略的に引き際を見極める外交的判断ができないままずるずると破滅に向かっていき、最後は特攻戦術を採用するに至ったのです。
翻って現政権に批判的な方は、今また戦前がやってきたかのような言い方をしていたりしますが、上記のように感情を優先する雰囲気が蔓延しているとすると、あながち的外れな警鐘とも言えないのかも知れません。
4、現代の我々が取るべき道は
それでも、現代はあの時よりも情報を隠すことは難しくなっており、
事実、SNS上にはどんな意見でも表出されるので、みんなに情報リテラシーがあれば大きく道を誤ることはないのかも知れません。
それよりなによりW杯は戦争ではありません。
国を背負って、戦争の代替のようなイメージを付与されがちですが
あくまでもスポーツの祭典であり、突き詰めればエンターテインメントなのです。
感情的に勝利を追い求めて敗戦したとしても国が滅びることはありません。
健全に議論ができる社会になったことを喜びつつ、
監督や選手たちが戦略的な判断をしたおかげでもう少し続くことになったお祭りを楽しんでみるのが正しい姿勢だと私は思います。
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