第28回先進美術館がバズってる
1、導入
先進美術館が話題なっています。
記事を整理すると
①制度の目的はアート市場の活性化
②国が指定した美術館博物館には補助金を交付し学芸員を増強する。
③所蔵品を価値付けし、死蔵しているものについては一部売却を行うことでコレクターの購買意欲を促す。
ということらしいです。
これだけ読んでも頭に入ってこないので、Twitter上での様々な意見を見ながら思ったことを書き記しながら整理していきます。
2、みんなの意見
まず多かったのは我が国の美術品、文化資源が海外も含めて流出するのでは、という懸念。
売れるものはドンドン売却して、美術館には売れ残りのカスしか残らないのでは、という懸念。
国を挙げてアートによるマネーロンダリングをやろうというのか、という批判。
ざっと見渡しても賛成論者は見つけられませんでした。
一連の文化財の観光資源化と同じ方向性の施策であることは間違いなさそうです。
3、課題の整理
国立美術館や大手の私立美術館であれば、専門の学芸員が複数いて、能動的な価値判断をして、美術館としての方向性に従って新たな作品を購入するために一部収蔵品を売却するということもあり得るでしょう。
むしろこの施策もその程度しか想定していないのかもしれません。
ただ実際は経営が苦しく、新たな収蔵品の購入費用なんて捻出できない美術館がどれだけあることか。
県立や市立の美術館の場合で、改革派の首長が主導してこの施策をメスにして切り込んでこないとも限りません。
橋下徹氏が大阪府知事に府立博物館見直しに取り組んだ際のことが思い起こされます。
目先の利益を挙げられない美術館博物館は活用できていない資料の売却を迫られるかもしれません。
地方の郷土資料館なんかは金銭的な価値のある資料はそれほどないのかもしれませんが、今はなんでも売れる時代です。
また公会計の整備が求められており、自治体のストックとして美術館博物館資料も金銭的な価値判断をして財産として公開する時代になってきています。
4、どうすべきか
資本主義的な考え方から全く独立した存在として地方の美術館や博物館が存在することは現行では不可能であると思います。
かといって短期的な利益のみを見て100年の計を見失っては将来に禍根を残します。
事実うちの町の資料で展示に耐えないほど痛んでいるものがあり、これを修復する費用が捻出できない現状を見たとき、適切な価値判断をして一部資料を売却してそこに当てることも必要ではないかと思うときがあります。
他のところはそうではないと思いますが、ウチの場合はハコモノを建てた際にどのような方針で資料収集していったのか、全く記録もありませんし、現状をみても一貫性のある思想を見出すことはできません。
学芸員個人で残すものと売るものの基準について全て判断することはできませんし、その責任を負わせるのは厳しすぎます。
美術館博物館の当初の設置目的に立ち返り、現在の状況を分析してちゃんとした計画を定めることができるような専門委員会を立ち上げて議論することが必要でしょう。
おそらく文化庁も同様のモデルを作ってくるでしょう。
その際に気をつけるのは
文化財の保存に偏りすぎて現代のニーズにかけ離れてもいけないし、活用に偏りすぎてこれまでの文化の蓄積を損なってもいけない。
地域の学芸員こそバランスをとって議論をコントロールする立場になるべきだと思います。