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聖闘士星矢とわたし その5

その4のつづきです。
前回書いたとおり、星矢が終わってまもなく中学生になったツナ缶ちゃん、ここからしばらく格闘ゲームとかその他色んなものに浮気しまくり、車田漫画とは距離を置いた十代を過ごしました。
サイレントナイト翔もあかね色の風もエビルクラッシャー魔矢もビートエックスも、雑誌や単行本で見かければサラッと目を通してはいたのですが、より小難しいもの、エクストリームなものに惹かれがちな思春期の背伸びメンタルにとって、かつての星矢のように没頭できるコンテンツではなくなってしまっていたというのが正直なところです。なのでこのへんの作品をちゃんと通読したのは、どれも完結後しばらくしてからになります。
一方、古本屋で星矢以前の車田漫画史に触れ、親しんだのもこの頃でした。古風で泥臭いスポ根ボクシング漫画だったものが、次第にかつてなく大味な理不尽必殺パンチKO漫画へとエスカレートしていく『リンかけ』。学ランと木刀の人たちが忍者を名乗って撲殺しあう珍妙な世界を見せられていると思ったら、そこから更に明後日の方向にアクセル踏んで、敵も味方も何のために戦っているのか全く分からない聖剣戦争という神話的狂気の世界に突っ込んでいく『風小次』。『スケ番あらし』の麗ちゃんと綾小路さんの時点ですでに完成されている強烈なヒロイン像。そして忘れちゃいけない、自身の作風を徹底的に突き放し笑い飛ばす傑作ギャグ『実録!神輪会』…。車田正美は俺が生まれる前からとんでもねえ爆発力の作品を連発していて、なんなら星矢ってのは使い回しのネタをクレバーに再構成したセルフオマージュ的な色合いが非常に強い作品だったんだな、という、星矢リアタイ当時には得られなかった視点…と言えば聞こえはいいですが、「本当にスゴイのは皆が知ってる星矢なんかじゃないんだぜ、ライトニングプラズマとロイヤルデモンの初出知ってる?」という、要するにオタク少年の知識マウント的なツボを大いにくすぐられたわけであります。
今思えば、原作完結からの約十年間、これはツナ缶ちゃんの人生の中で一番星矢をナメていた時期と言ってよいかもしれません。まあでも、子供の時に出会った子供向けのモノから一度卒業してしまうというのは誰の人生にもあるイベントですし、そうやって離れていた時間から後々見えてくるものというのもあるわけですから、何事も無駄ではないし、間違いでもないのだ、と思います。

さて、そんな期間を経て、ツナ缶ちゃんも成人を迎えた西暦2000年。
『リングにかけろ2』がスーパージャンプでスタートしました。
これを機に2003年にはハーデス編OVAがリリース開始、2004年には天界編序奏公開&リンかけ1アニメ放送、2006年には冥王神話連載スタート…と、現在まで連なる流れが始まるわけですが、そんなターニングポイントとなったリンかけ2、これは個人的にたいへん思い入れの強い作品でありまして、どこがどう魅力的だったのか、またそのうち書いていきたいと思います。
とりあえず、つづく。

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