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おれの夢に登場するオモコロの永田さんがめちゃくちゃ格好いい。

 このところ、眠りが浅い。というか、7時に起きて準備すれば余裕で始業に間に合う程度の立地に住んでいるのに、3時とか5時とかに目が覚めてしまう。眠るのにも体力がいるから、歳を重ねると睡眠の質が悪くなると先人たちから聞いてはいたが、それを日に日に実感するエブリデイを過ごしている。誕生日が祝福でなくなっていくのは、とても悲しい。

 そんな睡眠状況でも、夢を見ることがある。人間、夢を見ていても起床時に覚えているか否かがあるため、数えきれないほど夢を見ているはずだが、中でも印象に残っている夢がある。まるでビデオテープを再生するように、まったく同じ舞台で同じセリフを吐き、同じところで急に終わりを迎える、同じ内容の夢を何度か見たことがある。今月すでに2回、先月は2日連続で見たこともあるくらい、強烈に覚えている、ある夢。その夢にいつも登場するのは、インターネットのアイドルとお呼びしても差し支えないであろう、オモコロの永田さんなのである。

 本名・永田 智、株式会社バーグハンバーグバーグの副社長を務めておられ、インターネットメディア「オモコロ」のライターとして活躍、及び同Youtubeチャンネルに多数出演……といった説明はおそらく不要であろう。慶應義塾大学出身という経歴を感じさせる、瞬発力とウィットを感じさせるツッコミはいつも冴え渡り、ボケに回れば大声で強すぎる思想を叫び、回を追うごとにクオリティが増していく女装でファンを増やし続ける、インターネットのオモロの伝道師の中でも上位に入るお方。

 例に漏れず、私もオモコロ購読者であり、Youtubeチャンネルも追っている。一応は同じ会社に勤める同僚、あるいは先輩後輩の関係でありながら、いつも仲良く様々な企画に体当たりしたり、阿吽の呼吸を感じさせるやり取りを見せてくれたりと、同期も部下もいないまま最年少でい続ける我が身からすれば、オモコロメンバーのわちゃわちゃ感は羨望の対象であり続けた。常にクリエイティビティを求められる業種に私は耐えられないだろうけれど、株式会社バーグハンバーグバーグの社風や社員同士の関係性は、(外野からの一意見として)楽しそうだな、と思ってしまうのだ。

 で、そうした受動喫煙が過ぎたのか、ついに私は脳内で、夢の中でイマジナリー永田智を顕現させるに至ったらしい。実際にお会いしたことなど勿論なくて、こちらが一方的にインターネットに漂う情報だけを統合して作り上げた「永田像」が脳内を占拠しているに過ぎないのだけれど、妙に現実味のある内容で、私はこの夢とイマジナリー永田さんがお気に入りなのだ。

 では、その夢はどんな内容なのか。過去のツイートをそのまま引用してみる。

昨日みた夢、ふらりと立ち寄った居酒屋になぜかオモコロの永田さんがいて、すでにベロベロに酔った状態で「地獄に堕ちろがコンプラ的に駄目っぽくて……」と落ち込んでいて、大変ですねーって話を聴いてたら、いつの間にかぼくの会計も払ってくれてて「地獄に堕ちろ!」って去っていった。

@tunacan_nZk

 過去ツイを読み返して、つい笑ってしまった。私は永田さんに何を幻視しているのだろうか。

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 もう少しディテールを詰めていくと、舞台は我が地元に実在する、横に長いカウンター席があるタイプの居酒屋だ(私が九州在住なので、永田さんがここにいる時点でおかしい)。いつもはにぎわっているはずの居酒屋だが、その夢の中でカウンターに腰かけているのはすでに日本酒を傾けている永田さんただ一人で、私は何も言わずそのお隣に座り、焼酎を注文する。

 無言で隣に座りはするが、この夢における私と永田さんは旧知の仲なのか、それとも初対面なのか、全くわからない。私の第一声は「お隣いいですか?」でも「もしかして永田さんですか?」でもなく、神妙な面持ちで「……何か悩み事ですか?」であり、永田さんは「うん」と返すのである。なぜ「うん」なのか、なぜ年下の自分が悟った風なのか、もうこの時点で無茶苦茶だ。

 そこから続いて、永田さんがぽつりぽつりと語り始める。「動画でよく『地獄に堕ちろ!』って言うけれど、あれがコンプラ的にダメっぽくて、Youtubeからも警告があって、下手したらチャンネル停止の話もあって、社員からも止めた方がいいですよ、って言われてさ……」と言い、手元のおちょこを口に運ぶ永田さん。いつも愉快なインターネットのお兄さんも、悩み事をたくさん抱えているんだな、という感慨から、私は一言「大変ですね」と言い、自分も焼酎を一口。居酒屋にはムーディなジャズが流れ、周囲の喧騒も耳に入らなくなる。

 いつも傍若無人に見える振る舞いをする永田さんとて、会社の重役であり、顔でもある。会社と社員を守るために、折れなければならない部分もあるだろう。そういったままならなさを飲み干すように、静かに日本酒を嗜む永田さん。その隣で何も発さず、水割りを作り続け自分で飲む私。夢の中ではいたってシリアスなのだが、目が覚めて夢を思い起こし、笑ってしまうのはこのシーンだ。いったい俺は何様なんだ。永田さんの苦労の何がわかるというのか。したり顔の自分がオモロすぎる。

 そうして静かな時間が過ぎ去り、永田さんがトイレに立って、戻ってから着座せず「先に行きますわ」と言い残して、ゆっくり出口へと歩を進めていく。じゃあそろそろ自分も帰るか、とお会計に向かうと、店員さん(その居酒屋で働くリアル店員ではない架空の人物)から「先程のお客様からお支払いいただいておりますよ」と告げられるのだ。

 私はもしや!と思い出口の方を見ると、視線の先には永田さんの後ろ姿が(先に出たはずなのになぜか出口にいる)。ご馳走になったお礼を言うため呼び止めようと、なが、ぐらいのタイミングでやや食い気味に振り返りながら「地獄に堕ちろ!!!!」と一閃。私はその場で一歩も動き出すことが出来ず、決め台詞を残してまたどこかへと歩き出す永田さんの背中を見送りながら、「かっこいい人だなぁ」という感慨にその身を浸す。というところで、夢が終わるのだ。

 AIにドッキリ企画を考えさせたら大変なことになりました

 こう、改めて文章に起こしてみると、なんだかとても怖くなってきた。会ったこともない有名人に、いったい何を投影しているのだろうか。自分の心理を知るのが怖くて、夢診断的なものを一切見てはいないが、たぶんまぁ健康的なそれではないだろう。

 というわけで、私の夢の中に登場する永田さんは、誰にも打ち明けられない悩みに囚われ、それでも自分らしさを忘れず、人生の先輩として格好いい背中を見せてくれる、ダンディーな人だった。ママ、永田ママと持て囃されているが、私の夢の中ではどちらかと言うと『シティーハンター』の登場人物の風格を漂わせている。

 どうしてそんなイマジナリーが形成されたのかは不明だが、この夢の内容を知人に話したところ「リアルの先輩と上手くいってないんじゃない?」との返しが。奇しくも繁忙期が目前に迫る中、忙しさのあまりコミュニケーションが社内で上手く取れなくなるであろうことは容易に想像がつく。

 夢に永田さんが登場する回数が増え始めたら、要注意。なのかもしれない。

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