やっぱり『うたごえはミルフィーユ』が面白かったのでインターネットやってるオタクは全員観てほしい。
うたミルが面白すぎて、クソデカ主語で読者を吊り上げようとした愚行をお許しいただきたい。……いや、面白いんですよ『うたミル』が!!まだギリギリで古参を名乗れるタイミングなので、観てくれ!!
うたミル is 何?
じゃあそもそも『うたミル』って何なのというと、プレスの内容をそのまま引用すれば“「アカペラ」「女子高生」「コンプレックス」をテーマにした、キャラクター×若手女性声優の音楽プロジェクト”のことで、アカペラ未経験のキャストの皆さんの成長を見守りつつ、時折アカペラで過去の名曲をカバーしたMVが公開されたり、ボイスドラマが展開されたりしている、発表から一年にも満たないまだまだ新しいコンテンツのこと。
アカペラとしては(22年9月現在)まだ『ガーネット』『夢見る15歳』の二曲が公開されているのみで、おそらく裏では次の曲に向けて猛特訓をされているだろう……というのを楽しみにしつつ、今回取り上げたいのはオーディオドラマについて。これはプロジェクトにおける「物語」を表現するものとして、不定期更新ではあるもののアカペラ部に集うことになった6人の少女たちのストーリーが展開されるコンテンツのこと。画面はノベルゲームめいた立ち絵とセリフウィンドウで、画面を観ずともドラマCDの要領で「ながら聴き」できるのも嬉しいところですが、1話を観た(聴いた)途端に姿勢を正すことになると思います。
今回はそのオーディオドラマに焦点を当てたレコメンドです。22年9月現在、8話までが公開され、単体としては8~15分程度なので2時間あれば追いつけます。ロードオブザリングとかイカのゲームに疲れたら「苦手な物:スクールカースト上位の人」が主人公の青春群像劇を観ろ!!!!
うたミルのここがスゴイ①
更新頻度が傍若無人
さてこのオーディオドラマ、何が面白いって、初期から追っていたファンでも常にいつ更新されるかわからないという緊張感が漂っている、というところにあります。
プロジェクトが展開された初月は1話、続けて2話が公開されたことで「月2配信かな?」と思わせるも、次月からは月1での更新だったので「あれは初月だけのルーティンだったのだろう」と納得させたうたミル陣営。かと思えば8月には月内3話更新というハチャメチャなスケジュールで最新話が送り込まれ、そのペースをして「Lなら瞬時に中の人が学生だと看破するレベル」と話題になりました(私の中で)。
この「出来上がったら出す」なのか計画的なワークスケジュールがあるのかさえ定かではない更新頻度もスリリングなのですが、告知はいつも更新の前日という生き急ぎっぷりで、そのツイートの時間すら一定ではないというフリーダムな姿勢がいつも楽しませてくれます。「明日の20時にやるよ」というツイートを見逃せば最後、いつの間にか最新話が転がっている事態になりかねないので、告知ツイートをファンの間で共有し合う、というヌクモリティ溢れるファンダムが形成されているのも、うたミルの魅力なのです。
うたミルのここがスゴイ②
2話でタイトル回収して3話で撤回するスピード感
さて、いつ更新されるか全くわからないこのボイスドラマ、内容も実はかなりのスピード展開で、どれくらい早いかというとまだメインキャラクターが揃っていない2話のサブタイトルが『うたごえはミルフィーユ』で、次回3話のタイトルが『うたごえがミルフィーユじゃない!』というレベル。キャラクターもそうなんですが、作り手も情緒不安定なんですよね。
ちょっとフライング気味なサブタイトルとは裏腹に、実はじっくり丁寧コトコトとキャラクターの心情描写や、アカペラに触れていく過程を描いているのもまた事実。声だけで音楽を奏でるというアカペラにおいて、たいせつなのは協調であり、ハーモニー。なればこそ、彼女たちが真にお互いを知り、声と声がミルフィーユのように重なって一つの曲になる、それに至るまでの過程を慎重に描いているのも、うたミルの特徴なのです。……なのかな?わかんねぇ。何せまだメインキャラクター6名が揃ってないしストーリー上まだ一曲も披露してない序盤の序盤だからね!!!!!!!!!!!!
うたミルのここがスゴイ③
個性が豊かという言葉では収まらないJKたち
これ、まだ1話だけが投稿されていた時期に書いたものなんですけど、この頃はまだ【小牧嬉歌】というおもしれー女に着目していたんですよね。
ところが、徐々に話数が増えていくにつれ、様子がおかしいのは小牧嬉歌だけではなかったのです。本作の「少年誌掲載のギャグ漫画ほどは行き過ぎていない程度に地に足の着いた、しかしどこか挙動がおかしい」人間像って、何日くらい徹夜したら思いつくんでしょうか。
ネタバレになるので詳細は伏せますが、「幼馴染にただならぬ感情を抱いているらしい女子高の王子様ポジの女」「学校にフリーwi-fiをばら撒く妖怪」「チャンネル登録者数41人のYoutuber」がメインキャラクターの青春群像劇、たぶん他では観られないのではないでしょうか。このワードにピンときたら、うたミルを観てください。
うたミルのここがスゴイ④
誰かの悩みにちゃんと向き合っている
とまぁここまでうたミルの“尖り”を恣意的に抜き出してフックを増やそうという下心満載の文章をお読みいただいたわけですが、彼女たちは(そしてそれを演じるキャストの皆さんは)歌うこと、そして青春を謳歌することに、いたって真剣なのです。
ところが、青春とは一人で謳歌するものではない、というのが通例でしょう。そして、現状の最新話である8話は、最後のメンバーになるであろう熊井弥子との出会い、彼女自身の悩みが主軸となります。持前の低い声で過去にからかわれた経験があり、他者と付き合うことを避けてきた熊井。声という生まれ持った素養によって好きな歌を歌うことも出来ず、自分を嫌いになる毎日を過ごしてきた熊井は、その個性を嬉歌に褒められて、こんな言葉を返します。
悩みというものは、その人だけのものである。であるからこそ、わかったような口は利けないものなのです。そしてそのことをこれまでの人生で学びながらも、自らの言葉の過ちに一人悩む嬉歌は、時に先輩を頼りながらも一つの答えを導き出します。
人と人は完全にわかりあえるものではない。だからこそ、真なる気持ちを言葉で伝えよう。彼女たちは今、それでもわかりあおうとしている最中なのです。まずは友達から、その言葉で、熊井弥子の学園生活にも少し明かりが差すのか否か……は未だ公開されていない9話を待つしかありません。今はまだ彼女たちがミルフィーユになるまでの、生地作りの段階。折り重なった「声」という個性を重ね合わせて、いつかきっと一つの音楽になる。その過程をリアルタイムで追うことのできる、貴重な時間が「今」なのです。
だからこそ、『うたごえはミルフィーユ』を知って、聴いてみてほしいのです。粗削りでバラバラだったものが一つにまとまるとき、きっと素晴らしい何かに出会えるかもしれない。その予感を共有できるのなら、私は彼女たちの青春の輝きを一人でも多くの人に触れてほしいのです。願わくば、彼女たちが「アカペラをやってきて良かった」と心から思える、その瞬間まで。
これからまだまだ未知数の可能性を秘めた、生まれたばかりのコンテンツ、『うたごえはミルフィーユ』をよろしくお願いします。まずは1話とキャラ紹介ドラマだけでもいいから聴いてくれ。