青春の暗黒面に触れるかもしれない『うたごえはミルフィーユ』を、今のうちに知っておいて欲しい。
わたしのtwitterをフォローしてくださっている方は、昨年から今までずっと『カリギュラ2』というゲームに狂い続けているのをご存じかと思うんですけど。
それに付随して、いまこのnoteに辿り着いた方は、今日はこの名前を覚えて帰ってね、って人がいます。「山中拓也」さんです。ミュージシャンではありません。辞書登録してくださいね。
このお方、『カリギュラ2』でいうと企画/原作/プロデューサー/ディレクター/シナリオを手掛けられており、要は生みの親に最も近しい人物です。一作目はまだ原案とシナリオの一部をご担当なさっているのですが、『2』は全面山中味で、それはもうスゴイものが読めてしまいます。買ってね。
『カリギュラ2』を経ての、私なりの山中作品への印象を話すと、プレイヤー(読者)の弱みや後ろめたさに「寄り添ってくれる」ような物語を描いてくれる人だな、と思っていて。
例えば『カリギュラ』シリーズは、現実での絶望や後悔を抱え、理想化された仮想現実に耽溺する人々が描かれます。もちろんそれは褒められたことではないかもしれませんし、自分自身の心と向き合って現実に帰ろう!というのが圧倒的に“正しい”選択にはなるでしょう。ところが、本作では“そうではない”視線が必ず挿入されています。現実に帰ることだけが正義なのか、現実で報われない心や身体の問題はどうするべきか、何かに救いを求めることや逃避は悪なのか。これらの問題を『カリギュラ』シリーズでは「楽士」と呼ばれる仮想現実を維持したい勢力のキャラクターの心情を通して描き出します。主人公が属する、現実に帰ろうとする「帰宅部」の面々と同じ、あるいはそれ以上のボリュームと熱量で。
また、氏はボカロ文化にも造詣が深く、ゲームコンテンツ以外では視聴者が監獄の看守となってキャラクターの有罪無罪を投票する参加型×音楽コンテンツ『MILGRAM(ミルグラム)』が絶賛進行中。
こちらは不勉強ながら未見ですが、ガンダムのアニメの脚本も手掛けていらっしゃるようです。多彩~~~。
簡単ではありましたが、山中氏の来歴を振り返ってきて、そろそろお名前も脳にインプットされたかと思います。大衆向けの作品がどうしても取りこぼしてしまう「少数派」の生きづらさや葛藤に触れ、厳しくも優しい物語を書く名手だと、私はそう思っています。『カリギュラ2』に救われたファンは、実はたくさんいるのです。
そんな山中氏が先日、新たな担当作品を発表しました。さぁ、ここからが本題です。その名も『うたごえはミルフィーユ』、通称『うたミル』です。
充分に訓練された皆様なら、これらのツイートから“何か”を感じられたと思います。柔らかいタッチで描かれた美少女たちのイラストに添えられた、すっげぇ不穏なキャッチコピー。この女の子たちのきららジャンプが見られるか否か、お金賭けあったら、阿鼻叫喚になりそう。
プロジェクトの概要は以上の通り。アカペラ未経験の女性声優6名が集い、それぞれのキャラクターを演じるボイスドラマで物語を展開させ、同時にミュージックビデオでその歌声を披露する。5月15日現在、Youtubeの公式アカウントからはそれぞれ一本ずつのボイスドラマとミュージックビデオ、キャラクター紹介の短い動画が6名分アップされています。
で、なんでnote書いてまで今推すかというと、始まったばかりのコンテンツだから、追いやすいんです。すっげぇ話題の漫画が気になるけど巻数多くて敬遠しちゃったこと、ありますよね?うたミルは生まれたてのコンテンツだからそれがないんです。やった~~~~~~。
なので、この動画二本観るだけで、うたミルの最前線に追いつけます。もう皆さん聴きました?ボイスドラマ、ヤバかったですよね????最初に歌う楽曲が奥華子なの「こちら側」すぎてビビりませんでした???
この動画二本観ていただければぼくの使命は終わりなので退散してもいいのですが……もっと知りたいよ、って方のためにもう少し続きます。折角なんでキャラクター紹介動画を観て欲しいんです。『うたミル』が他のコンテンツよりも異彩を放っているのは、実はキャラクター紹介なんですよ。
例えばカバー画像にも採用した小牧嬉歌サンですが、よく見てください。好きなものはまだしも「嫌いなもの」が初期から明言されてるんです。この圧倒的な“陰”の感じ、スゴイ。「スクールカースト」が何であるか説明を必要としない人種に向けたコンテンツであることをひしひしと感じます。
この通り、開始時点で開示されているキャクターの情報が、ちょっと仄暗いんですよ。キャラクタービジュアルとのギャップもさることながら、今後起こるであろういざこざや抱えている悩みが予想できるようになっていて、この時点で一筋縄でいかないコンテンツであることが名言されている。
さらに、もっと注意力のある皆様なら、誕生日の欄の特異性にもお気づきかもしれません。そうです、誕生花が標準で開示されています。
誕生花といえば山中コンテンツなら風物詩みたいなところがありまして、『カリギュラ2』ならこのように、各キャラの誕生日の0時のタイミングで創造神からの告知が下り、オタクは解釈の業火に焼かれる羽目になります。このツイートのせいでマジの寝不足をかましました。CV:加藤和樹の花言葉『絶望』イケ顔白衣自罰属性男性??!??!?????
それで言うとこのレイレイさん、愛莉さんと同じく初期からアカペラ部に属する副部長で、仲もよろしい様子がボイスドラマやキャラ紹介動画でも描かれているんですけど、花言葉に着目すると「献身」なんですよ。どうですか?関係性の矢印に何かを感じませんでした??「やったことないこと」が好きだと言いますが、本当は「愛莉が始めた自分の知らないこと」が大好きだったりしませんか??へぇ~~~~~~~~~。
というわけで、すでに解釈の素材がかなりの量を公式から開示されているのが『うたミル』の特徴でして、二次創作と妄想の金脈がハチャメチャに眠っております。好き嫌いも誕生花も曝け出した状態の、決して「クラスの人気者」にはなれないかもしれない彼女たちの、青春群像劇。物語も楽曲もこれからどんどん展開されていって、どんな景色を見せてくれるのか、ワクワクが止まりません。ただこれだけは言えますが、学生という人生の内の限られた時間の中でいくつも感じた成長過程ゆえの軋みや葛藤は、普遍的であるからこそどの年齢層や性別にも刺さって、『うたミル』からしか得られない何かが浮かび上がってくるんじゃないかと、期待しております。
もう一度繰り返しますが、追うなら“今”が最適解です。激ヤバ感情コンテンツの古参を名乗れる、またとないチャンス。彼女たちアカペラ部の青春を見守り、一緒に傷ついたり感動したりしませんか??
私からのプレゼンは以上になります。「山中拓也」「うたミル」この二つだけでも、覚えて帰ってくださいね。