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どっちだったんだろうな。

 2025年が始まって、もう三週間が経とうとしている。嘘みたいな話だが、鏡餅や門松が所狭しと並んでいたはずの街が、示し合わせたようにどこもそれらを撤去して、今年の恵方巻の方角だとかバレンタインの準備はお済みですかと消費を促ゼイリブしてくるのである。何十回と繰り返してきたのに、未だにその速度に身体が慣れてくれない。

 そういえば、今年観た初夢もヘンだった。初夢の定義もうろ覚えなのだが、どうも「新しい年を迎え、最初に寝た日の夜に見る夢のこと」らしい。この場合、1月1日の0時、年越しのタイミングまで起きていた人は、その後に眠った際に見る夢がそれにあたるのだろうか。それとも、1月1日の夜に床に就き、1月2日に目覚めるまでの間に見た夢がそれなのだろうか。

 まぁそんなことはどうでもよくて、私の中での「1月1日の夜に床に就き、1月2日に目覚めるまでの間に見た夢」、すなわち初夢のことがどうも腑に落ちていないので、ここで供養させてほしい。夢占いとか詳しい人がおられたら、こっそり解釈を与えてほしい。Amazonギフトカード(Eメールタイプ)を贈る準備は出来ている。


 舞台は体育館のようなところ。バスケットゴールがあったから、間違いないと思う。

 だだっ広い体育館の真ん中に私が立っていて、真向いにはコンビニのレジが置いてある。私とレジの間は5mくらいの距離があるのだが、なぜか(夢の中の)私は立ったまま身動きが取れず、夢なので体育館にコンビニのレジがあることに何にも違和感を抱いていない。

 気が付くと、そのレジを挟んで二人の男性が立っている。両人ともスーツを着ていて、どちらがコンビニの店員でどちらが客なのか判別はつかない。男性は二人とも中年で、双方とも毛髪が寂しかったことだけを覚えている。

 すると、レジ側(本来であれば店員側がレジを操作する立ち位置の意)にいた男性が、目の前の中年男性を激しく叱り始める。「だからお前はダメなんだ!」「そんなんだから周りと上手くいかないんだ!」といった風に。レジを挟んでいるため身体が触れ合うことはないものの、かなり激しい剣幕で。叱られている男性は、何も言い返さず顔を伏せている。

 それを見ている私は、おそらく二人の視界には入っていない。だから、彼らのやり取りを俯瞰してみているような気分になる。すると、いつの間にか友人の女の子(SNSを介して知り合い、一度だけ対面でお会いした)が隣に立っていて、私に一言。「あれは罪悪の擬人化やねんな」と。

 なるほど、と私。そうか擬人化かぁ。受け取った言葉を頭の中で反芻し、咀嚼する。そして、思ったままを口にした。「どっちが?

 叱る男と叱られる男。いったいどっちが“罪悪”の擬人化なのか。叱られるようなことをしでかした方なのか、相手を否定する強い言葉を用いて他者を否定する方か。仮に一方が罪悪の擬人化なら、そうでない方は一体何のメタファーなのか。

 私の問いに、隣の女の子は口を閉じ、静かに頷く。我々は目を合わせることもせず、ただただ目の前の光景を見ている。その間も、聞くに堪えない罵倒が続き、受ける側は一切の反抗を見せない。2秒、3秒、4秒……。目の前の騒がしさとは裏腹に、私と彼女はただひたすらに沈黙している。体感で15秒ほどが経った頃、気が付けば隣に立っていた彼女は跡形もなく消え去っていた。

 「結局どっち!?」私の渾身のツッコミは夢の中と現実の一体どちらで炸裂したのかはもうわからないが、なんにせよ「どっちが罪悪やねん問題」は答えが得られないまま夢から覚めてしまい、あれから再びその続きを見ることは叶わずにいる。


 夢といえば、一昨年にオモコロの永田さんを“顕”させたことがあり、そのことをnoteに投稿したところ、その年に一番読まれた記事になった。その代償として、かれこれ何度も見ていたその夢を、一切見ることがなくなった。こうしてインターネットの海に投下すると、私の脳は夢のキャッシュを捨ててしまうらしい。

 さすれば、「どっちが罪悪やねん問題」はインターネットに放たれた途端、もう二度と私の眠りの中で再生されることは無くなってしまうわけである。年明け早々、一つの疑問を迷宮入りさせてしまうのは不本意だが、格好よく酒を奢ってくれる永田さんとは違い、答えの出ないモヤる夢はこうして投棄するに限る。これからは、この文章を読んだ諸兄が難題を引継ぎ、各々の答えを導き出してほしい。罪悪とは何かを、自分の心と向き合って考えていただきたい。

 あと、この夢に登場した女の子がラジオをやっているので、そちらも聴いてみてほしい。お便りも募集しているらしいので、じゃんじゃん送ってほしい。以上、宣伝でした。

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