【R-18】H・R・ギーガーに目覚めさせられた話。【エイリアン】
先日、作業BGM代わりに聴いていたラジオで、「性の目覚めを語ろう」みたいな趣旨の投稿コーナーがあった。要はこれ、リスナー各自の「異性を意識した瞬間」の宝庫であり、“家庭教師としてやってきた大学生のお姉さんにドキドキした”みたいな爽やかな話から“姉の部屋を訪れたら彼氏との情事の真っ最中で、そこで初めて男根を目撃した”という事故の報告などバラエティ豊かな投稿が集まっており、大変面白い企画だった。もう作業そっちのけで爆笑しながら聴いていたし、おすすめから流れてきたこともあってタイトルが思い出せず、もう一度聴くことが出来ないのが惜しまれる。
さて、自分にとっての「性の目覚め」とはなんだろうと、脳みそをかき分けて探ってみる。思い返すに複数のターニングポイントがあって、幼さゆえの過ちを含むためここでは書けないことだらけなのだけれど、誰一人傷つけないエピソードがあったのでこの場を借りて供養させていただきたい。今更だけど、未成年は読んじゃダメです。コロコロとか読め。ドッジ弾子はいいぞ。
小学生も高学年になったころ、映画の面白さにハマっていた幼い私は、『エイリアン』シリーズに首ったけだった。SFホラーの金字塔にして、今なお愛される世界一有名な映画キャラクターであるところのゼノモーフのデザインに、幼心にクるものがあったらしい。まだBlu-rayはおろか配信やサブスクなんて考えられなかった時代なので、誕生日にシリーズのDVDをおねだりした思い出がある。「アルティメット・エディション」とかいう特典DISC付の豪華版、ケースのデザインが最高なんですよね。
やがて少年は『エイリアンVSプレデター』に行きつき、プレデターっていうキャラクターもいるんだ!と興奮。怪獣映画で大きくなったキッズにとって、VS〇〇というタイトルはそれだけで血沸き肉躍るものがある。そんな夢のバトルを目にするためにプレデター2作も鑑賞して、ジョン・マクティアナン監督手掛ける一作目(とくに吹き替え版)の虜になりつつ、ついに夢の対決を目撃する権利を手に入れたのだ。当時中古ショップで手に入れた、『エイリアンVSプレデター』2枚組特別版のDVD。シルバーの背景にエイリアンとプレデターの両雄が描かれた超絶格好いいジャケットと、特典映像モリモリDISCが嬉しい。
そんな夢の対決の結末は皆さんご存じの通りだろうし、当時少年だった私もエイリアンがプレデターの成人の儀の獲物として飼われているという二次創作的アイデアに惚れ惚れしたり、クライマックスのマザーの怪獣映画すぎる大活躍に満足したらしく、好きなシーンを何度も繰り返し観たことを覚えている。プレデターは人類と意思疎通が可能ということもあり、エイリアンがゴジラでプレデターがガメラ、みたいな置き換えで観ると実に楽しめたのだ。
さて本題。こちらのDVDのトールケースは二枚のDISCを収納するタイプで、ケース自体はクリアなのでジャケットの内側を見ることができるのだけれど、そこに写っていたのがヤバかった。
おわかりになられますでしょうか。フェイスハガーのフェイスに接する面です。よく見えない方は各自検索していただきたいのですけれど、デザインがモロに“アレ”なんですよね。
もちろん、今となってはこのデザインのモチーフも、H・R・ギーガーの作風も理解しているので、こうなるのはわかる。とはいえまだ毛も生えていない小学生にこれは早すぎたし、当然その形の意図するところはわからない。ただ不思議なことに、漠然と「なにか見てはいけないものを見ている」という感覚があって、ずっと凝視しているとなんだかムズムズしてはいたんですよね。この“ムズムズ”の意味を知るには中学生になるのを待つしかないのだが、おそらくこれが人生初の“女性のからだ”を観た経験に数えられるくらいには、カルチャーショックだったらしい。後に引っ越しを機に断捨離をしていたらこのDVDを見つけて、謎の後ろめたさを感じて手放してしまったのも、今となっては微笑ましい。
ゼノモーフの頭部は男性器を彷彿とさせたり、そんな存在が女性を追いかけまわしたりと、『エイリアン』には性的なモチーフや構図がいくつも込められている。ギーガー御大の手掛けるデザインはその要素を多分に含んでいるが、精通も果たしていない子どもにもそれは強く感じるものだったらしく、人間というのはいつだって性に翻弄される生き物なんだな、という教訓を得ることができた。この話は肉親にもしていないし、世に出したのは初めてなので反応が怖いけれど、「実はおれもアレ見てヤバいと思った」という紳士淑女の方は、こっそり名乗り出てくれると嬉しい。
というわけで、『エイリアン』を観ると恐怖だけでなく、別の意味でもドキドキしてしまう、そんな「性の目覚め」のお話でした。