国頭村による「二次交通実証事業」レポート ―北板良敷―
はじめに:やんばる観光の起爆剤になるか?!無料バスが運行
昨年の12月から今月にかけて、国頭村において観光客向けの二次交通(バス)の実証実験が行われている。内容としては、道の駅ゆいゆい国頭を拠点として、国頭村内の観光施設などをバスで結ぶというもの。以下に実証実験の概要を記す。
実証実験の概要
運行車両について
先述した通り、通常はマイクロバスでの運行となる。(上記画像の左側の車両)。日野・リエッセⅡの沖縄200あ199号車と、沖縄200か200号車の2台が充当される。なお、この2台は新報トラスト㈱ではなく、沖縄リムジンバス㈱が所有する車両だ。筆者の推測でしかないが、沖縄リムジンバスが新報トラストから運行の受託をしている可能性が考えられる。
また、週に一度だけEVバス(上記画像の右側の車両)が充当される。ホームページには運行日が記されていないが、私が確認した限りでは、毎週♡曜日の♡ルート便に充当されている。私宛てに投げ銭を頂ける方にはめちゃくちゃ教えて差し上げますので、コメント欄にてご連絡ください♡
運行経路について
ホームページには上記画像のような運行経路が記されている。が、経路が少々イメージし辛いのではないだろうか。というわけで、停車バス停が記載されている時刻表も参照してみよう。
・・・・・・?
まず、各施設の場所を知らない方は、無論「?」という反応だろう。しかし、各施設の位置関係を知っている方についても、「?!」という反応をするに違いない。遠回りなルートになる場所、バスで行くには険しい場所なのでは……などなど、気になる点が非常に多い。
というわけで、私がGoogleマイマップを用いて、独自に経路表を作成した。
ここから先はネタバレ要素を含みます!「乗ってからのお楽しみにしたい!」という方は、次の項まで飛ばしてください。
https://www.google.com/maps/d/u/1/edit?mid=1mUhHow4ofCph0B_UYajczzkUHsgOzaA&usp=sharing
本地図では西ルートを記載したが、東ルートもバス停の順序以外は同様の経路で運行される。Googleマイマップの都合上、経路が一度にA~Jの10地点しか登録できないため、アルファベットの重複があり見づらくなっていることはご了承願いたい。バス停は凡例にリスト化しているので、そちらもご参照いただきたい。
これを見ると、かなり面白い経路で運行していることが分かる。辺土名付近では行ったり来たりが多いし、宜名真共同店の裏ややんばる学びの森付近など、狭く険しい箇所も少なくない。実際乗ってみると、こんなところを走るのかと驚かされる場面が多々ある。そのため、片道3時間半となかなかのロングランでありながらも、乗っていて飽きることはない。
※大石林山バス停について
通常はチケット売り場前に設置されたバス停まで乗り入れるが、東回りの2便目に限り駐車場の手前で転回する。これは、大石林山の営業時間が18時までとなっており、バスが到着する18:05には駐車場が閉鎖されるためである。
バス乗車に際しての注意点
・この二次交通実証実験は、一周の所要時間が3時間半と、非常に長大な路線となっている。そのため飲み物などの必要なものは、乗車前に購入するのが望ましい。
・東西ルートでそれぞれ休憩地点になる「安田公民館」「奥ヤンバルの里」の周辺にはいずれも、飲食店などは見当たらない。(売店や自販機はある)(奥ヤンバル食堂は両便の到着時間共に営業時間外)そのため食事をしたい方は、道の駅ゆいゆい国頭で済ませるか、休憩時間に食べられるよう事前に購入することが望ましい。
※バスの車内に持ち込むことを鑑みて、ジャンクフード等においの強い食品を購入することは避けたい。
・バス乗車の際に、簡単なアンケートへの協力をお願いされる。快く回答しよう。(すぐ終わるヨ!)
乗車時の見どころ
※この項もネタバレを含みますので、乗ってからのお楽しみにしたい方は次の項まで飛ばしてください。
①西海岸のオーシャンビュー
このバスは辺土名~宜名真まで国道58号線を走行するが、その区間の殆どが海に面しているため、車窓からは美しい海の風景を眺めることができる。また、東ルートの2便目はちょうど日没の時間帯に重なるため、贅沢にサンセットビューを楽しむことができる。
②やんばるの大自然
先述した海沿いの区間を除けば、このバスはほぼほぼ深い山の区間を走る。海の景色に比べると地味かもしれないが、外に目をやれば、そこにはやんばるの大自然が広がっている。都会の喧騒から離れ、バスに揺られながら静かなひと時を過ごしてみてはいかがだろうか。運が良ければ、ヤンバルクイナやケナガネズミなどといった、希少な生き物を見ることができるかも!(ちなみに筆者は乗車中にイノシシとハブを見ました。どうして。)
③東ルート限定!協同店の絶品コーヒー
東ルートで休憩となる安田公民館。このすぐ隣に「安田協同店」がある。安田協同店は、食品や日用品を扱うお店で、安田集落の生活を支える存在となっている。中でもこの協同店で人気を集めているのが、コーヒーだ。※一杯100円とお手頃な価格で、アイスとホットが選べる。そしてこのコーヒーのなんと美味しいこと!、芳醇なコクと深み、香ばしい豆の香り、苦味と酸味の絶妙なハーモニーが組み合わさり、至高の一杯を作り上げている。何よりも、大自然に囲まれながらコーヒーを飲むひとときは、何物にも代えがたい。
安田公民館で長時間停車のある東ルートでしか味わえない逸品。休憩の合間にいかがだろうか。
(安田協同店は火曜日定休です。)
(※追記:2024年2月より、一杯200円に価格が変更されたそうです。)
④断崖に囲まれた「戻る道」
茅打バンタ~宜名真共同店の間で、両側を断崖絶壁に囲まれた箇所を通る。この道は「戻る道」と呼ばれている。
この戻る道は、かつては人ひとりがようやく進めるほどの幅しかなかったという。そのため向こうから人が来るとどちらかが引き返すしかなく、これが「戻る」道の由来になったとされている。
今はバスが通行できるほどの幅に広がったが、(それでもかなり狭い)断崖絶壁の景色は当時と変わらないだろう。この道を通るときは、かつてここを通った人々に思いを馳せてみてはいかがだろうか。
⑤えっここ本当に行くんですか?!宜名真共同店裏の坂道
戻る道からすぐの場所。宜名真共同店の裏手に、急な坂道がある。かなりの傾斜がついており、人によっては乗用車でも通るのを躊躇(ためら)うかもしれない。
今回の実証実験では、なんとこの道が経路に設定されている。信じられないかもしれないが、本当に通る。私も初乗車の時に、(本当に行くのか…?!)と唖然としてしまった。
この実証実験で一、二を争う激熱スポットなので、乗車時には急坂に挑むバスの雄姿を見届けてあげたい。
今後の展望と課題
今回の実証実験は筆者も数回乗車したが、大石林山や比地大滝などで観光客の乗降が見られた。また「とりあえず乗ってみたい」と言って一周を完乗した、バスマニアではない観光客にも遭遇したことがある。
一方、課題も多いのではないだろうか。ひとつ目はダイヤ設定だ。先ほど乗客が見られたと記した比地大滝や大石林山は、いずれもトレッキングや登山といった、長時間のアクティビティが伴う観光地だ。一方で辺戸岬や安波の道の駅など、比較的滞在時間の短い観光地では、私が見た限り乗降はなかった。これはバスのダイヤ設定に理由があると思われる。バスを降りてから次の便までの空き時間が、最短でも2時間以上あるのだ。アクティビティをするには丁度よいかもしれないが、景勝地などの観光地を訪れるには時間を持て余してしまう。
その他にも、地元住民の利用が殆ど見られないことや、運行時間があまりに長大すぎることなども、課題として挙げられるだろう。
ただ、得られたものも多かったに違いない。交通の脆弱なやんばる地域において、観光客の移動の足は、そのほとんどをレンタカーに頼っているのが現状だ。しかし、乗用車への過度な依存は、希少な生き物のロードキル被害やオーバーツーリズムを招く要因となる。今回の実証実験は、そんな問題を解決する糸口になりうるのではないだろうか。
最後に:まとめ
今回の実証実験は、やんばる観光のあり方に、非常に限定的ではあるものの一定の影響をおよぼしたのではないだろうか。この実証実験で得られた結果を基に、以後も様々な施策が実施される可能性もありうる。今後のやんばるにおける観光業の活性化に期待を寄せたい。
2024.2.15
北板良敷
※当記事は個人での作成です。内容に誤りが含まれる場合もございますので、ご了承ください。
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※当記事に記載されている情報は、2024年2月現在のものです。
※当記事に使用している画像は、脚注のあるものを除き筆者が撮影しております。