SixTONES 2ndアルバム「CITY」を聴いて〜カラフルな楽曲の底なしの魅力を紐解く〜
アラームの音に、ハッとした。
そして思わず笑顔になった。陽気な音楽に、DJによる英語のナレーション。
これからどんな素晴らしい音の旅が待ち受けているのだろうか。
そんなワクワクをもたらしてくれたのは、SixTONESの2ndフルアルバム『CITY』
3形態のCDはそれぞれ曲順が異なり、初回盤Aは朝、初回盤Bは夕方、通常盤は夜から物語が始まる。
計24曲の収録曲は雰囲気も、ジャンルも、テーマもまるでばらばら。
そんなジャンルレスでカラフルな楽曲たちに「SixTONESらしさ」を強く感じた。
最初に手に取ったのは初回盤A。
アラームの音から始まる『Interlude-Sunrise-』が夜明けを告げ、心地よいBPM120のテンポはそのまま、2曲目『8am』に突入する。後ろノリのベースリフが、耳馴染みの良いメロディと組み合わされていて、何度も繰り返し聞きたくなる1曲だ。
作り込まれたサウンドと、国内ポップシーンの王道に囚われない自由な曲構成もSixTONESの魅力の1つ。
お洒落なピアノサウンドが印象的な『Ordinary Hero』ではAメロの直後にラップパートが登場する。
ラップパートは4小節で構成されており、ほとんどが小節の頭で拍を取っている。しかし、2小節目だけは違う。4部音符半拍分早いのだ。
歌詞で言うと「諦めたくもなるでしょ」の箇所で、ここはラップパートで唯一の日本語詞の部分でもある。英詞はさらっと耳馴染み良く、日本語詞はしっかりと印象づけられる。そんな仕掛けが楽曲の局所に散りばめられており、何度聴いても魅力は褪せない。
『Interlude-Sunset-』を挟み、街並みは夕方の様相に。7曲目の『Fast Lane』にはアルバムタイトルである「CITY」という言葉が歌詞に登場する。
壮大なイントロと重めの2ビートが印象的なこの曲は、未来へと突き進むSixTONESの6人を象徴するかのような楽曲だ。
「誰も追いつけない」その歌詞が彼らの勢いを表しているように感じられる。
怪しげな雰囲気漂う『Interlude-Night-』が夜の帳を落とすと、King Gnu常田提供の『マスカラ』が憂いある世界観を作りあげる。
ジャニーズとバンドという壁を超え、異色のコラボとなった本作。普段ロックバンドにばかり熱を上げている友人からも絶賛が止まらなかったこの曲は、作り上げられた常田サウンドはもちろん、メンバーの多様な声質が最大限に活かされているところが魅力だ。特筆すべきは京本の色気ある声で、切なく妖艶な楽曲の雰囲気をメイクアップしてくれる。
そんな歌詞で始まるのは12曲目に収録の『フィギュア』
アルバムの中で個人的な1番のお気に入りで、思い入れもある楽曲だ。
2020年に突如として現れたコロナウイルスは、私たちの生活を一変させた。
大学生である私の授業は突如オンラインになり、サークル活動は制限された。
音楽が、友人との時間が、サークル活動が、不要不急のものとなった。
どれも私にとって、とても大切だったものだ。
特に半年前から準備してきたサークルの夏合宿中止の決断はとても苦しいものだった。開催を楽しみにしてくれていた後輩たちは未だに合宿に行ったことがない。幹部である同期たちの、2年ぶりの合宿にかける思いの大きさも痛いほど理解していた。
それでも合宿を強行し、感染者を出してサークルを消滅させるわけにはいかなかった。
出した結論は、合宿を春に延期し、宿泊を排除した代替イベントを行うというものであった。
代替イベントは盛況に終わった。演奏を披露する同期の姿は輝いていて、後輩たちには笑顔が溢れていた。
無事に開催できたことが、涙が出そうなくらい嬉しかった。
あの日の思い出は、きっと一生忘れない。そんな輝かしい1日だった。
幸いこのイベントによる感染者は出なかった。
でも、私はあの時代替イベントを開催したことが正解であったか、今でも自信を持てない。
もし、あの時感染者が出ていたら。
もし、サークルがクラスターを起こしてしまっていたら。
そんな「もし」は止むことがない。
人の上に立つ人間として、私には仲間の安全を守る「義務」がある。
「もし」感染者が出たら、私が全て責任を取る。
そんな覚悟のもと、代替イベントの開催を決意した。
しかし本当にそうなってしまったとして、私には一体何ができただろうか?
この情勢下において、決断はいつだって苦しい。
「楽しい」何かは、身体的にも社会的にも莫大なリスクを負う。
「楽しい学生生活」は「悪」だ。
私たちは、あまりに我慢を強いられている。
待ちに待った春合宿、私は個人曲としてこの『フィギュア』という楽曲を挙げた。
初めてこの曲を聴いた時の衝撃がずっと心に残っていて、バンドで再現したらきっと楽しいだろうと思ったからだ。
この楽曲のサウンドはカラフルだ。Bメロを軽やかに駆け回るピアノの音、サビの華やかなシンセの音、一転してシリアスな雰囲気を醸し出すラップパート。SixTONESの多面性をぎゅっと凝縮したような楽曲だと私は思う。
そしてこの曲を初めて聴いた時、最も心を奪われたのが歌い出しの歌詞だ。
人間関係は、脆い。
ずっとそう思って生きてきた。
中学生の時、家族が崩壊していく様子を目の当たりにしてからというものの、人間関係に「絶対」はないと、何かの拍子に壊れたり、だんだん薄まっていってしまうものだと、そう思っている。
大学に進学してから、多くの大切な出会いがあった。
大事なものが増えれば増えるほど、それを失うのが、怖い。
それでも、どこかに「裏切らないもの」があると、信じてみたい自分がいる。
22年もこの世にいれば、もっと上手く生きられるものだと思っていた。
一方の現実は、無神経な言葉で人を傷つけては落ち込み、自分の不甲斐なさに辟易するばかりだ。
これから私は正しく、後悔なく生きていけるだろうか。
答えはまだ分からない。
でも私はこれからも「裏切らないもの」を探して生きていくのだと思う。
結果として『フィギュア』を合宿で演奏する夢は、叶わなかった。
先日大学の活動基準が更新され、合宿は当面の間停止と通達された。
正直な気持ちを言うと、非常に悔しい。
しかし、オミクロン株が世界的に大流行していることを考慮すると、妥当な決定であると思う。
今の私たちにできるのは、早く元の社会が戻ってくることを待つだけだ。
今回このアルバムを初回盤Aの曲順で紹介してきたが、初回盤B、通常盤の曲順と聴き比べてみると、また異なった印象を受ける。
そして楽曲を聴く場所を変えてみると、どうだろうか。
夏の海辺で。電車の中で。夜の散歩道で。
きっと楽曲がまた異なった色をもって降ってくるのだろう。
SixTONESのカラフルな楽曲たちが、毎日の生活を、私たちの「CITY」を鮮やかに彩ってくれるに違いない。