音楽のなかには言葉があるし、 言葉のなかにもまた音楽がある、 ということを考えている。 「言葉」というのは、 必ずしも歌詞である必要はなくて、 その音楽のなかにある願いだったり、叫びだったり、想いのようなものでもあるかもしれない。 なぜこのようなことを書いているかというと、 先日羊文学のコピーをしているときに、 まるで文章を書いているかのような気持ちになったからだ。 「文章を書いている」と言ってしまうと、 静かで穏やかな響きがするかもしれないが、 私にとって、文章を書く
砂浜を踏みしめる、ザクザクとした音 その音をドラムで鳴らせば、そこに海が広がるんじゃないか、 とふと思った。 「言葉をドラムで鳴らすこと」を考えはじめて約1年。 最初は「伝えたい」という気持ちが強すぎて、 必要以上に力が入ってしまったり、 想像している音と実際の音の乖離に悩むことが多かった。 試行錯誤を経て、ようやく手応えがつかめ始めた今年の5月、 後輩がオリジナル曲を作ってくれることになった。 最初はほんの軽い気持ちだった。 「学祭のステージに出られたらいいな」 本当
―2020年7月、ストックホルム 顔をあげればとんがり帽子。 頭を垂れれば石畳。 ここはガムラスタン。 式典でもしているのだろうか、王宮からトランペットの音が響いてくる。 スウェーデンの首都、ストックホルムのど真ん中。赤や黄色の石造りの建物が並ぶ、美しい街だ。浅緑の尖った屋根の教会が街を見下ろし、少し歩けば海がある。 スウェーデンに生まれ、スウェーデンに育った。でも、私は「みんな」とは違う。 私の両親は日本人で、スウェーデン語は話せない。家ではお箸を使うし、イースター
本記事では、全編スウェーデン語によって歌われるMrs. GREEN APPLE "norn"の和訳と歌詞の解説を、スウェーデン語学習歴6年の筆者が行っていきたいと思います。 ※拙訳がアーティストの意図と異なる部分がある可能性がありますが、ご了承ください。 1番Aメロ 【和訳】 鹿は湖の前を素早く駆け抜ける 岩山と木々の葉のあいだの遊び 作物が僕らに栄養を与えるように、命はめぐる そうして僕らはあたたかい焚き火のもとでうとうと眠るのだ 【解説】 鹿(en rådjur)
いつからだろうか、本屋に足を運ぶといつのまにか美味しいごはんが出てくる本ばかりを手に取っている。 おいしいご飯。おいしい酒。 そんな帯の謳い文句を見ると、中身をろくに確認することもなくレジに運んでしまうのだ。 幸い私の直感で選ばれた本たちはたいてい"当たり"の作品で、昼夜問わず私の食欲をかき立ててくるのだが、その中でも最近のお気に入り作家が「原田ひ香」である。 最初に申し上げておくと、私は別に原田ひ香作品を買い集めているわけではない。 何も考えることなく、ただ食欲に任せて
この間、ふと思い出したんだ。 音楽を始めた時のことを。 ずっと夢中になっていて忘れていたんだけど、 ちゃんとしたきっかけがあったということを。 わたしは、音楽に救われた人間。 そんな人たくさんいると思うのだけれども、 あの時のわたしの世界には、たしかに音楽しかなかった。 そこは、まっくらな世界だった。 怒号も、罵倒も、すべて超えた先の世界。 夜に流れるラジオと、そこで流れる音楽だけが、 この世とわたしを繋いでくれた。 貪るように音を聴いて、聴いて、 ある日、あの文章に出
私は、ピアノ教室の5番目の生徒だった。 とは言っても、私の他の4人の生徒は、私の兄と同じ幼稚園に通っていた3姉妹だったので、「2組目」と言った方が正確かもしれない。 その時私は5歳だった。 なんでピアノを始めたのかは、正直よく覚えていない。初めての発表会は兄と『となりのトトロ』の連弾をした。 私はとにかくピアノが嫌いだった。 何が面白いのかさっぱり分からなかったし、とにかく練習が苦痛だった。 父に「練習しなさい」と言われ、楽しみにしていたサザエさんが見られず、泣きなが
魔法がかかったような音を奏でる人に憧れる。 何かに取り憑かれたように演奏するその顔に、 神様がそばにいるかのようなその音に、 どうして、どうして、 とただ問いかけることしかできない。 あそこに行けたらいいだろうな、 そんなことも思うけれど、 残念ながら、今の私にはその技量がまだ、ない。 私が魔法をかけられるのは言葉だけ ただ、それだけだ。 その言葉でさえも、魔法がかかってる気がしているのは 私だけなのかもしれないけれど 5年前、私のあたまは言葉で溢れていた。 道
「絶対に当たる宝くじを買い続けるような人生を送りたい」 これは昨日RUSH BALLという夏フェスで、go!go!vanillasの『おはようカルチャー』を聴きながら思ったこと。 今回のRUSH BALLは、2年ぶりにフェスでの声出しが解禁。 夕暮れ時のメインステージいっぱいに響き渡るオーディエンスの声に、懐かしいその光景に、胸がいっぱいになった。 そして、こんな幸せを、ちょっとずつ集めるような人生を送りたいと、強く思った。 もうハズレくじは引きたくない。 悲しい思い
物心ついた時から、わたしの家は本でいっぱいだった。 決して広いとはいえないアパートに、学術書から絵本・図鑑まで多種多様な本がところ狭しとしきつめられ、そこはまるで小さな図書館のようであった。 英語で書かれたきのこ図鑑を手に取っては妹と「これは食べられません。」「これは美味しいです。」と、それが何のきのこか全く分からないまま勝手に分類し、見るからに毒々しい色をしたきのこに2人して怯えていた。 そんな大量の本の中で、わたしを魅了したのは「児童文学」だった。 わたしたちの寝室に
みなさんは「ツバキ文具店」という小説をご存知だろうか? いや、知らんけど。 なんて言わずにちょっとお付き合いいただきたい。 この本の主人公は、鎌倉で文具店兼代書屋を営む鳩子(通称ポッポちゃん)。 代書屋とは、ラブレターや絶縁状に始まり、推しからの手紙が欲しい!だの、亡くなったクズ夫から手紙をもらって気持ちの整理をつけたい!だの、無理難題を要求してくる依頼者の気持ちを汲み、手紙を代書するお仕事である。 私がこの小説に出会ったのは2週間ほど前。 本屋で平積みになっている愛ら
私が初めてスティックを握ったのは大学1年生の新入生ライブ、ではなく それよりちょっと前のスウェーデン留学時代のことである。 当時私はスウェーデン語も英語もろくに話せず、選択科目には言語を使わなくて良い体育とアンサンブルの授業をとった。 体育の授業に行ってみると、そこは身長180cm以上の大男たちが8割を占める、50mのタイムが2桁代の私には場違いも甚だしい場所だった。 それでもフレンドリーなイケオジ先生が毎種目私に特別ルールを設けてくれ、なんとかギリギリのところで1年間乗
アラームの音に、ハッとした。 そして思わず笑顔になった。陽気な音楽に、DJによる英語のナレーション。 これからどんな素晴らしい音の旅が待ち受けているのだろうか。 そんなワクワクをもたらしてくれたのは、SixTONESの2ndフルアルバム『CITY』 3形態のCDはそれぞれ曲順が異なり、初回盤Aは朝、初回盤Bは夕方、通常盤は夜から物語が始まる。 計24曲の収録曲は雰囲気も、ジャンルも、テーマもまるでばらばら。 そんなジャンルレスでカラフルな楽曲たちに「SixTONESらしさ
生きていくことは、苦しい。 どれだけ自分の環境が恵まれていようが、どれだけ大好きな仲間たちに囲まれていようが、涙が溢れてやまない日がある。心が締め付けられるあの感触は、未だ消えてくれない。 だから、私は音楽と生きてきた。 私がSixTONESを知ったのは、2019年の冬。それまで共に邦ロックを聴いてきた従姉妹が突然SixTONESにはまったことがきっかけだった。 彼らのデビュー曲「Imitation Rain」を聞いた時、その作り込まれたサウンドと歌唱力の高さに、ひど
ヨルシカを聴くと、心が苦しい。 まるで心臓を素手でぎゅっと掴まれたかのような、そんな感覚がする。 でも、最新アルバム『盗作』を聴いたときの感覚は、今までの”それ”と少し変わっていた。胸騒ぎがするのだ。懐かしさや切なさにふわっと包まれるようなあの感覚とはまるで違う。 1曲目の『音楽泥棒の自白』ではベートーヴェンの「月光」が怪しく奏でられ、続く『昼鶯』ではイントロから印象的なギターとベースのスラップが脳裏を叩く。何より驚いたのはボーカルsuisの声の太さである。これまでの美し