哀
大きなガラス窓 眩しい朝日が終わる
見慣れた職場
ドアの向こう側で進む建築工事
目を反らすことが出来なくて
窓辺で悲し顔のモンステラ
せめて食事をあげましょう
謝りましょう
息苦しいでしょう 陽光の弱い
排気ガスまみれの環境に連れて来たのは私
フェイクより本物で呼吸がしたくて
愛する緑を殺し続ける私
お水だけでは育たない
大道路を挟んだ向かいの進学校
小綺麗な校舎屋上から飛び降りた十四歳
誰の声も聞きたくなかったの
大切な声を誰一人かけなかった
一言だけで良かったはず
目も耳も心も塞いでいたの
謝りましょう
あなたが私を見かけた事くらいあったかもしれない
そんな出会いとも呼べない儚い距離を残念に思う
夕方音楽室から漏れ聞こえる寂しげなピアノ曲
あれはもうあなたではない誰かなのね
何も求めなければ育たない