降魔な夜
喉の渇きと胸苦しい夢に目覚め
掻きむしった首元を撫でながら
寝ぼけ眼で間接照明のスイッチを押す
今逃れてきた夢が脳裏で回り続けている
逃れてきた今を意識するように私は想像する
満ちた月明かり下
静かにミントの葉をちぎり集めていく一人の魔女
広大な地を目前に
視界いっぱいに広がるラベンダー畑へ踏み入る
魔女の背中を追う様に駆け出す私
自分の傲慢さを感じる貴重な時間
一人で乗り越えた事など一つもなく
人の感情に目に耳に触れる自然に
助けられてきたはずだ
そんな事を思いながら
午前三時
心の闇とコップ一杯の水を飲み干し
悪い夢を忘れたくて
ラベンダーとミントのオイルの封を切る
本当は傲慢な自分を捨てたくて
芳しい時の中
暗闇に感謝して瞼を閉じる
脳裏には魔女と私
猫の奇妙な鳴き声を耳に
冷え切った手足を抱えながら
深い眠りを待ち続ける