ずるい思い出

例えば
私が欲しいものを持って生まれる人がいる
私が叶えたいことをたやすく叶える人がいる
比較癖
それは私にないものしか見えなくする
もう何も叶わないのではないかと気持ちを沈ませる

思い出にひたる
若い頃はよかった楽しかった幸せだった

いま積み上げている日々を忘れる
こんなに頑張ってきたのに報われていないという嘆き

思い出にひたる
幸せしかなかったか?
辛さや苦労もあった都合よく忘れている

それでも
これからこれから来年こそはきっと良くなると言えた

そこに戻ることはできない

若さは過ぎていくものなのだと知り、日々を積み重ねることの大変さがわかる年齢になった

華は散り、蕾もつかない、乾いていくだけの日々

いま過ぎていくこの日々もまた二度とない経験

これからこれから来年こそはきっと良くなると言わない

ここに戻ることはない

私にしかない経験をありがとう
あなただけが経験してきたこと
たくさんの気持ちをありがとう

あなただからこそわかる気持ち
そこに意味などないと思ってきた
いま、意味をもたせようとするもがきがある

誰でもない私と、誰でもないあなた
まだ出会える
まだつながる

軽やかでも華やかでもない
少しでも高く飛ぶ夢を胸に
感情風にふかれながらの低空飛行
そんな日々をいま経験している







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