穴
私は私の手でないと塞げない穴を探していた
穴は大抵人間にあり背骨中央部にあいている
小さな子供達の穴だけは頭のてっぺんにあり
相手構わず触れる人の愛や優しさを受け取る
色々な人の背中に触れ手を当ててみるが
どの穴も小さかったり大き過ぎたりする
ある日私は
一人で長時間立ち尽くしている人を眺めていた
ひと押しして欲しそうなその背中に触れてみた
その穴の形は私の手にぴったりだった
やっと見つけた相手と私は高速で落下していた
それでもうれしかった
この人が私の唯一の相手
そしてこの人が私の穴を塞げる唯一の人
あなたを見付けた喜びと共に訪れる終わりの時
ふたりでいられる時間など必要なかった
この一瞬は私を安堵させた
この一瞬の為に生きていた
訳ありのあなたを訳ありの私が後押しする運命
落下の寒さの中片目で見るあなたの驚いた顔
私は笑顔を見せ背中に回した手に力を込める
私たちは孤独を感じないで落下する
落下して全てはグチャグチャになる
それが私達の出会いと別れ