大部屋

広く白い空間の大きな出入り口に立って中を覗き込む
7つ程のベッドが縦横まばらに配置されている
ベッド間の幅は広くその間隔からか心理的圧迫感はない

横向きのベッドが無ければとても広い新生児室のようだ

白いベッドに転倒防止の白い柵
人体分白く膨らんだ布団の中には
右向き左向きと各々横向きに眠っている
不思議と誰の顔も見えない

新生児室に並んだ小さなベッド
覗き込む顔には自然と笑みが浮かぶ

寝たきり病人用の大きなベッド
無表情な顔で淡々と作業が成される

眠っているのか起きているのかも分からない
おむつ替え体勢変え終始無言でされるがまま

赤子との違いが
心を戸惑わせる

世界中の病院の病室という病室に
死に損ないが溢れかえっている現実

蒼白く濁った瞳で空を眺め
グアウアとうわ言を口にし
何かをしきりに訴えている

喋れる者は誰彼構わず殺してくれと訴え続け
歩ける者は病棟から出ようと必死で抗議する
看護師はそれをはいはいと聞き流しながら
喋れない患者の排泄物に文句をつけている

これが延命治療の結果なのだろうか

人は簡単に死ぬ事は出来ないと医者は言う

医師達は命が助かればそれでいいのか
人は1日の命を繋ぐことが全てなのか

病室に並ぶ老人達は
黙っている
眠っている

彼らの意識は何処にあるのだろう
今此処でない何処かにあればいい

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