不真面目も本気の懐に入りたい。(後編〜サケカスヘンソク〜)
前編で水戸で散歩をしながら珈琲探訪をするつもりが、歩く中で煩悩のタワーが高く積み上がり、最終的には本気の昼呑みをするぞと決意した川合。後編は昼呑みの日の出来事を綴ります。
前編はこちらから。
2025.01.19. AM10:30。
今日、昼呑みをする。
そう唐突に決意した。水戸で散歩をした際に昼呑みをするぞ。と決意し、何なら酒カス散歩実行委員会なるものを立ち上げて、参加者でどうにか金を作り出して、それを飲み代にして昼呑み散歩をするという酒カスが天賦の才能を発揮できそうな企画を思いついた。酒カス散歩実行委員会は実際に立ち上げるかどうかはまだちゃんと決めていない。その日から2日くらい経ったくらいだった。
ここで酒カスについてちゃんと説明しておきたい。酒カスという言葉は私自身が最近ノリで使い始めた言葉なのだが、ちゃんと意味合いを説明しないと、誤解を招くと思ったからだ。
私の中の酒カスというのは、
酒を飲むに至る過程を、酒のために全力で生き、翻弄される人間の姿の総称。
である。酒を大量に摂取し、ベロベロになっている姿と想像する人が多いのかもしれないが、私の中の酒カスは酒を摂取する前の行いがとても重要になってくる。摂取した後は飲んだ酒の量や内容は関係ない。要は酒を飲むことに対して、どれだけモチベーションを高く積み上げられるか、情熱を持てるかが肝なのだ。
そんな酒カス精神のもと、私は以前から行きたいと思っていた水戸にある店で熱燗を飲むと決意する。
いつも水戸へ向かう時は車で移動するのだが、酒を心置きなく飲むには公共交通機関を使わねばならぬ。この日は日曜日。水戸行きの電車は1時間に一本。そして自宅から最寄り駅までは4.5km。歩いて1時間かかる。だが、自宅を出る時にはもう電車が出るまで1時間を切っていた。
無理せず1時間後の電車で行っても酒は楽しめるだろう。だが、酒カス川合、それで良いのか。己に問う。酒に至るまで全力を尽くしてこそ、酒カスとして美味い酒が飲めるのではないか。
10分ほど短縮できれば電車に乗れる。私は競歩選手の如く、素早く歩き始めた。風は強く、歩けば歩くほど汗、鼻水が垂れてくる。散歩する老人とすれ違う。必死すぎる顔だったのか、顔を二度見される。気にしていられるか。歩みを止めることはない。
電車発車まで15分。このまま歩いていれば間に合わないが、走れば間に合うかもしれない。日々歩いているとはいえ、走る習慣がない自分の体力を鼓舞しながら、走っては早歩き、走っては早歩きのインターバルを繰り返す。鼻水と汗が出るペースも移動する速度と共に加速する。先には迎えを待つ男子高校生が見える。寒さに耐えながら話をする男子高校生の横を、酒のために必死に汗を流す28歳独身女が通過する。
駅に着いた。電車発車の3分前。勝った。私は己に勝ったのだ。歓喜と共に汗がまた吹き出す。汗とニットカーディガンが反応し、独特の匂いを発する。その匂いが近くにいた女子高生の談話を邪魔していないかだけが気がかりだったが、安心して電車に乗り込んだ。
そうして私は無事水戸に到着し、少し歩いて目当てのお店、grandさんに到着した。
ここでお店の紹介を。
grandさんは日替わりのカレープレートと、ドリンクメニューといったシンプルで分かりやすいメニュー展開をしている。だがしかし、ドリンクメニューは種類豊富な日本酒がずらりと並ぶ。癖が少しあるものから、すっきり飲めるものまで幅広い。日本酒が好きな人間にとっては幸福以外の何者でもない。そのほかにもビールやハイボール、ノンアルコールのドリンクもあり、カレーメインで楽しむこともできる。シンプルなのに酒カスからカレー好きまで楽しめる、守備範囲が広いお店なのだ。
そして店内には下へと向かう階段があり、そこを降りると古着屋があるのだ。
お店の名前は 獏baq。
店主は私の数少ない心を開ける友人で、かわいい猫を飼っている。(お店にはいないですよ)私も何回か彼女の家でお腹をふみふみしてもらった。とても人たらしなにゃんこーだ。
扱っている古着はシンプルなものから、個性的なものまで、身につけて街を散歩したくなるものばかり。そう思えるのはInstagramで商品を紹介している写真が魅力的なこともあるのだろう。
今まで着てこなかった服でも、店主や店の雰囲気もあってなのか、なんか買って楽しんでみようと一歩踏み出せるお店だ。古着をこれから楽しもうと思う人や、これからも楽しみたいという人は是非。
さて、昼呑みに戻る。
お店に入り、カウンター席に座り、それからはもう水を得た魚のように活き活きと酒を飲む。この日はカレーが売り切れとのことだったのだが、酒を目当てにしていた川合は酒を飲めるだけで十分であった。
しばらく一人で意気揚々と呑んでいると友人がやってきた。
自分のインスタのストーリーを見て合流したいと連絡してくれたのだ。私はこういう粋なことをしてくれる友人を本当に大事にしたい。
この友人も、私の数少ない、心を許せる存在だ。
美術予備校で出会い、大学生、社会人になってからも度々連絡を取り合っている。
直接会うのは久々だったので、お互いの近況を酒をちびりちびり呑みながら話した。
お店の閉店間際、古着屋の友人とも合流し、ゲラゲラと話を交わす。内容は敢えて伏せておく。
お店を後にし、合流した友人ともう一軒行くことになり、少し路地を彷徨って、渋い中華料理店に入った。名前は 珍満 だった気がする。名前が良すぎる。好感しかない。
店は閑散していたが、古き良き町中華の店だった。餃子、炒飯、レバニラ、肉野菜炒め、瓶ビール(赤星)を美味しくいただいた。また行きたい。
駅に戻り、改札付近でダラダラと話す。そういえば美術予備校に通っていた時も改札付近でダラダラと話していたなとぼんやり思い出す。友人と別れを告げ、ふと考える。
10年経って、自分の周囲や環境は途轍もなく変化したなと思うが、自分は何か変わっただろうか。寧ろ不真面目さが増している気がする。でも間違いなく心身の健康具合は良くなり、10年前から、直近までの間の状態を遥かに更新している。描く絵も良くなってる。一番良いことだ。
社会性や利他性も大事なのかもしれないが、健康第一である。
酒カスは酒カスなりに、酒カス以外のことはスローペースに歩めば良いのだ。
酒カス。加速。人間、変速。これで良い。
行ったお店のInstagramアカウントです。どちらもお勧めです✌️
チェケラ👇👇