鴇色の出会い
なんという事だ!
さんざん期待させて、皆が口々に俺を持ち上げて、挙句の果てがこの豚だ!俺は軽く眩暈を感じて額に手をやり俯いた。
この、豚。この豚と俺はこれから過ごすのか?
鏑丸はあんぐり口を開けている。
「必要が無かったら、返されてもいいのですよ。代わりに後日になりますが地域振興券を差し上げます。」
そう言われても、周りは期待の目で俺を見ているし、この豚を返して代わりに地域振興券なんぞを貰ったらがめついやつと思われやしないだろうか。この事態をどうしたらいいか考えを巡らせたが、良い答えが見つからなかった。
「こちらで飼う場合も考えておりますから。」
いいのか?いやしかし。この豚を提供してくれたスポンサーの顔に泥を塗るわけにもいくまい。
「地域振興券はいりません。せっかくですから、この豚を頂きます。どうしても飼えなかったらお願いしてもいいですか?」
「分かりました。では、さっそく手続きを。」
かくしてこの豚が俺のペットとなった。何故だ?意味が分からない。事の発端は学園祭での福引だ。福引券自体は1枚100円で買える。が、他にも大学のサークル活動その他自治会などで貢献すると配られる。俺は今回他大学との文化交流でいろいろ頑張ったからゼミの教授である悲鳴嶼先生から今回の学園祭の福引券をたくさん貰った。福引は2種類有り、その券はプレミアム券。券自体も300円と高額になる。その券を10枚も貰ったのだ。
「俺には多すぎる、皆いらないか。」
そう言っても誰も遠慮して受け取らない。こんな時に限って律儀になりやがって。
「伊黒が頑張ったのだから伊黒がすべきだ。」
「先輩、プレミアム券なんて最高じゃないですか。」
確かにプレミアム券の評判はいい。大学祭に幾つかの企業がスポンサーとして入ってくれている。それに研究に協力してくれるスポンサーもいる。だからその企業の目玉ともいえる商品が景品として出される事が多いのだ。確かに当たりはずれはあるが、AI搭載の掃除ロボットや、光センサー付きの朝確実に起こしてくれる目覚まし時計、空間に映像を移すプロジェクター等、最新の面白いものがある。それを楽しみにしていたのだが、その1等の商品が豚とは!
いや、確かに、豚と言ってもミニブタだ。大きな豚で無い事はまだよかったかもしれない。だが、誰もがペットを飼えるわけでもない状況で景品に出すなど、どういう了見だろうか。しかも、一人暮らしの学生も多く、実家暮らしだって皆都会の人間だ。余りにも、余りにもではないか。驚きで声も出ない。だが、スポンサー様のご提供だ。むげに断る事もできない。この状況で断れる奴がいるなら教えて欲しい。
この大学は農学部や獣医学部もあり、少し離れてはいるが有名なアース牧場が農学部や獣医学部と提携していろいろな動物の飼育について協力してくれている。今回はそのアース農場からの提供なのだ。話題性を狙っているのだろう。勿論、飼えない場合も考慮して、その農場とその周辺の地域で使える地域振興券に変える事もできるそうだ。その地域には観光地も多くあるから、多少遠くても使い道はある。しかし、そう簡単に商品券に変えてくださいと言えるだろうか。
「ブ、ブ、フゴフゴ…。」
「この子は生まれて2か月でもうトイレのしつけもきちんとできています。勿論飼い方のサポートもきちんとしますよ。」
景品を出しっぱなしの企業も多い中、勿論豚が生きているからでもあるが、アース農場の経営者、つまりその社長の満面の笑み、どうして断れようか。おそらく、農学部や獣医学部の生徒にはこの牧場のミニブタ達がとても人気だったのに違いない。飼いたいとか景品に欲しいとか、そんな夢を語っているうちに経営者が景品として出す事にしたのだろう。しかし、大学も学園祭実行委員会もよく許可したものだ。個性が一番、多様性のある社会をと謳っている結果がこれか?面白がっているのではないのか?
「鏑丸、この子はダメだぞ。」
「モチロン、チョットオオキイ。」
いや、そうではなく…、小さいと食べるつもりだったのか?いや、鏑丸は分かっていて、わざとそう言っているだけだ。
俺はとりあえず、色々書類を受け取った。ミニブタの飼い方、餌やり、ペット保険の用紙まである。なんだ?ミニブタがいくらするのか知らないが1等というからには高額なのだろう。だが、それとは別に維持費が随分かかるではないか。これは1等として価値があるのだろうか?随分損な役回りだ。だがしかし、周りの学生どもは
「1等とはすごい!」
「ミニブタだって、いいなぁ。」
「いや、大変そうだぞ。」
等とまるで他人事で楽しそうに俺と豚を見ている。この弥次馬どもめ。先程まで、
「何が当たりますかねぇ。」
「伊黒先輩、楽しみですよ!」
等とさんざん俺を持ち上げておいて、どいつから処刑してくれよう。
「ブヒ、ブヒ。」
このミニブタは俺の事を認識しているのかしていないのか分からないが、俺の足元で仕切りに俺の匂いを嗅ぎ、鼻を擦り付けてくる。や、やめてくれ。鏑丸が不安そうに見ている。そうだろう、これからもう1匹我が家に生き物が増えるのだ。不安に思わないわけがない。
「さあ、どうぞ。男の子です。ミニブタは清潔ですから。」
社長は足元のミニブタを抱き上げて、俺に手渡した。慣れない手つきで俺はそのミニブタを抱く。
「ブ、ブ、フゴフゴ。」
ミニブタは暢気に俺の顔に鼻を近づけてくる。鏑丸が困ったようにその場所を譲る。本当におかしい、この一等賞は獣医学部か農学部の奴らが受け取るべきだろう。知り合いの、農学部の奴が2等を取った。仮想VRヘッドマウントディスプレイだと?それでゲームをする気か?それこそ理工学部の俺にふさわしいものだ。俺ならゲーム以外の事に役立て、複雑なプログラムを組み立て、新しい仮想世界をそこに作り上げるだろう。なのになぜ、それが俺に来ない。
「ブブ、ブブブ。」
しかし、そうも言ってられない。このミニブタの飼い主は俺になってしまったのだ。ああ、時は元に戻らない。先に進むしかない。
かくして、俺はこのミニブタを飼っている。そして俺は大学に鏑丸と一緒にこのミニブタも連れて行く。幸いな事に農学部だの獣医学部だのも少し離れた棟にあり、知り合いの学生が喜んで預かったりしてくれる。
白蛇だけでなく豚も連れている学生。勝手に俺はそれで有名になってしまった。
「ミニブタか!派手に凄い景品だな!」
美大に通う宇髄は高校の時からの知り合いでこの大学の学食が気に入っているらしくよく来る。美大がこの近くだと言うが俺は行った事も無い。そんな宇髄が楽しそうににやにやしながら俺に言う。
「大きくなったら食えるか?」
「食えるわけないだろ、そんな事、又言ってみろ、お前のムキムキネズミを鏑丸の餌にしてやるぞ。」
シャー!
鏑丸も威嚇する。
宇髄が冗談で言っているのは分かっている。
「あー。わりぃ、わりぃ、でもお前、見かけによらず、ミニブタを大切にしているな。」
「そんなつもりはない。」
「まあ、困ったときは俺の所に預けに来いよ。」
宇髄はそう言って去っていく。
ったく、他人事だと思って!
福引が当たったあの日、とりあえずゼミ室にミニブタを連れて行った。
「ああ。ミニブタはなんとかわいいのだろうか。猫とはまた違うかわいさがある。」
教授の悲鳴嶼先生がそのミニブタを抱き上げて頬ずりをする。猫ほど柔らかくはないが、人懐っこいところがお気に入りのようだ。くじ運は俺のせいだから文句は言えないが悲鳴嶼先生が下さった福引券でまさかこんな事になろうとは。
「伊黒さん、大変でしょうから何かあったらお手伝いしますね。でも、伊黒さんならお世話も完璧にできそうです。」
教授の助手の胡蝶はそう言って褒めてくれたが、目が悪戯っぽく楽しそうに笑っている。絶対俺のいない所でミニブタを飼っている俺の事を面白がって笑うに違いない。だって、窓側で全く興味なさそうに空を見上げていた時透が、胡蝶と顔を見合わせてにっこーと笑っているのだから。
「伊黒さん、俺にもミニブタ触らせてよ。」
学園祭にすら興味が無い様でずっとゼミ室にいた時透がそう言うのは珍しい。時透はメスの烏を飼っているとか言っていた。俺に劣らずなかなか変わっているが、ミニブタを抱き上げ撫でる手つきは普段見ない優しい顔をしていた。
「伊黒ォ、大変だなァ、俺の所で飼ってやりたいのはやまやまだが俺も手いっぱいだしなァ。」
数学科の親友の不死川は言う。ああ、そうだ分かっている。
不死川の実家には弟妹が5人もいる。しかも動物好きで犬やらカブトムシやら飼っているから世話も大変だろう。
「それにあいつら、ミニブタなんて聞いたら飛んで寄ってくる。」
そうだろうな。ミニブタが子供達にもみくちゃにされる光景は一見、微笑ましい気もするが、ミニブタには災難だろう。
とりあえず俺はミニブタを家に連れて帰った。たちまちミニブタを買うのに必要なトイレシートやえさなど必要なものはその後すぐ、あの社長が持ってきてくれた。幸い少し広いがファミリー層もいる普通のマンションの1LDKを借りていて、届を出せば動物を飼う事には問題が無かった。
「さあ、お前に名前を付けないとな。」
「フゴフゴ、ブ、ブ、ブ。」
色々考える。しかし鏑丸の時のようにはうまく思いつかない。俺の相棒の鏑丸。ふと弓矢の鏑が思い浮かんだ。その形、何か危険があれば俺に教えてくれる鋭さ、鏑丸と名付けるにはぴったりだった。しかし、この豚は…。ピンクだ。なんと名付けよう。
俺は色の名前を調べた。桃色、桜色、薄紅色。桜丸?いやいまいちだ。そんな時、鴇色という色の名前を見つけた。色の名前をそのままミニブタの名前にするのもストレートすぎるが、その色、そして名前が気に入った。鴇色そのままの色のミニブタ、お前、豚だが、鴇のように美しく俺にふさわしく希少な賢い豚になるか?鏑丸から名前も一字取って、お前に付けてやろう。
「鏑丸?それでいいか?」
「ウン、オバナイガイイナラ。」
賢い鏑丸は頷いた。
「鴇丸、今日からお前は鴇丸だ。鏑丸と仲良くするんだ。」
「フゴフゴ、ブヒブヒ。」
俺の言葉はよく分からないと言った感じで鴇丸は抱き上げた俺の手の中で首をきょろきょろと動かした。
「やあ、伊黒!今日も元気そうだな。うん、鏑丸も鴇丸も元気そうだ!」
歴史学科の煉獄はそう言う。幼馴染の煉獄は大学も一緒だ。煉獄は鏑丸も可愛がってくれるし、新しい鴇丸もいたく気に入ったようだ。
「鴇丸?何故そんな名前なんだ。」
教職課程の教室に行くために煉獄と一緒にいた体育科の冨岡が言う。
「鏑丸は蕪の白い色から取ったんだろう?」
「何を言う?」
冨岡は相変わらず頓珍漢な奴だ。
「鏑丸の鏑は野菜の蕪ではないぞ、冨岡。矢じりの先にある物で音が鳴る仕組みの物を言うのだ。」
流石は煉獄、よく知っている。
「そうなのか!」
冨岡は目をぱちくりさせて言う。
「まあ、確かに蕪に似た形でもあるがな。」
そうだ、確かに、それもある。だが、色だけで選んだのではない、冨岡にその情緒は分からないだろう。それに鴇丸は確かに色で選んだのもあるし。
「では鴇丸のときは何なのだ?」
「ああ、それは確かに鴇の色に合わせてそのまま鴇にした。」
「鴇の色?」
「ミニブタは鴇という鳥の色そのままの色だからそう名付けた。直接過ぎたか?」
「いや、かわいい。」
先程思った事は撤回だ。色で選んだとしても、冨岡には日本の伝統色の美しさ等これっぽっちも分かっていない。だが冨岡は端正な顔をムフフとほころばせてしゃがむと鴇丸をそっと撫でた。どうやら昔犬に噛まれて犬は苦手なようだが、この鴇丸は賢くて噛んだりせずに甘えるからお気に入りらしい。冨岡がご機嫌なのは癪に障るが、鴇丸が甘えているなら撫でさせてやってもいい。
そんななか、煉獄が可愛がってくれても退屈になったのか、シャー!と鏑丸は一声叫ぶとふて寝するように頭を下げて俺の首にさらに巻き付いて眠ってしまった。
「よもや!」
鏑丸の珍しい態度に
「杏寿郎すまない。」
そう俺が謝れば
「なる程、鏑丸でも嫉妬する事があるのか。」
杏寿郎はそう言い、ふて寝する鏑丸をそっと撫でた。あぁ、そうだ鏑丸も少しだけストレスを感じているのだろう。今晩は鏑丸をいつも以上に可愛がりおいしい食事を用意してやろう。
そんなこんなして日々は過ぎて行く。少しやきもちを焼いていた鏑丸もだんだん鴇丸と慣れ、2人で戯れあって遊ぶ様になってきた。
そんなある日の事。俺は授業を終えて大学を出た。今日は大学の近くの公園をゆっくり散歩して帰ろう。鴇丸は今日もいい子にしていた。
「伊黒君、そのミニブタは何だね。」
そう言う教授に
「この間の学園祭の福引でいただいたアース牧場の1等賞の景品です。協賛してくださったあのアース牧場さんです。」
そう言うと大概の教授は黙った。寄付を沢山してくれるアース牧場様の景品をきちんと引き受けているのだから、大学に連れて行くくらい大目に見て頂きたいものだ。授業中は犬用バッグに入れて席の隣に置いていれば大人しく寝てくれているし、時には獣医学部の知り合いが預かってもくれる。
公園の中は涼しい風が流れていてとても気分がいい。鴇丸は公園の中を歩くのが嬉しい様ではしゃいであちこち匂いを嗅ぎながら歩き回っていた。鏑丸も俺の首から離れて地面を這っている。今はすっかり仲良くなった鴇丸と前後ろと交互に進みながら自然を楽しんでいる。この公園はとても広く、小さい道もいろいろあり、行くたびに知らない道の発見があった。すれ違う人もいなくなると俺は鴇丸のリードを離し、自由に歩かせた。
「お前たち、あまり遠くに行ったら行けないよ。」
「ダイジョウブ、トキマルノコト、キチントミル。」
「ダイジョ?」
鏑丸の言葉に鴇丸も言葉を続ける。
鴇丸も片言ながら少し言葉が分かってきたようだ。2匹はどんどん進む。俺はその後を追った。その先の知らない道。そしてずんずんと追いかける先で、急にぱっと視界が開けた。これまでの木々に覆われた小道から世界が広がったようなそこは新緑あふれる広場だった。広すぎるわけでもないけれども十分な広さのそこは、この公園にこんな場所があったのかと思うほどの光降りそそぐ小さなオアシス。誰もいないかと思ったがそこに人が一人佇んでいた。
「あっ!」
俺は慌てて2匹に声を掛ける。
「人がいるから戻っておいで。」
しかし、2匹は戻らずそこに佇む人に見惚れる様に立ち止まっていた。俺は2匹の傍に行き、その視線の先の人をもう一度見た。その人は騒がしい俺達の足音にゆっくりと振り返る。草溢れる中で、降り注ぐ光の中にまるで舞い降りた天使かのようにそっと立つその人。まるでおとぎ話の世界のように美しく、俺は夢かと思うほどに驚いて息を飲んだ。
「あ、すみません、お散歩の邪魔をしてしまいましたか?」
蛇とミニブタとかとんでもないペットを連れていると言うのに驚く様子もなくその人はにっこりと笑う。まるで鈴を転がすような声。そしてその髪色は鴇丸と同じ美しい鴇色に、この注がれる太陽の光を一杯に受けて光る草葉の色。
「いえ、こちらこそ。騒がしくて驚かれたのではないですか?」
「大丈夫ですよ。ここがとても綺麗な場所なので見惚れていました。私、この公園大好きなんですけど、この場所は初めてです。」
「俺もそうです。」
「そうですか!?こんな場所があるなんて知りませんでした。とっても綺麗で、この世界を絵にかきたいと思って今ずっとここに立っていたんです。」
にっこり笑うその人の溢れる微笑み。俺に向けられた途端、世の中を斜めからしか見ていない俺の心が優しくほぐれ、溶けていくような気がした。
「絵を描く?」
「そうなんです。私、そこの大学の美大生なんです。」
その人はこの大きな公園を挟んで俺の通う大学のとは反対の場所にある美術大学の学生だと教えてくれた。ああ、宇髄が通っている大学だ。今までちっとも興味が無かった。
「知り合いがそこにいる。」
「え?誰ですか?」
「宇髄だ。派手な奴で芸術は爆発だって本当に爆破しようとして、比喩になってないと教授に怒られたとか。」
「あ、知ってます。有名な方ですよ。」
あいつ、こんなかわいい人がいる事を俺にちっとも言わなかった。
「でもあの方、お気に入りの方がこの公園の向こうの大学にいらっしゃるらしいですよ、しかも3人も。」
何だと?情報の多さにバグっている俺に、ふふっと優しそうにその人は笑い、
「公園が大きいから向こうの大学まで遠いですよね。」
そうにっこりと俺を見つめた。その翡翠のような美しい瞳。
その大学は俺が行っている大学だろう。公園を挟んである大学はそれしかないから。公園は広いし、大学同士繋がる公共機関もなく、学部も全く違うから確かに交流はほとんどなかった。
「その大学は俺が行っている大学です。」
「まあ、そうなんですか!とっても素敵な大学ですよね。素晴らしいです。」
そう言うとその人はその後、美術大学の事、絵の事、沢山話してくれた。俺達はいつの間にかその草原の真ん中で座り込んでいた。知らない話なのにつまらない事が全く無くて俺は聞き入ってしまった。
「この白蛇さんとミニブタさん、とってもかわいいですね。」
優しく白蛇とミニブタ、そう鏑丸と鴇丸を撫でるその白くほっそりとした指、そして桜のように優しく血色を帯びた肌。2匹とも大人しくその女性に寄りかかりやがてすやすやと寝てしまっていた。
あの日、そうあの日、まるで導かれるようにして俺はあの人に出会った。
鴇色の髪の人。
名前は甘露寺蜜璃。
名前そのままに甘く玉のように美しい人。
鏑丸は勿論だが、鴇色のミニブタも俺を導いてくれたのか。
ブヒ、ブヒ、ブーブー
お前の鳴き声が今日も目覚まし代わりに俺の耳に心地よく響く。
「アサゴハン!」
鴇丸、かわいい子だ。
「ボクモアサゴハン!」
鏑丸が俺の腕をするすると昇って、
「アサゴハンハ、ボクガサキダカラネ。」
なんて鴇丸に先輩面をする。
ブヒブヒ、シャーッ!
朝のお約束の可愛い小競り合い。
「はいはい、待っているんだよ。」
俺は2匹の朝御飯の支度をする。日の光が優しい朝の時間を照らしてくれる。今日もまた会える。あの鴇色の髪の人と。あの後、もう一度会おうと約束した。そして会うたびにもう一度会おう、そう約束を続けた。
俺は2匹の朝御飯の用意もそこそこに出かける支度を始めた。
鴇色の髪の人とまた今日も会うために。
鏑丸と鴇丸と共に、2人と2匹で。
甘露寺、俺との時間をありがとう。
君がこの世にいる事、それだけで世界が喜びに溢れる。
今日は君がこの世に生を受けた日。
誕生日おめでとう。
どうかこれからもずっと君の誕生日を祝わせてておくれ。
シャツのボタンを留める俺の耳に2匹の賑やかな声が響く。小競り合いはちょっと煩いが、1匹でいるよりはいいだろう。鏑丸も心なしか以前より楽しそうだ。
ブブブ、ブヒ、ブヒ
「トキマルチョットウルサイ。」
シャーッ!
「カブラマルモ!」
終
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診断メーカー
『文書をつくれったー』より
ちゅーりっぷへのお題
【期待】【挙げ句】【豚】
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2022年6月1日
鬼滅の刃、甘露寺蜜璃さんお誕生日に向けて
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制作
ちゅーりっぷ
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版権元とは一切関係ありません。
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