より子の奮闘記（ショートショート）【音声と文章】
山田ゆり
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※音声・文章、どちらでも楽しめます。
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
より子の奮闘記（ショートショート）
ということをお伝えいたします。
「あー、駄目だ。
えーと、どっちかなぁ。」
より子は今朝も会社の駐車場で奮闘していた。
より子はペーパードライバー歴6年を3か月前に卒業したばかり。
初心者マークは前後に2つずつ付けている。
「お願い、よけて」
対向車にそう願いながら細い道を運転している感じだ。
ペーパードライバーだった頃は
自分は車に乗れるのは1年くらいかかるかも知れないと思っていた。
しかし、地元への就職が決まり
毎日会社にいかなければならない。
今朝も会社の駐車場に着いた。
より子は女性社員で一番早く出社していた。
事務係の駐車場は早く来た順でとめるところが決められている。
遅くなると奥に停めなければいけないが、
そこはより子の今の段階では無理そうな場所だった。
だから、早く来て一番目の特権である
一番簡単なところにいつも止めさせていただいている。
しかし、その一番簡単な場所さえ
より子は何度も車を切り返し、
やっと駐車できている。
駐車場に入る前に喫煙場所がある。
今の世の中、社内で禁煙が当たり前になっている。
だから、煙草を吸う時は
その小さな小屋で吸うことになっている。
男性作業員の方がより子より先に来ていた。
彼らの駐車場は別のところにある。
彼らは仕事前にそこでたむろしている。
皆さん、より子の父親くらいの年代ばかり。
煙草を吸わないより子には無縁なところだ。
より子がブンブンと音を出して車を何度も切る。
そこにたむろしている男性陣が
みんなより子の方を見ている。
より子に背を向けて座っている人も
体をねじってより子の車を見ている。
何度車を切ってもうまくいかない。
そんなより子をニコニコしながら見ている。
「もぉ～。見てないで誰か代わってよ～。」
より子はひとり言を言いながら
何度も何度もハンドルを右に左に切りながら
バックしたり前進したりする。
「今日はそれでも7分くらいで終わった。」
より子は少し右に傾いているが
まあまあ許せる範囲の車を振り向きながら会社に向かった。
後に一本に結った長髪が元気よく揺れていた。
「おはようございます。」
タバコを吸っているおじさん達に挨拶をした。
でも、誰も答えてくれない。
ただニコニコしているだけ。
より子は「この方たちはそういう人なんだ」
と自分に言い聞かせて会社に入っていった。
ある日、より子は会社のトイレから出た。
会社のトイレは男女兼用。
お腹の弱いより子は普通の人よりもトイレに行く回数が多い。
トイレから出たら、
作業員のおじさんがいた。
より子はにこっと微笑んだ。
すると、おじさんは黙って右手を差し出した。
おじさんの手には小さなお菓子が数個あった。
「えっ！いいんですか！ありがとうございます。」
おじさんはニコニコしながらいなくなった。
トイレの順番を待っていたのではなかったのだった。
また別の日。
より子がそのトイレから出た。
すると、別の作業員のおじさんが立っていた。
「待たせちゃったかな。」とより子は思った。
すると、おじさんは手に持っていたペットボトルを
黙ってより子に差し出した。
「えっ！下さるんですか！
ありがとうございます。」
より子は今朝も会社の駐車場で奮闘している。
そして、会社の喫煙場所から
身体をねじってより子をじっと見ているおじさん達がいた。
より子の車は何度も切り返しを繰り返しているが
誰もより子を助けようとはしない。
おじさん達はただ、
ニコニコして彼女を見守っていた。
今回は
より子の奮闘記（ショートショート）
ということをお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
◆◆ kindle出版しました ◆◆
https://amzn.to/3exJcNx
【わたしだけじゃないんだ】
突然、アルツハイマー型認知症になった同居の実母を介護した、
子育てOLの10年と10日の記録
※amazonアンリミテッドに加入して、
期間内に解約すれば無料で読めます。
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◆◆ note有料マガジン ◆◆
【自分のための人生】
https://note.com/tukuda/m/m5b66808db98c
『読むとほっこりする』
『胸にじーんと来ました』
などの感想をいただいています。
◆◆ アファメーション ◆◆
.｡*ﾟ+.*.｡.｡*ﾟ+.*.｡.｡*ﾟ+.*.｡
私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
.｡*ﾟ+.*.｡.｡*ﾟ+.*.｡ﾟ+..｡*ﾟ+
.｡*ﾟ+.*.｡.｡*ﾟ+.*.｡ﾟ+..｡*ﾟ+
大それたことはしなくてもよい
そこに向かう姿勢が大事
日々忘れない努力をする
.｡*ﾟ+.*.｡.｡*ﾟ+.*.｡ﾟ+..｡*ﾟ+
おはようございます。
山田ゆりです。
今回は
より子の奮闘記（ショートショート）
ということをお伝えいたします。
「あー、駄目だ。
えーと、どっちかなぁ。」
より子は今朝も会社の駐車場で奮闘していた。
より子はペーパードライバー歴6年を3か月前に卒業したばかり。
初心者マークは前後に2つずつ付けている。
「お願い、よけて」
対向車にそう願いながら細い道を運転している感じだ。
ペーパードライバーだった頃は
自分は車に乗れるのは1年くらいかかるかも知れないと思っていた。
しかし、地元への就職が決まり
毎日会社にいかなければならない。
今朝も会社の駐車場に着いた。
より子は女性社員で一番早く出社していた。
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遅くなると奥に停めなければいけないが、
そこはより子の今の段階では無理そうな場所だった。
だから、早く来て一番目の特権である
一番簡単なところにいつも止めさせていただいている。
しかし、その一番簡単な場所さえ
より子は何度も車を切り返し、
やっと駐車できている。
駐車場に入る前に喫煙場所がある。
今の世の中、社内で禁煙が当たり前になっている。
だから、煙草を吸う時は
その小さな小屋で吸うことになっている。
男性作業員の方がより子より先に来ていた。
彼らの駐車場は別のところにある。
彼らは仕事前にそこでたむろしている。
皆さん、より子の父親くらいの年代ばかり。
煙草を吸わないより子には無縁なところだ。
より子がブンブンと音を出して車を何度も切る。
そこにたむろしている男性陣が
みんなより子の方を見ている。
より子に背を向けて座っている人も
体をねじってより子の車を見ている。
何度車を切ってもうまくいかない。
そんなより子をニコニコしながら見ている。
「もぉ～。見てないで誰か代わってよ～。」
より子はひとり言を言いながら
何度も何度もハンドルを右に左に切りながら
バックしたり前進したりする。
「今日はそれでも7分くらいで終わった。」
より子は少し右に傾いているが
まあまあ許せる範囲の車を振り向きながら会社に向かった。
後に一本に結った長髪が元気よく揺れていた。
「おはようございます。」
タバコを吸っているおじさん達に挨拶をした。
でも、誰も答えてくれない。
ただニコニコしているだけ。
より子は「この方たちはそういう人なんだ」
と自分に言い聞かせて会社に入っていった。
ある日、より子は会社のトイレから出た。
会社のトイレは男女兼用。
お腹の弱いより子は普通の人よりもトイレに行く回数が多い。
トイレから出たら、
作業員のおじさんがいた。
より子はにこっと微笑んだ。
すると、おじさんは黙って右手を差し出した。
おじさんの手には小さなお菓子が数個あった。
「えっ！いいんですか！ありがとうございます。」
おじさんはニコニコしながらいなくなった。
トイレの順番を待っていたのではなかったのだった。
また別の日。
より子がそのトイレから出た。
すると、別の作業員のおじさんが立っていた。
「待たせちゃったかな。」とより子は思った。
すると、おじさんは手に持っていたペットボトルを
黙ってより子に差し出した。
「えっ！下さるんですか！
ありがとうございます。」
より子は今朝も会社の駐車場で奮闘している。
そして、会社の喫煙場所から
身体をねじってより子をじっと見ているおじさん達がいた。
より子の車は何度も切り返しを繰り返しているが
誰もより子を助けようとはしない。
おじさん達はただ、
ニコニコして彼女を見守っていた。
今回は
より子の奮闘記（ショートショート）
ということをお伝えいたしました。
本日も、最後までお聴きくださり
ありがとうございました。
ちょっとした勇気が世界を変えます。
今日も素敵な一日をお過ごし下さい。
山田ゆりでした。
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突然、アルツハイマー型認知症になった同居の実母を介護した、
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『読むとほっこりする』
『胸にじーんと来ました』
などの感想をいただいています。
◆◆ アファメーション ◆◆
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私は愛されています
大きな愛で包まれています
失敗しても
ご迷惑をおかけしても
どんな時でも
愛されています
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大それたことはしなくてもよい
そこに向かう姿勢が大事
日々忘れない努力をする
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