私が知らない街で
今日は末の息子の引っ越しの日だ。大学卒業まで後数ヶ月ではあるが、新しいバイト先のカフェに通うのに都合がいいという沿線の街に引っ越すことになっている。
4年前の今頃、初めて一人暮らしをする息子を、大学に近い街に住まいを決めて送り出した。あの頃はまだコロナの感染者も多くて、不安ばかりだったが、親の心配をよそに息子はすぐにUberでアルバイトをしたり、そのうちには近くの駅前にある居酒屋でアルバイトをし始めたりと、ずいぶん逞しく1人でやっていた。
大学4年生の春になって、突然息子の進路変更を聞いた時は驚いた。卒業したら、地元に帰ってくるという進路は大きく変わった。息子の夢が本当に実現可能なのかもわからなかったから、親としてはもっと厳しい意見を言うべきだったのかもしれないと、しばらく悩んだ。
食べていけるような仕事になるかどうかはわからないが、息子は今、新しいバイト先でカフェの仕事を学んでいる。何度か行ったことのある、お気に入りのカフェにバイトをしたいと飛び込みで出かけたら、面接をしてくれて採用になった。なんとも大胆なものだ。
息子も憧れのカフェで働けることが嬉しかったのか、SNSの写真や、店長のインタビューが載った記事などを見せてくれた。周りの心配などものともせずに、若さというのは大胆でエネルギーに溢れている。失敗しても、そんなことさえものともせずに、どこかへ向かって歩いていくのだろうなと、なんとなく思った。
息子の引っ越す新しい街を私は知らない。4月からの自分の収入で暮らせるようなところを自分で探して決めてきた。親の私が知らない街で、自分の力で生きていこうとしている息子にここからエールを送りたい。
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