無情
ぼくはあの日の涙の中に漂う亡霊
薄暗い部屋だったけれど
ぼくには確かに宝物が見えていた
暗くて涙で湿気った部屋に
小さく煌めく宝物ものが
なによりも大切だった
みんなが偉いと称えた偉人より
みんなが可愛いと持て囃したキャラクターより
無情、無情だけがぼくの宝物を奪った
それは大きな力で
小さなぼくにはどうにもならなかった。
無情なそれは
ぼくを凍てつく眼差しで見つめ
ぼくは震えが止まらなくなる
無情にも勝てない。
それは大きな口を開けそこから黒い魂を吐き出す
黒い魂は槍と盾を使い
ぼくをひたすら追い詰める
打ち砕かれた月
夜は壊れてしまった
ぼくは涙をボトルに溜めた
ゆらゆらとまだそこに漂い枯れることなく
狭い世界を漂流する
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