「ストレスで太った」が悪文である理由。どう改変すればいい?
読んでいて、「ふむふむ」「なるほど」「そうだよね!」となる説得力のある文章と、そうでない文章の「差」はどこから生まれるのか?
それを知るために、1つの問題を出します。
「ストレスで太った」
「太っているからモテない」
この2つの文章を読んだとき、何か違和感を持ちませんか?そうだとしたら、どこがおかしいのでしょう?
違和感を持たないという方もいるかもしれません。が、続きを読む前に、ちょっと考えてみて下さいね。シンキングタイム、スタート!
■安易につなげてはいけない文章がある
2つの例文とも、「意味が通じない」ことはありません。むしろ、普段の生活で、よく耳にしたり、実際に口にされたりする言葉でもあるでしょう。
ニュアンスは、十分伝わります。
でも。
論理的に分析していくと、つじつまが合わないということに気づくのです。
「ストレスで太った」から見ていきましょう。
確かに、一時的な体重増加の原因として「ストレス」が挙げられることはあります。しかし、よく考えてみましょう。「ストレス」自体はノーカロリーです。だから、ストレスが原因では太らない。「ストレス『で』太った」と、順接ではつながらないわけですね。
ただし、ストレスが原因で食欲に走ることはあるでしょう。その結果、いつもより食べる量が増えて「太った」というのが正しいのです。
順序としては
(1)ストレスを感じた
↓
(2)そのためたくさん食べた
↓
(3)だから太った。
と書けば誤解の生じる余地がありません。ですが、往々にして(2)の要素を飛ばして書いてしまいがちなんですね。
仲間内、あるいは同じ価値観を有する集団の中で「共通理解」としてあるものを省略することは、早く話を進める上でアリでしょう。
でも、広く読んでもらうことを想定するweb文章をこのやり方で書いていくと、説得力が弱まりツッコミが入る隙が生じてしまいます。「なんで、ストレスで太るの?」と。
「太っているからモテない」というのも同様の理屈です。太っていてもモテる人はモテます。外見を理由に「モテない」と決めつけ一般化することはできません。それは、あくまで書いているその人の理屈。説得力としては弱いです。
順序としては
(1)太っている
↓
(2)その外見に自信がないので、異性の前で臆病になってしまう
↓
(3)だから、モテない
と書いてあれば、誰しも「納得」できる論の展開と言えるです。
原文の論理展開だと、読む人によっては、「太っていてモテないなら、痩せればいいじゃん」と一蹴され、言葉にできなかった、あなたの繊細な心は伝わらないでしょう。もっとひどい場合は、「モテない理由を、外見のせいにしている」とダメ出しされてしまうかもしれません。それが誤解だとしても、書かれた文章から、あなたの本意を的確に読み取ってもらうのは難しいのです。
■「省略」がある文章が共感されにくい理由
わかりやすくするために、卑近な例を挙げましたが、「ストレスで太る」式の文章を書いているケースはよく見かけます。
書いている自分にとっては「当たり前」「筋が通っている」。だから「省略」に気づかないのです。あるいは、少々飛ばして書いても、「読者が自分」であれば、的確に補って読めてしまうため、「省略」に気づきません。
ここが落とし穴なのです。
でも、その「当たり前」が他人にとってもそうであるかは、わかりません。
同じ価値観を持っている人が読めば、さっと理解できても、まったく異なる「モノサシ」を持った人が、「ストレスで太る」式の文章を読んだら、どう思うか?その決めつけは「なにか違う」「共感できない」と感じて、続きを読まずにさっとページを移動してしまう可能性大でしょう。
ここで、「ストレス」と「太る」をつなぐ文脈を省略せず挿入すれば、「なるほど、そういう考え方もあるな」「ちょっと先を読んでみようか」と思ってもらう余地が生まれます。文章が説得力を持つわけですね。
書いているほうとしては、「省略」は無意識かもしれません。でも、結果的に「手抜き」と一緒。読者の心をとらえるために言葉を尽くして書いていないから、読者の心を捕まえることができない。これは、とってももったいないことです。
会話なら、「なんで?」と突っ込んでもらえますが、文章ではそういうわけにはいきません。相手の反応、疑問までも先取りして、書いていく必要があるのです。
もちろん、世の中には「理由なんてない。だって、そうなんだよー!」ということもあります。「夕焼けを見ると、いつも涙が出そうになる」とかね。
でも、それも、よくよく考えを巡らせていくと、幼い頃に友達といつまでも遊んでいたかったのに、バイバイしなくちゃいけないのが辛かったとか、大好きな恋人とサヨナラしたのが、綺麗な夕焼けが見える場所だったとか、何か原因が存在するのかもしれません。
「なぜ、そう考えるのか、そう思うのか」。常にここを分析・深堀りしていく習慣をつけると、あなたならではのオリジナルな考え方が見えてきて、オリジナルな表現につながっていく可能性大です。
自分を理解してもらう「手順」と、自分の内面を掘り下げる作業。
説得力を持つ文章は、ここから生まれるのです。
ブログはもちろんのこと、たとえば受験や就職の「小論文」で、「ストレスで太る」式の文章を書くのは、大きなマイナスです。ブログ文章よりも、より緻密な論理展開を求められますので、「手順」を飛ばさない文章が書けているか、しっかりチェックするようにしてみて下さいね。
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