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「読書量」を「文章力」につなげていくには~「引き出し」を増やす読書術


「文章が上達したかったら、本を読め」とか「本を読んでいる人は、文章を書くのも上手い」とか言われますが、これは本当でしょうか?

必ずしもイコールではありませんが、ビジネスにしろ、趣味にしろ、文章を書いて発信していきたい人にとって「読書」は、言葉を紡ぐパワーを生み出す「栄養」となる行為であることは間違いありません。

細切れのネット情報だけではなく、書籍としてまとまった、テーマのある文章も読んでいきたいところです。

でも。


当然ですが、単にページを繰って文字を追っているだけでは、読んでいることにはなりません。「栄養」にするための「読み方」にはコツがあります。

先日、「これだ!」と思う素晴らしい「読書の仕方」を表現した言葉に出会ったので、ご紹介しますね。

「本を読むということは、書き手の言うことをそのまま受け入れて従うということではありません。書かれていることを読んで、そこに書かれていないことを考えるというのが、本を読むです」(橋本治)

いかがですか?


その道のプロ、すでに活躍している一流の人が書いている文章を読むと、「なるほどなあ」と感心・感嘆する反応がまず先に来るという人も多いかもしれません。

もちろん、自分の知らなかった世界を知り、学びを得て、素直に受け入れるというのが悪いというのではありません。目を見開かされるような体験というのは、読書の楽しみでもあり、目的とするところでもあります。

とはいえ、著者の考えをなぞるだけの「受身」の読書では、時間が経てば感動が薄れ、書かれていた内容そのものも忘れていってしまうことが多いのも事実。


では、読書した内容を、自身の「血肉」とするには、どうしたら良いか?


その答えが、橋本治氏の言葉なのです。

「書かれていることを読んで、そこに書かれていないことを考える」

これをしてこそ、読書は有意義な時間となり、書く力を育む行為ともなるのです。

ちょっとニュアンスがわかりにくい、という方もいるかもしれません。「書かれていることを読んで、そこに書かれていないことを考える」を私なりに言い換えると……


「書かれた言葉を自分に引きつけて捉え、自分の実人生の中に当てはめて考える試みをしてみること」


ではないかと思っています。


たとえば、私の好きな小説に『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)がありますが、内容はピアノコンクールをに参加するコンテスタントたちの群像劇でした。音楽に縁がなく詳しくない私でも、「表現する者たちの葛藤」「自分スタイルを模索して見つけていくプロセス」という点で、俳人として、ライターとしての自分の仕事や人生を重ねて読むことができました。

また、私は詩歌を読むのも好きですが、これらは「情報量」という面では、とっても少ないもの。表現も抽象的なケースが多く、受身であっては成り立たない種類の読み物です。

学ぶ・知識を得るための読書だけでなく、表現の美しさそのものに身を委ね楽しむという読書もあります。しかしそうであっても、行間に想いを馳せたり、書かれた1行をきっかけに、記憶や発想のスイッチが押され、さまざまに想いを膨らませたり、アイデアを得たりといったことは、ままあり、私はこれを大事にしています。

ビジネス書や自己啓発書を読む時は、小説に比べて「自分に引きつけて」考えやすいかもしれませんね。

また、「書かれていないこと」の中には、作者がその1行を「書く」のに、「書かなかった」であろう言葉も存在します。その行間を読み取り、感銘を受けた文章のさらに奥に分け行っていくと、読書をきっかけに自身の「思考」が熟成されていくのを感じられることでしょう。

このように、「書かれていることを読んで、そこに書かれていないことを考える」スタイルの読書をすることで、本の中身が本当の意味で自分の身体の中に取り込まれていくのを感じられるのです。

そうした読書体験を経ることで、発想、価値観、語彙、言葉の使い方などなど、文章を書くのに必要な、あなたの中の「引き出し」も格段に増えて行くことでしょう。

もちろん「引き出し」がたくさんあるだけでは、文章をうまく書くことにはつながりません。でも、前提となる「引き出し」を増やすことは武器になります。

たくさんある「引き出し」の中から、必要に応じて必要な個所を開け、組み立てていくことができるようになると、文章がスラスラ書けるようになっていくのです。

ライティング力を支える「読解力」と「思考力」。この2つを養う、能動的な読書をぜひ習慣にしてみてください。

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